首席を学力の低さゆえに逃しながらも、見事雄英高校のヒーロー科に入学を決めた傀薇は幼馴染の八百万と共に登校していた。今日から憧れの雄英生である。制服姿に大興奮した両親と共に撮影会を幾度となく開いたくらいだ。テンションぶちあがりすぎである。
「お! いたいたー! 手繰ー!」
「あらまぁ! 入試のときの!」
校内に入ってからというものの、傀薇は同じ会場だった受験者たちに声をかけられまくっていた。もはや傀薇はちょっとした生きる伝説だったのだ。B組だという声をかけてきた生徒と分かれる傍ら、傀薇の人となりをよく理解している八百万が傀薇さん、また多くの方々を一つにまとめあげたのですね……! といたく感動していた。大体昔からこんな感じなのである。
「おー! やっぱ受かってるよな!」
「あら、瀬呂ではありませんの。クラスメイトですのね。これからよろしくお願いしますわ!」
「よろしくな! えっとそっちは?」
「わたくしの幼馴染ですのよ」
「八百万百と申しますわ。以後お見知りおきを」
「俺は瀬呂範太! お見知りおきをー!」
どっちもお嬢様口調である。これはそういう富裕層のご家庭なんだろうなと瀬呂は察した。傀薇は言葉の端々から頭がよろしくないのは理解していたが、こちらの八百万は反対に理知的だった。バランスが取れた幼馴染だなと思う。その後も周りに人が寄ってきて、瀬呂が傀薇のカリスマ劇を面白おかしく語った。けれどやはりここでも言い間違いをしてバカが露呈した。忍べないバカなのである。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここは……ヒーロー科だぞ」
随分小汚い男が寝袋から出てきた。どうやらこの小汚い男が傀薇たちの担任らしい。担任の相澤の指示で始業式を欠席し、体操服に着替え個性把握テストなるものをやるらしい。初日からハードである。
「爆豪中学の時ソフトボール投げ何mだった」
「67m」
「じゃあ個性≠使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい早よ。思いっ切りな」
「んじゃまぁ――死ねぇ!!」
記録はなんと705mだった。これには思わず傀薇も感嘆の声を上げた。面白そうと騒ぎだした途端、相澤がにやりと意地悪く告げる。最下位は除籍処分。これを真に受けた傀薇は「雄英、厳しいんですのね!」と瞳をぱちぱちさせた。隣にいた八百万が微妙な顔をして傀薇を見ていた。
第一種目、50m走は掌からワイヤーを出しゴール地点に付着させ、巻き取ることで超スピードをだした。握力も同じ要領で引力を利用しなかなかの数値をたたき出した。そうして順調に傀薇は記録を重ねていく。
「手繰と俺の個性ってこうしてつかってみればちょっと似てんな」
「? わたくしさすがにテープは出せませんことよ?」
「いやちがくてっ! びろーんてお前も糸出すじゃん!? 俺もびろーんてテープ出すじゃん!?」
「わたくし針も出せますわ!」
「もうええわ!」
傀薇と瀬呂のやりとりに近くにいた上鳴と切島、耳郎とそれと近くにいるらしい葉隠が笑った。
なんで笑われているのかわかっていない傀薇が「瀬呂笑われてますわよ」と声をかける「いやお前だわ!」「わたくし……?」更に笑った。
「あははっ、手繰ってそんな感じなんだ? 結構天然?」
「確かにわたくしは天然記念物のように無限の可能性を秘めていましてよ!」
「おう! 自分の可能性を信じるのは漢らしいぜ!」
「どやってるかわいい……!」
「くくっ……手繰っておバカキャラだったんだ……! ウケるっ」
「恐ろしいほどメンタルがつえぇ……」
バカと天才は紙一重というやつである。何で周りが笑っているのかわからないながら、傀薇はそれでも前向きだった。前しか向いてない、たまには横も見た方がいいのでは。
麗日がソフトボール投げで∞をたたき出したあと、まだ目立った記録を残せておらず、絶望している緑谷に傀薇は近づいた。あまりに切羽詰まったその様子が気になってしまったのだ。お節介はヒーローの本質である。
「あなた、緑谷とかいいましたわね」
「あっ! 糸のすごいあの……」
「わたくしの名前は手繰傀薇、名乗るほどのものですわ!」
「は、はい……!(名乗るほどのものなんだ)」
