傀薇はようやく合点がいった心操との因縁にわたくしたしかにやらかしてますわね! と思う脳内で瀬呂がやっぱお前やらかしてんじゃん! とツッコんできた。あの時はプレゼント・マイクがたとえたマリオのギミックとやらの意味が分からなかったが、寮に入ってみんなと交流していくうちにマリオがどんなものかも知った今、確かにその情報を理解していれば0P敵に挑もうなんて無謀にしか思えませんわね! と傀薇も思う。それでもきっと自分を試してみたくて挑んだだろうが。
あの時の心操は親切心で逃げるように声をかけてくれていたのだと思うと、傀薇は悪いことをしたと申し訳ない気持ちだった。
「お前が俺と同じ洗脳を使えるって知ったとき、言い知れない感情が湧いたよ。ヒーローに一番近いカリスマも俺と同じ敵向きの個性を持ってたんだって……! それなのにお前は捻くれず、どこまでもまっすぐにヒーローを志していた! 陰りのないその心意気に俺はなんだか自分がすごく惨めだったよ……!」
「(心操……わたくしは……わたくしにはすでにこうありたいという姿が、指針があっただけですわ。わたくしにはヒーローがいた。それも幼い時分に彼女と出会えた……その幸運が今のわたくしに導いてくれたのですわ……!)」
傀薇には八百万百というヒーローがいた。傀薇の個性を素敵だと言い切ってくれたヒーローがいたのだ。だから傀薇は自分の個性を憎まず、素晴らしいものなのだと受け入れることが出来た。同じなのだ。心操も傀薇も敵向きだと、敵だと中傷される中で生きていたのだ。ただ傀薇にはそれを救ってくれる人がいて、心操にはいなかったそれだけの話なのだ。
「入試でお前に敵に背を向けるヒーローはいないって、恥を知れって言われて最初に湧いたのは怒りだった。なんて無謀なやつなんだって思ったし、当たり前のように対敵できるお誂え向きの個性を持ってるお前がうらやましかった。そして……背を向けてしまう自分がヒーローに向いていない証拠な気がして……お前に図星を刺された気がして、俺はお前を無謀なやつだと思うことで自分を守ろうとしたことに気付いてしまった……! でもそれを認めたくなかった、認めてしまったらもうヒーローになれない気がした……!」
「(心操……こんなに、こんなにあなたが悩んでたなんて……わたくしはそれを知らずに今までずっと過ごしていた……じゃあわたくしは、今あなたに何ができるか考えなくては……!)」
「でもっ、緑谷と戦って……相澤先生が俺に教えてくれて……お前が活躍してるのを見て……やっと、俺は自分を受け入れることができた。俺はっ」
心操が叫んでいる。全身で叫んでいる。傀薇に伝えようとしている。傀薇は真剣にじっと心操の言葉を待った。心操は大きく息を吸って腹の底から声を出した。
「俺はっ!! 手繰傀薇のっっ!! 一番のフォロワーだァァァアアア!!!」
あまりに予想外の告白に「え……?」と声が出ることだった。でも驚きすぎて声が出ないこともあるのだ。ぽかんとした顔の傀薇に心操は続ける。
「驚いたか!? 驚いたよなそりゃ! でもまぎれもなくこれが俺の本心だ!! あのときあの会場でお前に惚れなかったやつなんかいない! みんながお前に引き寄せられた! 今でもあの光景が忘れられない! たった一人であの大型敵に立ち向かい、一人であれと渡り合ってみせた! 周りのやつらも逃げるのをやめてお前の加勢に動き出した……! あれは本来ヒーローのあるべき姿だった! お前が周りを巻き込んで、一緒にヒーローにしたんだ……!! 俺はその伝説に立ち会ったんだ!! 腹が立った、嫉妬もした!! でもそれ以上にお前を応援した!! 気が付いたら叫んでいた……「頑張れ!!」って!!」
傀薇はその言葉に心を決めた。心操の言葉にちゃんと真心をもって返したかったのだ。演技だなんて思わない、いやこの際演技でもいい。もしそうだとしても、これにだんまりを貫くことの方が傀薇はきっと後悔する。
奇術でグレードアップしたマリオネットでこっそり頭上に細いパイプを仕込む。これでいい、心操の言葉に応える代償がちょっとの痛みならば……喜んで手繰傀薇は受け入れよう。
「本当はあの瞬間からずっと憧れてた。誰よりも応援したいヒーローだった……! 今まで受け入れられなくて言えなかった。でもやっと言えた……俺は……手繰傀薇の大ファンだって……!!!」
