カイラが一行に加わってからというものの、実にスムーズに旅路は進んだ。大人気スターというだけあって資金調達、情報収集なんのその。おまけに腕っぷしも強いと来た。
上品な口調とは裏腹にその拳は岩をも砕くというのは誇張ではないようで、実に軽々と大岩を粉砕してみせたときは皆我が目を疑ったのだった。
「え、カイラちゃん強すぎん!?」
「俺と同じドラゴンのハーフとかだったりするか?」
「ドラゴンではありませんけど、わたくしのお母様も人外ですわ。その血を受け継ぐわたくしもまた、力が強いんですの」
「まぁ、そうじゃないと説明つかないわよね。カイラちゃん華奢なのにそのパワーなんだもの」
「頭は弱ぇけどな。お前のかーちゃんオークかよ」
「オークでもありませんわ。そうですわね……わたくしの瞳の色とこの尖った耳を見たらわかると思いますわ」
「尖った耳に……赤っぽいピンクの瞳……うーんなんやろ」
「……それ、淫魔か?」
何気なく発した轟の言葉にみんなぎょっとする。いくらファンタジー世界、なんでもありといってもなんというかセンシティブな感じである。言った張本人はけろっとしているし、言われたカイラもにこりと華やかな笑みを湛えていた。
「当たりですわ」
「言っといてなんだが、お前は尻尾がないんだな。淫魔ってあるだろ、尻尾」
「(轟くんぐいぐい行くな!?)」
「お母様はあるのですけど、わたくしも兄たちも尻尾はありませんわ。おそらくお父様が人間だからですわね」
「お前も他になんか淫魔の能力使えたりすんのか?」
「(まって轟くんほんとぐいぐい行くな!!?)」
「残念ながら、わたくしに受け継がれたのはこの世界を魅了する美貌と岩をも砕く拳と身体の頑丈さくらいですわ」
「(世界を魅了……)お前、すげぇ自信家だよな」
「あら、全部本当のことでしてよ!」
「あ、あはは……でもカイラの言うことも本当なんだよ。カイラのお師匠さんであるマジェスティックはカイラの美しさに目を奪われてその場で弟子にしたくらいなんだ! 他にもたくさんの名のある勇者や有名人が彼女のファンで追っかけしてるくらいで。現にカイラの情報網は勇者独自の情報網にも精通しててたくさん有益な情報を集めてくれてるし、なにより……!! カイラが僕たちの仲間になってくれたおかげで毎日美味しいご飯を食べれる上に快適な宿に泊まれる……!! ありがとうカイラ! ほんとうにありがとう!!」
「え、ええ……? それほどでもありますわ?」
どんな旅路も金があるに越したことはない。勇者アイザワが浄化されて仲間になったはいいが、卑劣なことに魔王が金品を奪っていたのだ。
テンヤの資金も袋に穴が開いていたことでなくなってしまったし、イズクもほんの少ししかもっていない。オチャコは雇い主のテンヤの財布が自分の財布であるし、ショートは領主の息子ではあるが着の身着のままでついてきてしまい財布をもっておらず、カツキは現物主義。エイジロウはドラゴンで金品の類は持っていない。踊るおたまじゃくし亭のツユも持ってはいるがそんな贅沢ができるほどではないし、国家諜報員のキョウカも稼ぎは良いが長期の調査中ということもありこちらも贅沢が出来る身ではなかった。
そこに現れたのが大人気スターのカイラである。路銭どころか贅沢な暮らしでさえできてしまうほど実入りが多いのだ。ちょっと踊って歌ってマジックをするだけであっという間に稼いでしまう。しかも人があまりにもいい。稼いだそのお金をみんなの資金として提供してしまうのだ。おかげで険しい旅になると思いきやまったくそんなことはなかった。常に万全のコンディションで挑めるというのは本当にありがたいことである。カイラ様様である。
「ねぇ、カイラ。あんたってさ……公爵家の一人娘のあのカイラだよね?」
「……あなた……ええ、そういえば国家諜報員とやらでしたわね。知ってましたの」
「あーうん、なんかすごい変わったご令嬢がいるとは聞いてたけど……まさか旅芸人してるとは思わなかったよ。公爵たちは反対しなかったの? その……あんたんとこ色々あったじゃん」
「まぁ、色々ありましたけれど。だからこそですわね。貴族社会って狭すぎますの。わたくしはもっと世界を知って、いろんな価値観や文化を知りたかった。だから旅を続けてますの」
