マジェスティックの個性で避難すると傀薇は救護班へと運ばれた。身体が内側から傷ついていたのだ。一気に血の気をなくして身体の支えを失った傀薇を血相を変えて瀬呂が抱えて走っていった。
そこで傷ついたホークスを抱え、医療従事者たちを守る常闇がいた。こちらでも災厄の影響があったらしかった。
傀薇はそこで応急的な処置を施してもらい、間もなくセントラル病院へと運ばれた。
「そう……マジェスティックとミッドナイト先生が……」
病院で意識が戻った傀薇は八百万からマジェスティックとミッドナイトの死を聞かされていた。
マジェスティックが被っていた帽子を八百万から受け取り、ボロボロになったそれに傀薇は静かに涙を流した。
傀薇の身体は内側からボロボロになっており、安静にしておく必要があった。あのときマジェスティックが強行手段にでなければ傀薇の命が危なかっただろうと八百万に言われその通りだとも思った。
けれどそれでも傀薇は行きたかったのだ。死んでもいいなんて微塵も思っていない、けれど自分なら死の淵からでも這い上がって見せるという自負があったのだ。けれどそれも思い上がりでしかないのかもしれない。マジェスティックは……傀薇のマスターは死んだのだ。
「百、わたくし強くなりますわ。限界を超えますの。今度は本当に大丈夫であるように」
「傀薇さん……」
「それにわたくしがあまりに泣きわめいていたらマジェスティックが困りますわ。彼ならこういうはずだもの。それでこそ俺の愛弟子、手繰傀薇だって!」
「ええ……ええ、そうですわね。きっとマジェスティックなら……そういいますわ」
傀薇の瞳は強い決意を携えていた。傀薇とマジェスティックが過ごした時間は短くて、でもとても濃いものだった。マジェスティックが教えてくれたこと、託してくれたものはとても多い。それらを磨いて立派なヒーローになることがマジェスティックへの餞になるのだと傀薇は信じていた。
そして八百万が言うか迷い、それでもどうせわかることだと口を開く。
その内容は衝撃的なものだった。兄弟のことを話したことはある。その時一番上の兄が亡くなっているのも教えてもらった。けれどその事情までは知らず、なんと荼毘こそが亡くなったと思われていた一番上の兄で、ドメスティックな告発を全国に広めたらしい。その内容はおそらく拡大解釈されていると前置きされ、聞かされる。
「わたくし、焦凍に会いに行きますわ」
「え!? 傀薇さんまだ安静にしてませんと……!」
「あの人たちはエンデヴァー絡みで集まっているのでしょう」
「そ、それはそうですが……!」
「ならこうしてはいられませんわ。焦凍を支えなくては」
点滴を外してベッドから降りるのを八百万が必死でとめる。その声の騒がしさに見舞いに訪れていた砂藤たちがドアを開ける。八百万の「お願いします傀薇さんを止めてください! 安静にしてないといけませんの!」という声に慌てて加勢するも傀薇の行進は止まらなかった。
「うっそだろお前ちょっと前までぐったりしてたじゃん! 本当危なかったんだぞなんでこんな元気なんだよおおお!」
「元気なのはいいが頼むから安静にしててくれ! お菓子やるから!!」
「結構ですわ。焦凍が待ってますの、お放しになって……!」
そうして轟の病室を目掛けて廊下を歩いていくと、途中で会った上鳴たちも加わってきた。みんな一応に「たのむから病室戻って!」「寝てろってお前まだ動ける身体じゃないんだぞ……!」「どっからこんな力でてくんだよおおお」と阿鼻叫喚である。傀薇は知ったこっちゃなかった。
「焦凍わたくしです、入りますわ」
「傀薇……? おお」
ガラッと扉を開けると傀薇の腰にまとわりついたクラスメイトたちに轟はぽかんとした。
気にした様子もなく引きずってくる傀薇にも轟は目を丸くした。
「傀薇……そいつらどうしたんだ」
「ひっついて離れませんから引きずってきましたの」
「どんな状況だ……」
「聞いてくれよ轟! こいつまだ動ける身体じゃねーのにさ! 聞きゃしねーの! 俺ら全員引きずって病室抜け出してきたんだぜ!」
「え、傀薇……身体」
「わりと平気ですわ。お母様の個性の影響ですわね。身体は昔から丈夫ですの。それより焦凍無理に話さなくて大丈夫ですわ、火傷してますもの……喉も痛いでしょう」
「いや……言うほどじゃねぇ」
