カイラとキョウカの会話を聞いてからのショートは実にカイラによく懐いていた。その姿はまるで雛鳥のようでショートを探すならカイラのところと相場が決まっていた。
カイラも最初こそ困惑していたが、持ち前の大らかさですぐに順応した。意外と甘いものも食べるとわかってからは手品で使ったキャンディの残りをあげたりして立派に餌付けを行うほどだった。
「カイラちゃん! 今日も最高だったよ!」
「お褒めいただき感謝いたしますわ!」
「カイラちゃんの踊りってセクシーなのに変なやらしさないよなぁ……品がいいって言うか。なんか引き込まれるっていうかさ!」
「そうそう、衣装も結構露出多いのになぁ……」
「ふふ、わたくしの技術の涙のにじむ努力の賜物ですわね!」
「うんうん、血のにじむの間違いかなぁ」
「そうともいいますわね!」
カイラファンにとって言い間違いからの訂正、そうともいいますわねはもはや様式美であった。ファンの表情もどこかほっこりしている。「それではまたどこかでお会いしましょう」と手を振るカイラに手を振り返し、ファンたちも去っていった。
「お待たせしましたわ、ショー……あら、どうしましたの?」
「……何がだ?」
「なんだか機嫌がよくありませんわよ」
「……」
「なにかありまして? キャンディは美味しくなかったんですの?」
「……うまかった」
「でしたら他に理由があるんですのね」
むすっとしたショートの頭を優しく撫でる。もっとしてくれとばかりに頭を押し付けてくるショートに苦笑するとカイラはまるで毛並みの良い猫を撫でるように可愛い可愛いと愛でるのだった。
「少しは落ち着きまして……?」
「……ん」
「それはよかった。少し目を離した間にご機嫌が悪いんですもの。驚きましたわ」
「……俺も、よくわかんねぇんだ。なんか嫌だった」
「いや? 何か嫌なことがありましたのね」
「ああ。カイラがあの人たちと話してて、なんかもやっとしちまった」
「もやっと?」
「俺も何て言っていいのかわかんねぇ……」
こてんと頭を預けてきたショートをあら、と受け止めた。
親を取られたみたいに思ったのかとカイラは思ったが、カイラがファンに声をかけられるのは今に始まったことではないし、ショートの様子も今まで変わらなかったため不可解であった。
ここにもしツユやキョウカ、カツキ辺りがいれば嫉妬だとわかっただろうが生憎ここにはショートとカイラ二人だけであった。
「俺もカイラの踊りは好きだ」
「え、ええ。光栄ですわね」
「踊り子でもあるんだから露出が多いのもわかる。腹壊さねぇか心配だが」
「お気遣い感謝しますわ。けれどわたくしは身体だけは丈夫ですので心配ご無用でしてよ」
「それならいい。……いい、はずなんだ」
「ショート……」
大分混乱しているらしい。「悪ぃ」といって離れるショートに「いえ」と返す。資金も集まった上に失踪した勇者を見かけたという情報の収穫もあり、イズクたちはその目撃情報を頼りに行軍を続けたのだった。
「せやっ! カツキ! そちらに行きましたわ!」
「わーっとるわ!!」
カイラの剣舞を掻い潜った魔族に変えられた勇者をカツキが追い詰める。アイザワの捕縛布とオチャコの魔法、ツユの舌が援護し、緑谷がオールマイトの力を宿した拳を魔族に繰り出し見事アイザワのときのように正気に戻すことに成功したのだった。
「やりましたわね!」
「ああ、カツキくんとカイラくん、ナイスコンビネーションだった!」
「あ゛!? コンビネーションだぁ!? んなもん組んでねぇわ!」
「あら。わたくしはなかなかいいコンビだったと思いますわよ」
なおも納得せず吠えるカツキであったが、カイラ相手では暖簾に腕押しもいいところであった。相手が悪かったのである。
そのとき、カイラの腕を引く手があった。振り返るとそこにはまた機嫌の悪いショートがいた。
「どうしましたの? 調子が悪いんですの?」
「……ちげぇ」