「……そっか。なんかのっぴきならない事情で家出なきゃいけないとかだったら、力になろうと思ってたんだけど……そうじゃないならいいんだ。ごめん急に。このことは誰にも言わないから安心して」
「そうですわね……そうしていただけると助かりますわ。ショートを見る感じ身分はさほど気にしてないようですけれど……」
「公爵家だもんなぁ……しかもあんた踊り子もしてるし、ちょっと心配になるかもね」
「でしょう? ではこのことはわたくしたち二人の秘密と言うことで。よろしくお願いしますわ」
「おっけい。ま、なんかあったら話してよ。相談乗るからさ」
「心強いですわ」
二人が友情を確かめ合っている間、なんとその二人のやりとりを見ていた影があった。
その影はこともなげに近づいてくると、ひょこっと会話に混ざるのであった。
「おまえも貴族だったのか。世間って狭ぇな」
「!? ショート!?」
「あら」
「お。聞いちゃまずかったか」
「まずくはありませんけども……」
「あんまりちゃんとは聞いてなかったんだが、貴族ってのが聞こえてな。貴族ってのにあんまいいイメージなかったんだがお前みたいなのも貴族だって知ったら、なんか貴族も悪くねぇなって思ったんだ」
「……言っとくけど、カイラは大分特殊なケースだよ」
「そうなのか。なら……もしかしてだが、ずっと昔に社交界で同い年の女の子が大人を投げ飛ばしたって聞いたことあるんだが……それってカイラか?」
「……さぁ、なんのことかわかりませんわ」
「そうか……残念だ」
内心カイラは滝汗だった。それは紛れもなく幼い頃の自分である。キョウカもその話を知っていたが空気を読んで知らないふりをした。吹き出しそうなのを我慢していた。
ちなみにその投げ飛ばされた大人というのはショートの父、エンデヴァーである。近くにハチがいたのを助けようとして手荒なことに「おじ様! 危ないですわ!」と投げ飛ばしてしまったのだ。当然ものすごく怒られた。そして成長した今立派な淑女となったカイラにとってあれは黒歴史、消したい過去だったのだった。世間とは本当に狭いものである。
上品な口調とは裏腹にその拳は岩をも砕くというのは誇張ではないようで、実に軽々と大岩を粉砕してみせたときは皆我が目を疑ったのだった。
「え、カイラちゃん強すぎん!?」
「俺と同じドラゴンのハーフとかだったりするか?」
「ドラゴンではありませんけど、わたくしのお母様も人外ですわ。その血を受け継ぐわたくしもまた、力が強いんですの」
「まぁ、そうじゃないと説明つかないわよね。カイラちゃん華奢なのにそのパワーなんだもの」
「頭は弱ぇけどな。お前のかーちゃんオークかよ」
「オークでもありませんわ。そうですわね……わたくしの瞳の色とこの尖った耳を見たらわかると思いますわ」
「尖った耳に……赤っぽいピンクの瞳……うーんなんやろ」
「……それ、淫魔か?」
何気なく発した轟の言葉にみんなぎょっとする。いくらファンタジー世界、なんでもありといってもなんというかセンシティブな感じである。言った張本人はけろっとしているし、言われたカイラもにこりと華やかな笑みを湛えていた。
「当たりですわ」
「言っといてなんだが、お前は尻尾がないんだな。淫魔ってあるだろ、尻尾」
「(轟くんぐいぐい行くな!?)」
「お母様はあるのですけど、わたくしも兄たちも尻尾はありませんわ。おそらくお父様が人間だからですわね」
「お前も他になんか淫魔の能力使えたりすんのか?」
「(まって轟くんほんとぐいぐい行くな!!?)」
「残念ながら、わたくしに受け継がれたのはこの世界を魅了する美貌と岩をも砕く拳と身体の頑丈さくらいですわ」
「(世界を魅了……)お前、すげぇ自信家だよな」
「あら、全部本当のことでしてよ!」
「あ、あはは……でもカイラの言うことも本当なんだよ。カイラのお師匠さんであるマジェスティックはカイラの美しさに目を奪われてその場で弟子にしたくらいなんだ! 他にもたくさんの名のある勇者や有名人が彼女のファンで追っかけしてるくらいで。現にカイラの情報網は勇者独自の情報網にも精通しててたくさん有益な情報を集めてくれてるし、なにより……!! カイラが僕たちの仲間になってくれたおかげで毎日美味しいご飯を食べれる上に快適な宿に泊まれる……!! ありがとうカイラ! ほんとうにありがとう!!」