沈んだ様子に傀薇はやはり来て正解だったと確信する。まだひっついて離れないクラスメイトたちを「もうここまで来たんですから意味ないでしょう、早くお放しになって」と一喝する。
しぶしぶ離れた瀬呂たちはとりあえず椅子に傀薇を座らせ、もう梃子でも動かぬ様子を見ると仕方ないと轟の病室から出て行った。気を利かせたのである。
「何があったか聞きましたわ。大変でしたわね……」
「……おまえも、マジェスティックのこと聞いた。辛かったろ」
「確かに辛かったですけど……もう大丈夫ですわ。わたくしにはマジェスティックから教えてもらったものがたくさんありますもの。これらがある限り……マジェスティックはわたくしの中で生き続けますわ」
「……死人が本当に死ぬのは、生きた人間が忘れるとき……ってやつか。でも燈矢兄は生きてた……本当に生きてたんだ……荼毘として生きて、たくさんの罪のない人を手にかけた……親父はやれねェ……俺がやらなきゃ」
思いつめた轟を傀薇は優しく抱きしめる。大丈夫と声をかけるのは簡単で、けれどそれが気休めにしかならないのも傀薇はわかっていた。そうじゃない、今轟に必要な言葉はなんだろうと考える一方で、必要な言葉より自分がかけたい言葉はなんだろうと思うと自然と口に出ていた。
「焦凍、わたくしいつだって力になりますわ。わたくしがあなたを支えましょう」
「傀薇……」
「だから一人で頑張らないで、わたくしにもそれを分けて。線引きなんてしないで、わたくしあなたを生涯支えぬく覚悟ならできていてよ」
轟焦凍を支える覚悟ならずっと前からしているのだ。轟家の問題だとか、そういう風に線引きしないで。傀薇も混ぜてほしい。家の事情に踏み込む覚悟だってしているのだ。だっていつかきっと家族になるだろうから。だから今から頼ることは間違いじゃないのだ。
轟がぎゅうっと苦しいくらい傀薇を抱きしめた。
「なんかもっと気の利いた返しあるんだろうけど……うまく言えねぇ……ただ、俺……おまえを好きになってよかったって心底思った……」
しばらく二人の雰囲気だったのだが、恐る恐る開かれた扉越しに轟が姉兄と目が合い、「お」っとなるのはこの3分後の出来事であった。
そこで傷ついたホークスを抱え、医療従事者たちを守る常闇がいた。こちらでも災厄の影響があったらしかった。
傀薇はそこで応急的な処置を施してもらい、間もなくセントラル病院へと運ばれた。
「そう……マジェスティックとミッドナイト先生が……」
病院で意識が戻った傀薇は八百万からマジェスティックとミッドナイトの死を聞かされていた。
マジェスティックが被っていた帽子を八百万から受け取り、ボロボロになったそれに傀薇は静かに涙を流した。
傀薇の身体は内側からボロボロになっており、安静にしておく必要があった。あのときマジェスティックが強行手段にでなければ傀薇の命が危なかっただろうと八百万に言われその通りだとも思った。
けれどそれでも傀薇は行きたかったのだ。死んでもいいなんて微塵も思っていない、けれど自分なら死の淵からでも這い上がって見せるという自負があったのだ。けれどそれも思い上がりでしかないのかもしれない。マジェスティックは……傀薇のマスターは死んだのだ。
「百、わたくし強くなりますわ。限界を超えますの。今度は本当に大丈夫であるように」
「傀薇さん……」
「それにわたくしがあまりに泣きわめいていたらマジェスティックが困りますわ。彼ならこういうはずだもの。それでこそ俺の愛弟子、手繰傀薇だって!」
「ええ……ええ、そうですわね。きっとマジェスティックなら……そういいますわ」
傀薇の瞳は強い決意を携えていた。傀薇とマジェスティックが過ごした時間は短くて、でもとても濃いものだった。マジェスティックが教えてくれたこと、託してくれたものはとても多い。それらを磨いて立派なヒーローになることがマジェスティックへの餞になるのだと傀薇は信じていた。
そして八百万が言うか迷い、それでもどうせわかることだと口を開く。
その内容は衝撃的なものだった。兄弟のことを話したことはある。その時一番上の兄が亡くなっているのも教えてもらった。けれどその事情までは知らず、なんと荼毘こそが亡くなったと思われていた一番上の兄で、ドメスティックな告発を全国に広めたらしい。その内容はおそらく拡大解釈されていると前置きされ、聞かされる。
