傀薇が自分の心に光を灯してくれたように、自分もいつか傀薇のヒーローになりたい。それは期末試験で八百万こそが傀薇の原初のヒーローであったと発覚してから明確にそうありたいと轟は願うようになった。
押して押して頼み込んで子供のように駄々をこねて傀薇と恋人になって、仮免試験でこれじゃいけないと別れを切り出し、それでも受け入れてもらってすっかり相思相愛の恋人同士になってからも。ずっと轟はいつか傀薇のヒーローになりたいと思っていた。
これはそんなある日の、ハイツアライアンスでの出来事である。
「ヒッ……!! で、出たああああああ!!!」
ハイツアライアンスで葉隠の悲鳴が響き渡った。悲鳴につられてみんな続々と共同スペースに集まってくる。葉隠は震えており、一番に駆けつけた女子に抱き着いていた。
「どうしましたの!?」
「なんだなんだ! 何があった!?」
「すごい悲鳴したよ! どうしたのー!?」
「ちょっと葉隠震えてるじゃん! 大丈夫!?」
「だ、大丈夫じゃないよ! 出たの! アイツが!!」
「あいつ? 峰田またなんかやらかしたの!?」
「濡れ衣だぜ! オイラは何もしてねぇ!!」
「峰田くんじゃなくてっ! 黒くておぞましくてカサッとしたアイツがでたのおお!」
「黒くておぞましくてカサッとしたアイツ……?」
葉隠が必死に名前を言ってはいけない感じに説明するものだから何のことだかわからなかった。が、その直後カサッと音がし、葉隠がまたしても「出たあああああ!!」と叫ぶものだからそちらに視線をやると……いた。正しく黒くておぞましくてカサッとしたアイツだった。
「ゴ――!?」
「名前言わないでえええ!!」
「ごめん!! ってこいつか!!? 確かに黒くておぞましくてカサッとしたアイツだわ!!」
「……なんですのあれ……初めて見ますわ……この世にあんなおぞましい生物が……?」
「私も知識では知っていましたが見るのは初めてですわ……! き、気持ち悪い……!!」
「ピュアセレブ初の邂逅かよ!? すげぇな!!」
「こ、これどうしますの!? 駆除!? 駆除をしますの!? どうやって!?」
「私駆除の仕方は知ってますわ! 今創造してっ――!」
「無理すんなヤオモモー!!」
いつもは頼りになる八百万と肝の据わった傀薇だったが、初めて見るおぞましい生物に混乱していた。八百万が創造しようとするもあまりの気持ち悪さに奴がカサッとする度反応してしまい、思考がまとまらず創造できずにいた。
悲しいことに現在ハイツアライアンス内にいるのは揃いも揃って奴がダメな者ばかりであった。
「きゃああ! 飛んだああああ!!」
「わあああああ! こっちくんなああああ!!」
「(飛行性能まで!? コイツを野放にしてはいけませんわ……!)わたくしが相手ですわ……!!」
「手繰ーーー!」
「傀薇さん……!」
ものすごく気持ち悪くてしょうがなかったが、今ここにいる者は揃いも揃って戦えない人間ばかりであった。傀薇とてダメであったが恐怖する友を守らんと果敢に挑んだ。挑んだのだが……。
「……当たりませんわっ」
「めっちゃ手震えてんじゃんおまええええ!! おまえも怖いんじゃん! むしろよく立ち向かってくれたよありがとうなあああ!!」
「情けないですわ……!」
「傀薇ちゃんんんわかるよアイツだけはだめだよ人類の敵だよおおお!!」
無理だった。身体と繋がった糸を使うのはあまりに怖かったし、じゃあ針でと思ってもあまりにおぞましくて手先が震えて当たらなかった。情けないのと怖いのとで思わず涙目になってしまった。こんなに弱り切った傀薇を見るのは初めてである。
カサカサッと動き回るそれにみんなで逃げることしかできなかった。まさに阿鼻叫喚である。けれどその時彼らに救世主が現れた。補講から帰ってきた轟と爆豪が現れたのだ。
「うっせぇ! 何騒いでんだ!」
「みんなしてどうしたんだ?」
「しょ、焦凍!!」
「おっ……どうした傀薇。!? 泣いてんのか……? 何があった」
「アイツが……黒くておぞましくてカサッとしたアイツが出たのですわ!!」
「? なんだそれ……」