どやっと腰に手を当て高らかに名前を告げる傀薇に緑谷はたじたじであった。見るからに自信にあふれているし、大前提傀薇の見目は大変麗しかった。目立った記録を残し、間違いなく上位に食い込んでいる傀薇から声をかけられて緑谷はもうあがりっぱなしだった。クソナード歴が間違いなくスクールカースト上位に位置していただろう傀薇に対し委縮してしまった。それに気づいた様子もなく、傀薇は声をかけた。
「しっかりなさい! 焦る気持ちもあるでしょうが、あなたは現時点で最下位なのです! もう一度いいましてよ? 最下位なのですわ!」
「っ……!!」
「ちょっと手繰! 傷口に塩塗るんじゃないよ!」
「瀬呂は黙ってらして!」
まさに傷口に塩を塗るかのような鬼の所業に緑谷が真っ青になる、慌てて瀬呂が止めるがそんなもの意に介した風もなく傀薇は続けた。
「いいこと、最下位ということはこれからもう下にはいくことがないのですわ!! 緑谷デク! あなたはこれから上がる一方!! 可能性の塊なのですわ!!」
「え……」
「自分を信じるのですわ。自分の個性ですもの。そうすればおのずと個性はあなたに応えてくれましてよ」
打ちひしがれる緑谷に希望に煌めいた傀薇の大きな瞳が真っ直ぐ緑谷をみていた。肩に手を当て、頑張れと激励してくれる。けれど一つ言いたい。
「僕の名前……緑谷出久なんだ……」
「あらそれは失礼! では緑谷出久! あなたならできますわ!!」
できると、そう真正面から信じてくれた傀薇に緑谷は「ありがとう!!」と声を上げる。
それから緑谷の番が来て、一度相澤に個性を消されるも指一本を犠牲にして大記録をたたき出した。周りが驚く中、傀薇は「ほら、言いましたでしょう? 個性は応えてくれるって!」とにこっと返した。「お前ここまでくると大物だね……」「まぁ、今気づきましたの? 傀薇さんはずっとすごい方ですわ」「あーなんか今手繰の自己肯定感の高さの理由に触れた気がしたよ」そうして緑谷は変わらず最下位だったものの、なんと最下位除籍は最大限を引き出す合理的虚偽であったことが判明。誰も欠けることなく一日目がスタートしたのだ。
「改めまして、手繰傀薇ですわ。個性はマリオネット。夢はトップヒーロー! どうぞよろしくお願いしますわ!」
「「「よろしくーー!」」」
傀薇のヒーローアカデミアは始まったばかりである。
「お! いたいたー! 手繰ー!」
「あらまぁ! 入試のときの!」
校内に入ってからというものの、傀薇は同じ会場だった受験者たちに声をかけられまくっていた。もはや傀薇はちょっとした生きる伝説だったのだ。B組だという声をかけてきた生徒と分かれる傍ら、傀薇の人となりをよく理解している八百万が傀薇さん、また多くの方々を一つにまとめあげたのですね……! といたく感動していた。大体昔からこんな感じなのである。
「おー! やっぱ受かってるよな!」
「あら、瀬呂ではありませんの。クラスメイトですのね。これからよろしくお願いしますわ!」
「よろしくな! えっとそっちは?」
「わたくしの幼馴染ですのよ」
「八百万百と申しますわ。以後お見知りおきを」
「俺は瀬呂範太! お見知りおきをー!」
どっちもお嬢様口調である。これはそういう富裕層のご家庭なんだろうなと瀬呂は察した。傀薇は言葉の端々から頭がよろしくないのは理解していたが、こちらの八百万は反対に理知的だった。バランスが取れた幼馴染だなと思う。その後も周りに人が寄ってきて、瀬呂が傀薇のカリスマ劇を面白おかしく語った。けれどやはりここでも言い間違いをしてバカが露呈した。忍べないバカなのである。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここは……ヒーロー科だぞ」
随分小汚い男が寝袋から出てきた。どうやらこの小汚い男が傀薇たちの担任らしい。担任の相澤の指示で始業式を欠席し、体操服に着替え個性把握テストなるものをやるらしい。初日からハードである。
「爆豪中学の時ソフトボール投げ何mだった」
「67m」
「じゃあ個性≠使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい早よ。思いっ切りな」
「んじゃまぁ――死ねぇ!!」