「心操……ありがとう……!!」
「……!!」
そういった瞬間洗脳にかかった。けれどマリオネットも一緒に停止したそれは頭上にとどめたパイプを支える力をなくし、傀薇目掛けてそのまま落下してくる。ただ一つ誤算だったのは傀薇に当たるより先に心操が捕縛布でそれを食い止めたことだった。その捕縛布さばきは……傀薇を連想させる動きだった。一番のフォロワーを自負するだけあり、傀薇の手さばきを極限まで研究されつくした技だった。
「手繰傀薇……やっぱ甘ちゃんだ……でも、最高にヒーローだ」
ヒーローネットニュースで知っている。傀薇の奇術はそのマリオネットの糸で文字を描く技量に達していることを。それでもよかったはずなのに、傀薇はリスクを冒してまで答えてくれたのだ。最高のファンサだった。
それから間もなく緑谷が心操とぶつかる。そこで一瞬でた黒鞭は今度は制御出来ており、かつその動きは傀薇と似ていた。傀薇の糸捌きを模しているのは明白で、またしても心操の心に火がともるのだった。
余談だがモニター越しに瀬呂が「いや俺の真似も誰かしろよ。手繰ばっか!!」と嘆いていた。葉隠が「どんまーい」と言い出し便乗した周りによりまたしても瀬呂はどんまいコールを受けるのだった。
洗脳にかかった傀薇であったが、緑谷に洗脳を解かれ他のB組の相手をすることになった。心操も緑谷と戦いたがっていたし、今の緑谷は落ち着いているように見えたからだ。傀薇と心操の話は終わった。まさかあんな風に思われていたとは思わなかったけれど。
その後は峰田と芦戸の合わせ技と跳ね峰田などでB組を攪乱、麗日のガンヘッドマーシャルアーツと傀薇のフィジカルで一気に畳みかけることができ、緑谷と心操の方も決着がついたことでA組の勝利で終わった。
その後の反省では傀薇は相澤に苦言を呈されることになった。心操の洗脳にかかるとわかっていて返事をしたこと、対抗策を講じていたとはいえ、心操が傀薇を守ろうと動いたことで失敗している。緑谷がこなかったら傀薇は激カワ据え置きプリズン行きだったのだ。しっかり反省するようにとの言葉に傀薇は素直にうなずいた。けれど一方で「お前の言葉が何よりも力になったのも忘れるな」というフォローもあった。それに元気よく返事をしたのだった。
あの時の心操は親切心で逃げるように声をかけてくれていたのだと思うと、傀薇は悪いことをしたと申し訳ない気持ちだった。
「お前が俺と同じ洗脳を使えるって知ったとき、言い知れない感情が湧いたよ。ヒーローに一番近いカリスマも俺と同じ敵向きの個性を持ってたんだって……! それなのにお前は捻くれず、どこまでもまっすぐにヒーローを志していた! 陰りのないその心意気に俺はなんだか自分がすごく惨めだったよ……!」
「(心操……わたくしは……わたくしにはすでにこうありたいという姿が、指針があっただけですわ。わたくしにはヒーローがいた。それも幼い時分に彼女と出会えた……その幸運が今のわたくしに導いてくれたのですわ……!)」
傀薇には八百万百というヒーローがいた。傀薇の個性を素敵だと言い切ってくれたヒーローがいたのだ。だから傀薇は自分の個性を憎まず、素晴らしいものなのだと受け入れることが出来た。同じなのだ。心操も傀薇も敵向きだと、敵だと中傷される中で生きていたのだ。ただ傀薇にはそれを救ってくれる人がいて、心操にはいなかったそれだけの話なのだ。
「入試でお前に敵に背を向けるヒーローはいないって、恥を知れって言われて最初に湧いたのは怒りだった。なんて無謀なやつなんだって思ったし、当たり前のように対敵できるお誂え向きの個性を持ってるお前がうらやましかった。そして……背を向けてしまう自分がヒーローに向いていない証拠な気がして……お前に図星を刺された気がして、俺はお前を無謀なやつだと思うことで自分を守ろうとしたことに気付いてしまった……! でもそれを認めたくなかった、認めてしまったらもうヒーローになれない気がした……!」
「(心操……こんなに、こんなにあなたが悩んでたなんて……わたくしはそれを知らずに今までずっと過ごしていた……じゃあわたくしは、今あなたに何ができるか考えなくては……!)」