「わたくし、焦凍に会いに行きますわ」
「え!? 傀薇さんまだ安静にしてませんと……!」
「あの人たちはエンデヴァー絡みで集まっているのでしょう」
「そ、それはそうですが……!」
「ならこうしてはいられませんわ。焦凍を支えなくては」
点滴を外してベッドから降りるのを八百万が必死でとめる。その声の騒がしさに見舞いに訪れていた砂藤たちがドアを開ける。八百万の「お願いします傀薇さんを止めてください! 安静にしてないといけませんの!」という声に慌てて加勢するも傀薇の行進は止まらなかった。
「うっそだろお前ちょっと前までぐったりしてたじゃん! 本当危なかったんだぞなんでこんな元気なんだよおおお!」
「元気なのはいいが頼むから安静にしててくれ! お菓子やるから!!」
「結構ですわ。焦凍が待ってますの、お放しになって……!」
そうして轟の病室を目掛けて廊下を歩いていくと、途中で会った上鳴たちも加わってきた。みんな一応に「たのむから病室戻って!」「寝てろってお前まだ動ける身体じゃないんだぞ……!」「どっからこんな力でてくんだよおおお」と阿鼻叫喚である。傀薇は知ったこっちゃなかった。
「焦凍わたくしです、入りますわ」
「傀薇……? おお」
ガラッと扉を開けると傀薇の腰にまとわりついたクラスメイトたちに轟はぽかんとした。
気にした様子もなく引きずってくる傀薇にも轟は目を丸くした。
「傀薇……そいつらどうしたんだ」
「ひっついて離れませんから引きずってきましたの」
「どんな状況だ……」
「聞いてくれよ轟! こいつまだ動ける身体じゃねーのにさ! 聞きゃしねーの! 俺ら全員引きずって病室抜け出してきたんだぜ!」
「え、傀薇……身体」
「わりと平気ですわ。お母様の個性の影響ですわね。身体は昔から丈夫ですの。それより焦凍無理に話さなくて大丈夫ですわ、火傷してますもの……喉も痛いでしょう」
「いや……言うほどじゃねぇ」
沈んだ様子に傀薇はやはり来て正解だったと確信する。まだひっついて離れないクラスメイトたちを「もうここまで来たんですから意味ないでしょう、早くお放しになって」と一喝する。
しぶしぶ離れた瀬呂たちはとりあえず椅子に傀薇を座らせ、もう梃子でも動かぬ様子を見ると仕方ないと轟の病室から出て行った。気を利かせたのである。
「何があったか聞きましたわ。大変でしたわね……」
「……おまえも、マジェスティックのこと聞いた。辛かったろ」
「確かに辛かったですけど……もう大丈夫ですわ。わたくしにはマジェスティックから教えてもらったものがたくさんありますもの。これらがある限り……マジェスティックはわたくしの中で生き続けますわ」
「……死人が本当に死ぬのは、生きた人間が忘れるとき……ってやつか。でも燈矢兄は生きてた……本当に生きてたんだ……荼毘として生きて、たくさんの罪のない人を手にかけた……親父はやれねェ……俺がやらなきゃ」
思いつめた轟を傀薇は優しく抱きしめる。大丈夫と声をかけるのは簡単で、けれどそれが気休めにしかならないのも傀薇はわかっていた。そうじゃない、今轟に必要な言葉はなんだろうと考える一方で、必要な言葉より自分がかけたい言葉はなんだろうと思うと自然と口に出ていた。
「焦凍、わたくしいつだって力になりますわ。わたくしがあなたを支えましょう」
「傀薇……」
「だから一人で頑張らないで、わたくしにもそれを分けて。線引きなんてしないで、わたくしあなたを生涯支えぬく覚悟ならできていてよ」
轟焦凍を支える覚悟ならずっと前からしているのだ。轟家の問題だとか、そういう風に線引きしないで。傀薇も混ぜてほしい。家の事情に踏み込む覚悟だってしているのだ。だっていつかきっと家族になるだろうから。だから今から頼ることは間違いじゃないのだ。
轟がぎゅうっと苦しいくらい傀薇を抱きしめた。
「なんかもっと気の利いた返しあるんだろうけど……うまく言えねぇ……ただ、俺……おまえを好きになってよかったって心底思った……」
しばらく二人の雰囲気だったのだが、恐る恐る開かれた扉越しに轟が姉兄と目が合い、「お」っとなるのはこの3分後の出来事であった。
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