記録はなんと705mだった。これには思わず傀薇も感嘆の声を上げた。面白そうと騒ぎだした途端、相澤がにやりと意地悪く告げる。最下位は除籍処分。これを真に受けた傀薇は「雄英、厳しいんですのね!」と瞳をぱちぱちさせた。隣にいた八百万が微妙な顔をして傀薇を見ていた。
第一種目、50m走は掌からワイヤーを出しゴール地点に付着させ、巻き取ることで超スピードをだした。握力も同じ要領で引力を利用しなかなかの数値をたたき出した。そうして順調に傀薇は記録を重ねていく。
「手繰と俺の個性ってこうしてつかってみればちょっと似てんな」
「? わたくしさすがにテープは出せませんことよ?」
「いやちがくてっ! びろーんてお前も糸出すじゃん!? 俺もびろーんてテープ出すじゃん!?」
「わたくし針も出せますわ!」
「もうええわ!」
傀薇と瀬呂のやりとりに近くにいた上鳴と切島、耳郎とそれと近くにいるらしい葉隠が笑った。
なんで笑われているのかわかっていない傀薇が「瀬呂笑われてますわよ」と声をかける「いやお前だわ!」「わたくし……?」更に笑った。
「あははっ、手繰ってそんな感じなんだ? 結構天然?」
「確かにわたくしは天然記念物のように無限の可能性を秘めていましてよ!」
「おう! 自分の可能性を信じるのは漢らしいぜ!」
「どやってるかわいい……!」
「くくっ……手繰っておバカキャラだったんだ……! ウケるっ」
「恐ろしいほどメンタルがつえぇ……」
バカと天才は紙一重というやつである。何で周りが笑っているのかわからないながら、傀薇はそれでも前向きだった。前しか向いてない、たまには横も見た方がいいのでは。
麗日がソフトボール投げで∞をたたき出したあと、まだ目立った記録を残せておらず、絶望している緑谷に傀薇は近づいた。あまりに切羽詰まったその様子が気になってしまったのだ。お節介はヒーローの本質である。
「あなた、緑谷とかいいましたわね」
「あっ! 糸のすごいあの……」
「わたくしの名前は手繰傀薇、名乗るほどのものですわ!」
「は、はい……!(名乗るほどのものなんだ)」
どやっと腰に手を当て高らかに名前を告げる傀薇に緑谷はたじたじであった。見るからに自信にあふれているし、大前提傀薇の見目は大変麗しかった。目立った記録を残し、間違いなく上位に食い込んでいる傀薇から声をかけられて緑谷はもうあがりっぱなしだった。クソナード歴が間違いなくスクールカースト上位に位置していただろう傀薇に対し委縮してしまった。それに気づいた様子もなく、傀薇は声をかけた。
「しっかりなさい! 焦る気持ちもあるでしょうが、あなたは現時点で最下位なのです! もう一度いいましてよ? 最下位なのですわ!」
「っ……!!」
「ちょっと手繰! 傷口に塩塗るんじゃないよ!」
「瀬呂は黙ってらして!」
まさに傷口に塩を塗るかのような鬼の所業に緑谷が真っ青になる、慌てて瀬呂が止めるがそんなもの意に介した風もなく傀薇は続けた。
「いいこと、最下位ということはこれからもう下にはいくことがないのですわ!! 緑谷デク! あなたはこれから上がる一方!! 可能性の塊なのですわ!!」
「え……」
「自分を信じるのですわ。自分の個性ですもの。そうすればおのずと個性はあなたに応えてくれましてよ」
打ちひしがれる緑谷に希望に煌めいた傀薇の大きな瞳が真っ直ぐ緑谷をみていた。肩に手を当て、頑張れと激励してくれる。けれど一つ言いたい。
「僕の名前……緑谷出久なんだ……」
「あらそれは失礼! では緑谷出久! あなたならできますわ!!」
できると、そう真正面から信じてくれた傀薇に緑谷は「ありがとう!!」と声を上げる。
それから緑谷の番が来て、一度相澤に個性を消されるも指一本を犠牲にして大記録をたたき出した。周りが驚く中、傀薇は「ほら、言いましたでしょう? 個性は応えてくれるって!」とにこっと返した。「お前ここまでくると大物だね……」「まぁ、今気づきましたの? 傀薇さんはずっとすごい方ですわ」「あーなんか今手繰の自己肯定感の高さの理由に触れた気がしたよ」そうして緑谷は変わらず最下位だったものの、なんと最下位除籍は最大限を引き出す合理的虚偽であったことが判明。誰も欠けることなく一日目がスタートしたのだ。
「改めまして、手繰傀薇ですわ。個性はマリオネット。夢はトップヒーロー! どうぞよろしくお願いしますわ!」
「「「よろしくーー!」」」
傀薇のヒーローアカデミアは始まったばかりである。
戻る