「またむすっとしてますわ」
「……なんか嫌だった」
「またですの? 何が嫌だったのかわかりまして?」
「わか……んねぇ」
カイラは困ったようにショートの頭を撫でた。その様子をカツキやツユ、キョウカが何とも言えない顔で見ていた。カツキに至ってはイラっとしていた。
その後もこんな様子でカイラから離れようとしなかったが、それはもういつものことになりつつあるので誰も触れなかった。
「ショート、起きてまして?」
「カイラ……?」
「こんばんは。ちょっと外に出ませんこと? 今日は月が綺麗でしてよ」
「ああ……」
そう言ってカイラはショートの手を引いて外に出た。カイラが言った通り月が綺麗だった。もう遅い時間だと言うのにカイラは髪こそおろしているものの、変わらず踊り子の衣装を身に纏っていてショートは不思議に思った。
「おまえ、まだ着替えてなかったのか?」
「ええ。今日はちょっとショートを元気づけようと思いまして」
「? 俺を?」
「今日はあまり調子がよくありませんでしたでしょう? わたくしが一曲踊って魅せようと思い立ったのですわ」
「いいのか? 観客俺しかいねぇぞ」
「あら。あなたに捧げる踊りですもの。十分ですわ」
「そうか……」
そうして月明かりに照らされて踊るカイラは酷く幻想的で美しかった。ショートはカイラの指先、瞬き、足運び、すべてを目に焼き付けていた。
カイラのファンの中にはカイラのカリスマ性も相まって太陽と呼ぶ者もいる。けれどショートにとってカイラは月のような存在だった。カイラの優しさと愛情は月の光に似ている。自分が欲しいものをカイラはいつだって与えてくれた。
ショートに捧げる、ショートのための踊り。それがショートの心を満たしていくのを感じていた。
ショートはこの瞬間が永遠に続けばいいと願ってしまった。カイラは綺麗だ。綺麗なカイラをもっとずっと見ていたい。自分の為の踊りがどうか永遠でありますようにとショートは叶わぬ願いを抱くのだった。
カイラも最初こそ困惑していたが、持ち前の大らかさですぐに順応した。意外と甘いものも食べるとわかってからは手品で使ったキャンディの残りをあげたりして立派に餌付けを行うほどだった。
「カイラちゃん! 今日も最高だったよ!」
「お褒めいただき感謝いたしますわ!」
「カイラちゃんの踊りってセクシーなのに変なやらしさないよなぁ……品がいいって言うか。なんか引き込まれるっていうかさ!」
「そうそう、衣装も結構露出多いのになぁ……」
「ふふ、わたくしの技術の涙のにじむ努力の賜物ですわね!」
「うんうん、血のにじむの間違いかなぁ」
「そうともいいますわね!」
カイラファンにとって言い間違いからの訂正、そうともいいますわねはもはや様式美であった。ファンの表情もどこかほっこりしている。「それではまたどこかでお会いしましょう」と手を振るカイラに手を振り返し、ファンたちも去っていった。
「お待たせしましたわ、ショー……あら、どうしましたの?」
「……何がだ?」
「なんだか機嫌がよくありませんわよ」
「……」
「なにかありまして? キャンディは美味しくなかったんですの?」
「……うまかった」
「でしたら他に理由があるんですのね」
むすっとしたショートの頭を優しく撫でる。もっとしてくれとばかりに頭を押し付けてくるショートに苦笑するとカイラはまるで毛並みの良い猫を撫でるように可愛い可愛いと愛でるのだった。
「少しは落ち着きまして……?」
「……ん」
「それはよかった。少し目を離した間にご機嫌が悪いんですもの。驚きましたわ」
「……俺も、よくわかんねぇんだ。なんか嫌だった」
「いや? 何か嫌なことがありましたのね」
「ああ。カイラがあの人たちと話してて、なんかもやっとしちまった」
「もやっと?」
「俺も何て言っていいのかわかんねぇ……」
こてんと頭を預けてきたショートをあら、と受け止めた。