「でもっ、緑谷と戦って……相澤先生が俺に教えてくれて……お前が活躍してるのを見て……やっと、俺は自分を受け入れることができた。俺はっ」
心操が叫んでいる。全身で叫んでいる。傀薇に伝えようとしている。傀薇は真剣にじっと心操の言葉を待った。心操は大きく息を吸って腹の底から声を出した。
「俺はっ!! 手繰傀薇のっっ!! 一番のフォロワーだァァァアアア!!!」
あまりに予想外の告白に「え……?」と声が出ることだった。でも驚きすぎて声が出ないこともあるのだ。ぽかんとした顔の傀薇に心操は続ける。
「驚いたか!? 驚いたよなそりゃ! でもまぎれもなくこれが俺の本心だ!! あのときあの会場でお前に惚れなかったやつなんかいない! みんながお前に引き寄せられた! 今でもあの光景が忘れられない! たった一人であの大型敵に立ち向かい、一人であれと渡り合ってみせた! 周りのやつらも逃げるのをやめてお前の加勢に動き出した……! あれは本来ヒーローのあるべき姿だった! お前が周りを巻き込んで、一緒にヒーローにしたんだ……!! 俺はその伝説に立ち会ったんだ!! 腹が立った、嫉妬もした!! でもそれ以上にお前を応援した!! 気が付いたら叫んでいた……「頑張れ!!」って!!」
傀薇はその言葉に心を決めた。心操の言葉にちゃんと真心をもって返したかったのだ。演技だなんて思わない、いやこの際演技でもいい。もしそうだとしても、これにだんまりを貫くことの方が傀薇はきっと後悔する。
奇術でグレードアップしたマリオネットでこっそり頭上に細いパイプを仕込む。これでいい、心操の言葉に応える代償がちょっとの痛みならば……喜んで手繰傀薇は受け入れよう。
「本当はあの瞬間からずっと憧れてた。誰よりも応援したいヒーローだった……! 今まで受け入れられなくて言えなかった。でもやっと言えた……俺は……手繰傀薇の大ファンだって……!!!」
「心操……ありがとう……!!」
「……!!」
そういった瞬間洗脳にかかった。けれどマリオネットも一緒に停止したそれは頭上にとどめたパイプを支える力をなくし、傀薇目掛けてそのまま落下してくる。ただ一つ誤算だったのは傀薇に当たるより先に心操が捕縛布でそれを食い止めたことだった。その捕縛布さばきは……傀薇を連想させる動きだった。一番のフォロワーを自負するだけあり、傀薇の手さばきを極限まで研究されつくした技だった。
「手繰傀薇……やっぱ甘ちゃんだ……でも、最高にヒーローだ」
ヒーローネットニュースで知っている。傀薇の奇術はそのマリオネットの糸で文字を描く技量に達していることを。それでもよかったはずなのに、傀薇はリスクを冒してまで答えてくれたのだ。最高のファンサだった。
それから間もなく緑谷が心操とぶつかる。そこで一瞬でた黒鞭は今度は制御出来ており、かつその動きは傀薇と似ていた。傀薇の糸捌きを模しているのは明白で、またしても心操の心に火がともるのだった。
余談だがモニター越しに瀬呂が「いや俺の真似も誰かしろよ。手繰ばっか!!」と嘆いていた。葉隠が「どんまーい」と言い出し便乗した周りによりまたしても瀬呂はどんまいコールを受けるのだった。
洗脳にかかった傀薇であったが、緑谷に洗脳を解かれ他のB組の相手をすることになった。心操も緑谷と戦いたがっていたし、今の緑谷は落ち着いているように見えたからだ。傀薇と心操の話は終わった。まさかあんな風に思われていたとは思わなかったけれど。
その後は峰田と芦戸の合わせ技と跳ね峰田などでB組を攪乱、麗日のガンヘッドマーシャルアーツと傀薇のフィジカルで一気に畳みかけることができ、緑谷と心操の方も決着がついたことでA組の勝利で終わった。
その後の反省では傀薇は相澤に苦言を呈されることになった。心操の洗脳にかかるとわかっていて返事をしたこと、対抗策を講じていたとはいえ、心操が傀薇を守ろうと動いたことで失敗している。緑谷がこなかったら傀薇は激カワ据え置きプリズン行きだったのだ。しっかり反省するようにとの言葉に傀薇は素直にうなずいた。けれど一方で「お前の言葉が何よりも力になったのも忘れるな」というフォローもあった。それに元気よく返事をしたのだった。
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