「え、ええ……? それほどでもありますわ?」
どんな旅路も金があるに越したことはない。勇者アイザワが浄化されて仲間になったはいいが、卑劣なことに魔王が金品を奪っていたのだ。
テンヤの資金も袋に穴が開いていたことでなくなってしまったし、イズクもほんの少ししかもっていない。オチャコは雇い主のテンヤの財布が自分の財布であるし、ショートは領主の息子ではあるが着の身着のままでついてきてしまい財布をもっておらず、カツキは現物主義。エイジロウはドラゴンで金品の類は持っていない。踊るおたまじゃくし亭のツユも持ってはいるがそんな贅沢ができるほどではないし、国家諜報員のキョウカも稼ぎは良いが長期の調査中ということもありこちらも贅沢が出来る身ではなかった。
そこに現れたのが大人気スターのカイラである。路銭どころか贅沢な暮らしでさえできてしまうほど実入りが多いのだ。ちょっと踊って歌ってマジックをするだけであっという間に稼いでしまう。しかも人があまりにもいい。稼いだそのお金をみんなの資金として提供してしまうのだ。おかげで険しい旅になると思いきやまったくそんなことはなかった。常に万全のコンディションで挑めるというのは本当にありがたいことである。カイラ様様である。
「ねぇ、カイラ。あんたってさ……公爵家の一人娘のあのカイラだよね?」
「……あなた……ええ、そういえば国家諜報員とやらでしたわね。知ってましたの」
「あーうん、なんかすごい変わったご令嬢がいるとは聞いてたけど……まさか旅芸人してるとは思わなかったよ。公爵たちは反対しなかったの? その……あんたんとこ色々あったじゃん」
「まぁ、色々ありましたけれど。だからこそですわね。貴族社会って狭すぎますの。わたくしはもっと世界を知って、いろんな価値観や文化を知りたかった。だから旅を続けてますの」
「……そっか。なんかのっぴきならない事情で家出なきゃいけないとかだったら、力になろうと思ってたんだけど……そうじゃないならいいんだ。ごめん急に。このことは誰にも言わないから安心して」
「そうですわね……そうしていただけると助かりますわ。ショートを見る感じ身分はさほど気にしてないようですけれど……」
「公爵家だもんなぁ……しかもあんた踊り子もしてるし、ちょっと心配になるかもね」
「でしょう? ではこのことはわたくしたち二人の秘密と言うことで。よろしくお願いしますわ」
「おっけい。ま、なんかあったら話してよ。相談乗るからさ」
「心強いですわ」
二人が友情を確かめ合っている間、なんとその二人のやりとりを見ていた影があった。
その影はこともなげに近づいてくると、ひょこっと会話に混ざるのであった。
「おまえも貴族だったのか。世間って狭ぇな」
「!? ショート!?」
「あら」
「お。聞いちゃまずかったか」
「まずくはありませんけども……」
「あんまりちゃんとは聞いてなかったんだが、貴族ってのが聞こえてな。貴族ってのにあんまいいイメージなかったんだがお前みたいなのも貴族だって知ったら、なんか貴族も悪くねぇなって思ったんだ」
「……言っとくけど、カイラは大分特殊なケースだよ」
「そうなのか。なら……もしかしてだが、ずっと昔に社交界で同い年の女の子が大人を投げ飛ばしたって聞いたことあるんだが……それってカイラか?」
「……さぁ、なんのことかわかりませんわ」
「そうか……残念だ」
内心カイラは滝汗だった。それは紛れもなく幼い頃の自分である。キョウカもその話を知っていたが空気を読んで知らないふりをした。吹き出しそうなのを我慢していた。
ちなみにその投げ飛ばされた大人というのはショートの父、エンデヴァーである。近くにハチがいたのを助けようとして手荒なことに「おじ様! 危ないですわ!」と投げ飛ばしてしまったのだ。当然ものすごく怒られた。そして成長した今立派な淑女となったカイラにとってあれは黒歴史、消したい過去だったのだった。世間とは本当に狭いものである。
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