親を取られたみたいに思ったのかとカイラは思ったが、カイラがファンに声をかけられるのは今に始まったことではないし、ショートの様子も今まで変わらなかったため不可解であった。
ここにもしツユやキョウカ、カツキ辺りがいれば嫉妬だとわかっただろうが生憎ここにはショートとカイラ二人だけであった。
「俺もカイラの踊りは好きだ」
「え、ええ。光栄ですわね」
「踊り子でもあるんだから露出が多いのもわかる。腹壊さねぇか心配だが」
「お気遣い感謝しますわ。けれどわたくしは身体だけは丈夫ですので心配ご無用でしてよ」
「それならいい。……いい、はずなんだ」
「ショート……」
大分混乱しているらしい。「悪ぃ」といって離れるショートに「いえ」と返す。資金も集まった上に失踪した勇者を見かけたという情報の収穫もあり、イズクたちはその目撃情報を頼りに行軍を続けたのだった。
「せやっ! カツキ! そちらに行きましたわ!」
「わーっとるわ!!」
カイラの剣舞を掻い潜った魔族に変えられた勇者をカツキが追い詰める。アイザワの捕縛布とオチャコの魔法、ツユの舌が援護し、緑谷がオールマイトの力を宿した拳を魔族に繰り出し見事アイザワのときのように正気に戻すことに成功したのだった。
「やりましたわね!」
「ああ、カツキくんとカイラくん、ナイスコンビネーションだった!」
「あ゛!? コンビネーションだぁ!? んなもん組んでねぇわ!」
「あら。わたくしはなかなかいいコンビだったと思いますわよ」
なおも納得せず吠えるカツキであったが、カイラ相手では暖簾に腕押しもいいところであった。相手が悪かったのである。
そのとき、カイラの腕を引く手があった。振り返るとそこにはまた機嫌の悪いショートがいた。
「どうしましたの? 調子が悪いんですの?」
「……ちげぇ」
「またむすっとしてますわ」
「……なんか嫌だった」
「またですの? 何が嫌だったのかわかりまして?」
「わか……んねぇ」
カイラは困ったようにショートの頭を撫でた。その様子をカツキやツユ、キョウカが何とも言えない顔で見ていた。カツキに至ってはイラっとしていた。
その後もこんな様子でカイラから離れようとしなかったが、それはもういつものことになりつつあるので誰も触れなかった。
「ショート、起きてまして?」
「カイラ……?」
「こんばんは。ちょっと外に出ませんこと? 今日は月が綺麗でしてよ」
「ああ……」
そう言ってカイラはショートの手を引いて外に出た。カイラが言った通り月が綺麗だった。もう遅い時間だと言うのにカイラは髪こそおろしているものの、変わらず踊り子の衣装を身に纏っていてショートは不思議に思った。
「おまえ、まだ着替えてなかったのか?」
「ええ。今日はちょっとショートを元気づけようと思いまして」
「? 俺を?」
「今日はあまり調子がよくありませんでしたでしょう? わたくしが一曲踊って魅せようと思い立ったのですわ」
「いいのか? 観客俺しかいねぇぞ」
「あら。あなたに捧げる踊りですもの。十分ですわ」
「そうか……」
そうして月明かりに照らされて踊るカイラは酷く幻想的で美しかった。ショートはカイラの指先、瞬き、足運び、すべてを目に焼き付けていた。
カイラのファンの中にはカイラのカリスマ性も相まって太陽と呼ぶ者もいる。けれどショートにとってカイラは月のような存在だった。カイラの優しさと愛情は月の光に似ている。自分が欲しいものをカイラはいつだって与えてくれた。
ショートに捧げる、ショートのための踊り。それがショートの心を満たしていくのを感じていた。
ショートはこの瞬間が永遠に続けばいいと願ってしまった。カイラは綺麗だ。綺麗なカイラをもっとずっと見ていたい。自分の為の踊りがどうか永遠でありますようにとショートは叶わぬ願いを抱くのだった。
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