「今回もすげぇよかった。いつもありがとな」
「こちらこそいつもあざまる水産よいちょまる! とどしょ実際に使ってるとこ見せてくれてマジあげみざわ〜!」
「喜んでくれたなら何よりだ」
「炎と氷がキラってるのばちかわすぎた。ほんとあざまし〜!」
「ばちかわ……?」
「ばっちり決まっててかわいいよってこと〜!」
「そうか……そうだな。俺もこれは可愛いと思う」
「最高にきゃわ〜!」

可愛いと思う、と笑った轟が最高に可愛かった。
体育祭後の轟は本当に表情が柔らかい。ぽやぽやしているし、割と結構笑ってくれる。守りたいこの笑顔。ずっと笑っててとどしょ……なんて思いつつ、きららと話すようになって少しずつギャル語を覚えていっている轟に素直でかわいいなぁとも思うのだった。


「なぁ、今度は何がいい? また菓子でもいいか?」
「あーうん、それなんだけど……ね、とどしょ」
「何か欲しい物あったか?」
「欲しい物っていうか……もうすぐ夏休みじゃん?」
「そうだな。もう一学期終わんのか……早ぇな」
「はやいよねー。もう夏だよ。……でさ、夏休みなんだけど、一緒に夢の国か映画の世界に行かない?」
「夢の国に映画の世界……? なんだそれ」

やはりこの坊ちゃん二大テーマパークをご存じなかった。
きららは大雑把な説明をして、こういう施設だよというのをふんわり理解してもらうと、怒涛の勢いで遊びに行こうと押しまくった。


「ね! とどしょも絶対楽しいよ! 行こ! 行かなきゃ損だって! 行こう!」
「飾はすげぇ行きてェんだな」
「ちょー行きたい! 欲しい物ってか、物じゃないんだけど、とどしょの時間あたしにちょーだい!」
「お、おう……俺なんもわかんねぇけどそれでもいいか?」
「もち!! むしろあたしが色々教えるし! 2人で楽しんでこー!」
「……なら、よろしく頼む」
「まかせろり!」

こうしてきららはやや強引にデート(仮)を取り付けることに成功したのであった。恋はいつだって弱肉強食、勝ち取るものである。

それで轟と2人でどのテーマパークを巡るか決めることから始めた。轟は見たこともないようなので、たったかと二種類ある夢の国と映画の世界の資料をそれぞれまとめ、より興味のあるテーマパークに行くことにした。
最終的に決まったのは映画の世界であったが、その決め手はといえば、雄英内にあるウソ災害事故ルームに行ったときにクラスの者が「USJみたい」と言っていたのを思い出し、「実物見てみてぇ」と決まったのであった。


「USJ、大阪にあるんだよねー。新幹線で行くとしても朝早いけど大丈夫? 帰りも遅くなると思う」
「朝早いのは構わねぇ。でもあんま遅いと危ねぇだろ……いっそ泊まるか?」
「え、泊まりおけ? とどしょお家の人とか大丈夫? 厳しかったりしない?」
「……親父のいねぇ日に行けばいい。姉さんは大丈夫だと思う。おまえの方はどうだ? やっぱ泊まりはまずいか?」
「うちはそこらへん緩いから無問題! じゃあじゃあせっかくだからパートナーホテル泊まろ!」
「パートナーホテルってなんだ?」
「それはねぇ――」

めちゃくちゃ順調にすすんだ。轟は素直に「すげぇんだな」と感心するし、早くもここがいいと希望も決まったようである。和食が決め手だった模様。とどしょ和食が好きなのね。そば好きだもんね。


「って、さすがに同じ部屋はまずいよな」
「えーなんで? 別にいいじゃん。あたしは気にしないよ。ホテル代も一人で取るより安いし」
「でも俺らは異性だろ」
「? とどしょヒーロー志望じゃん。ヒーロー志望がやっちゃいけないことはしないでしょ?」
「それはそうだが」
「じゃあいいよ。仲のいいお友だちの二人旅行・・・・・・・・・・・・・なんてイマドキめずらしくないし。問題ないない」
「そう、なのか……わかった」

お友だちの二人旅行は珍しくないというのが効いたらしい。今まで友だちというものを作ってこなかった轟少年はそういうものかとすっかり信じてしまった。
別に嘘は言っていないが、きららに下心がないかと聞かれたらそれはNOである。ばっちりある。むしろ下心しかないかもしれない。色仕掛けでどうこうなろうとは考えていないが、ちょっとでも一緒にいたいし、とどしょの寝顔とか寝起きとか見たい……あまりにも見た過ぎる。


「それじゃ、詳しい日程とかはとどしょのパパン次第ってことで!」
「ああ、わかったら連絡する」
「まってる〜!」

こんな感じで実にゆるっとふわっと映画の世界でのお泊りデート(仮)が決まった。

轟は家に帰るとさっそく姉の冬美に話をした。夏休みに友だちと泊りがけで映画の世界に行くと伝えると「焦凍にもそんなお友だちができたのね! 任せて、お父さんには秘密にしとくね!」とサムズアップをしてくれた。
そう、友だちというのは間違っていないが、轟少年は異性の友だちというのを伝えていなかったのであった。
まさか今まで友だちをろくに作らず、泊りがけで遊びに出かけるほどの友人が異性だとは冬美も思わなかったのである。すっかり誤解したまま送り出すことになった。もし異性というのを知っていたなら、教師をしている身として泊まりは止めたであろう。

実にきららの擦り込みが効いていたのであった。



 


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