その瞬間、ぴょーんと傀薇と轟の近くまで飛んでくるヤツがいた。「ヒッ」と引き攣った悲鳴を上げる傀薇に轟は考えるより早く氷結をお見舞いしていた。なんだかとってもイラっとしたのである。
「と、轟ーーーー! 轟がやったぞーーー!」
「ナイスだ! 俺らが勝ったんだーーー!」
「ちょっとやりすぎですけれど……一件落着ですわね」
「お? おお……一体何だったんだ」
「GだよG! お前も知らないとはセレブ全員アレ未知の存在だったんだな……」
「ったく、たかがゴキ一匹で騒いでんじゃねェようるせぇな!」
「わあああ! 爆豪くんその名前を呼ばないでえええ!」
「ああ゛!? 名前くらいでビビってんじゃねェ!!」
轟の氷結――ただし規模がややデカい――により黒くておぞましくてカサッとしたアイツはお陀仏となった。後始末のために熱で溶かしているとそのなんとも言えないおぞましい姿を見た轟も正直ダメだった。反射的にせっかく溶かしたのにまた氷結がでるところだったのだ。
けれどこの時ばかりは轟はみんなのヒーローだった。みんな黒くておぞましくてカサッとしたアイツに為す術なかったのだ。それはもちろん傀薇も同じである。
「焦凍、助かりましたわ。わたくし本当におそろしくて……」
「ああ、泣いてたから驚いた。……もう平気か?」
「ええ。焦凍がやっつけてくれましたもの。だからもう大丈夫ですわ」
「それならよかった……」
「ふふ、アレをやっつけた焦凍、まるでヒーローでしたわ」
「……俺が?」
「だってわたくしたちみんなして逃げ惑うことしかできなくて、怖くて仕方なかったんですもの。焦凍が来てくれた時、わたくしなんだかほっとしましたのよ」
「……俺は、おまえのヒーローになれたのか」
「もちろん! 最高にかっこいいヒーローでしてよ!」
「……そうか、そうなのか。俺もおまえのヒーローになれたんだな……」
傀薇のヒーローになりたいという願いは思わぬ形で叶うことになった。
が、その後一匹いたら百匹はいると誰かが言い出し、総出で一斉駆除を施すことになることをこの時はまだ知らなかったのだった。
押して押して頼み込んで子供のように駄々をこねて傀薇と恋人になって、仮免試験でこれじゃいけないと別れを切り出し、それでも受け入れてもらってすっかり相思相愛の恋人同士になってからも。ずっと轟はいつか傀薇のヒーローになりたいと思っていた。
これはそんなある日の、ハイツアライアンスでの出来事である。
「ヒッ……!! で、出たああああああ!!!」
ハイツアライアンスで葉隠の悲鳴が響き渡った。悲鳴につられてみんな続々と共同スペースに集まってくる。葉隠は震えており、一番に駆けつけた女子に抱き着いていた。
「どうしましたの!?」
「なんだなんだ! 何があった!?」
「すごい悲鳴したよ! どうしたのー!?」
「ちょっと葉隠震えてるじゃん! 大丈夫!?」
「だ、大丈夫じゃないよ! 出たの! アイツが!!」
「あいつ? 峰田またなんかやらかしたの!?」
「濡れ衣だぜ! オイラは何もしてねぇ!!」
「峰田くんじゃなくてっ! 黒くておぞましくてカサッとしたアイツがでたのおお!」
「黒くておぞましくてカサッとしたアイツ……?」
葉隠が必死に名前を言ってはいけない感じに説明するものだから何のことだかわからなかった。が、その直後カサッと音がし、葉隠がまたしても「出たあああああ!!」と叫ぶものだからそちらに視線をやると……いた。正しく黒くておぞましくてカサッとしたアイツだった。
「ゴ――!?」
「名前言わないでえええ!!」
「ごめん!! ってこいつか!!? 確かに黒くておぞましくてカサッとしたアイツだわ!!」
「……なんですのあれ……初めて見ますわ……この世にあんなおぞましい生物が……?」
「私も知識では知っていましたが見るのは初めてですわ……! き、気持ち悪い……!!」
「ピュアセレブ初の邂逅かよ!? すげぇな!!」
「こ、これどうしますの!? 駆除!? 駆除をしますの!? どうやって!?」
「私駆除の仕方は知ってますわ! 今創造してっ――!」
「無理すんなヤオモモー!!」
いつもは頼りになる八百万と肝の据わった傀薇だったが、初めて見るおぞましい生物に混乱していた。八百万が創造しようとするもあまりの気持ち悪さに奴がカサッとする度反応してしまい、思考がまとまらず創造できずにいた。
悲しいことに現在ハイツアライアンス内にいるのは揃いも揃って奴がダメな者ばかりであった。
「きゃああ! 飛んだああああ!!」
「わあああああ! こっちくんなああああ!!」
「(飛行性能まで!? コイツを野放にしてはいけませんわ……!)わたくしが相手ですわ……!!」
「手繰ーーー!」
「傀薇さん……!」
ものすごく気持ち悪くてしょうがなかったが、今ここにいる者は揃いも揃って戦えない人間ばかりであった。傀薇とてダメであったが恐怖する友を守らんと果敢に挑んだ。挑んだのだが……。
「……当たりませんわっ」
「めっちゃ手震えてんじゃんおまええええ!! おまえも怖いんじゃん! むしろよく立ち向かってくれたよありがとうなあああ!!」
「情けないですわ……!」
「傀薇ちゃんんんわかるよアイツだけはだめだよ人類の敵だよおおお!!」
無理だった。身体と繋がった糸を使うのはあまりに怖かったし、じゃあ針でと思ってもあまりにおぞましくて手先が震えて当たらなかった。情けないのと怖いのとで思わず涙目になってしまった。こんなに弱り切った傀薇を見るのは初めてである。
カサカサッと動き回るそれにみんなで逃げることしかできなかった。まさに阿鼻叫喚である。けれどその時彼らに救世主が現れた。補講から帰ってきた轟と爆豪が現れたのだ。
「うっせぇ! 何騒いでんだ!」
「みんなしてどうしたんだ?」
「しょ、焦凍!!」
「おっ……どうした傀薇。!? 泣いてんのか……? 何があった」
「アイツが……黒くておぞましくてカサッとしたアイツが出たのですわ!!」
「? なんだそれ……」
その瞬間、ぴょーんと傀薇と轟の近くまで飛んでくるヤツがいた。「ヒッ」と引き攣った悲鳴を上げる傀薇に轟は考えるより早く氷結をお見舞いしていた。なんだかとってもイラっとしたのである。
「と、轟ーーーー! 轟がやったぞーーー!」
「ナイスだ! 俺らが勝ったんだーーー!」
「ちょっとやりすぎですけれど……一件落着ですわね」
「お? おお……一体何だったんだ」
「GだよG! お前も知らないとはセレブ全員アレ未知の存在だったんだな……」
「ったく、たかがゴキ一匹で騒いでんじゃねェようるせぇな!」
「わあああ! 爆豪くんその名前を呼ばないでえええ!」
「ああ゛!? 名前くらいでビビってんじゃねェ!!」
轟の氷結――ただし規模がややデカい――により黒くておぞましくてカサッとしたアイツはお陀仏となった。後始末のために熱で溶かしているとそのなんとも言えないおぞましい姿を見た轟も正直ダメだった。反射的にせっかく溶かしたのにまた氷結がでるところだったのだ。
けれどこの時ばかりは轟はみんなのヒーローだった。みんな黒くておぞましくてカサッとしたアイツに為す術なかったのだ。それはもちろん傀薇も同じである。
「焦凍、助かりましたわ。わたくし本当におそろしくて……」
「ああ、泣いてたから驚いた。……もう平気か?」
「ええ。焦凍がやっつけてくれましたもの。だからもう大丈夫ですわ」
「それならよかった……」
「ふふ、アレをやっつけた焦凍、まるでヒーローでしたわ」
「……俺が?」
「だってわたくしたちみんなして逃げ惑うことしかできなくて、怖くて仕方なかったんですもの。焦凍が来てくれた時、わたくしなんだかほっとしましたのよ」
「……俺は、おまえのヒーローになれたのか」
「もちろん! 最高にかっこいいヒーローでしてよ!」
「……そうか、そうなのか。俺もおまえのヒーローになれたんだな……」
傀薇のヒーローになりたいという願いは思わぬ形で叶うことになった。
が、その後一匹いたら百匹はいると誰かが言い出し、総出で一斉駆除を施すことになることをこの時はまだ知らなかったのだった。
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