「え……そマ!? きらら一緒行っていーの!?」
「ダメだったら最初から誘ってねぇ」
「とどしょマジ神! 行くー!」
「なら、必要なもんあとでライン送っとくな」
「おけおけ! I・エキスポかぁ……めっちゃ興味あったの〜! マジあざまる水産よいちょまる〜!」
「よいちょまる……めっちゃハッピーって意味だったか」
「あってるあってる! とどしょ覚えてくれてうれぴよ〜!」
「お安い御用まるだ」

夏休み、きららもまた発明バカよろしく工房にこもっていた。轟も轟でヒーロー科は忙しくしているらしく、サポートアイテムの調整のためにもきららのもとをよく訪れていた。

そして調整していると、「そういえば、I・エキスポの招待を親父が受けたんだが、俺が代わりに行くことになってな。よかったら飾も一緒に行かねぇか。招待状1枚余ってんだ」と招待してくれたのだ。

I・アイランドといえば海外に浮かぶ巨大人工移動都市であり、今はI・エキスポといって世界中の科学研究者たちの技術の粋を発表するプレオープンが控えていた。
きららの野望は、世界を自分の作ったサポートアイテムでキラキラさせることである。世界中のものすごい研究者たちの作品にものすごく興味があった。行きたいけどコネないなぁ……大人しく一般公開待つかぁと思っていたところに轟が招待状を持ってきてくれた。
まさに暗闇に差し込んだ光。最高にキラってた。神だった。きららの好きぴ神だったやばみ。
そんなこんなできららも一足先にI・エキスポを堪能することになったのだった。







「あ、見てとどしょ! ヴィラン・アタックだって!」
「タイムアタックか」
「とどしょ出てみなよ! 絶対とどしょが一番とる!」
「そうか? とりあえずやってみるか」
「そうこなくっちゃ!」

I・エキスポはプレオープンであったが大層な賑わいをみせていた。
周りにはプロヒーローも多くおり、アトラクションも充実している。その中の一つによさげなものを見つけ、きららの押しもあり、轟は参加することにしたのだった。


『ひゃー、すごい! すごい! すごーい!!』
「フゥー!」
『じゅ、14秒! 現在トップに躍り出ました!』
「とどしょしか勝た〜ん!!」
「轟くん! 飾さんも!」
「彼らもクラスメイト?」
「轟さんはそうですけれど、飾さんは違うクラスの方ですわ」
「へぇ、みんなすごいわね、さすがヒーローの卵!」

聞き覚えのある声に視線を向けると、そこにはA組の生徒がちらほら集まっていた。
どうやら彼らもI・エキスポの招待を受けて来場していたようだ。ヒーロー科の生徒たちは轟と同じように、みんなコスチュームを着ていたし、きららもこれがきららの戦闘服と言っていつものくびれが眩しい作業着を着ていた。「やっほー!」とにこやかに手を振る。
八百万たちの後ろにいた爆豪が突如として爆破させ飛び出した。


「てめぇ、この半分野郎!」
「爆豪」
「いきなり出てきて俺すげーアピールか! コラ!」
「緑谷たちも来てんのか」
「無視すんな! だいたいなんでてめーがここにいんだよ!?」
「招待を受けた親父の代理で」
「あのー、次の方が待って……」
「うっせ! 次は俺だ!!」
「みんな止めるんだ! 雄英の恥部が世間に晒されてしまうぞ!」
「う、うん!」
「お、おう!」

MCにも噛みつく爆豪を飯田が飛び出して止め、緑谷と切島も慌てて飛び降り飯田と共に爆豪を抑えにかかった。なおも爆豪は抵抗していたが、3人係では分が悪いというもの。
「フフ」と思わず笑ってしまったメリッサと同様、きららも「爆ぴ、相変わらずだねぇ」と笑っていた。







「こうして見るとUSJと似てんな」
「だねー! でもこっちの方がより個性が前面にでてるよねん。あ、みてみてとどしょ! 虹出てる!」
「水の個性か……今日は天気がいいもんな」
「ね! めっちゃ外遊び日和!」
「……お。あれ乗ってみるか? 虹くぐれっかもしんねぇ」
「! 乗る〜! 行こ行こ!」
「あ、おい。そんな急がなくても乗り物は逃げねぇぞ」

轟の腕をぐいぐい引っ張って行く。きゃっきゃっとはしゃぐきららに、しょうがねぇなと小さく笑った。


「なぁ、おい……あれって轟と飾じゃね?」
「……マジだ。え、やっぱそういう感じ!?」
「ありゃただの友達の距離感じゃねぇだろ……オイラにはわかる。ありゃ一夜を共にした男女の距離感だ……!!」
「うおおおマジか……! マジかぁああ……! 轟もやるなぁ!?」
「クソォ……イケメン滅べ……!!」

へっくしゅ、とくしゃみがでた。きららが「とどしょ風邪? 水当たるかもだし、やめとく?」と心配そうに立ち止まるのを「いや、大丈夫だ。そういうんじゃなさそうだ」と返した。


「俺よりおまえこそ気をつけたがいいんじゃねぇか?」
「? なんで?」
「腹出してんだろ。風邪ひきそうで心配だ」
「ふはっ! 夏だしだいじょーぶ! 心配してくれてあんがとね〜!」
「……あざまるじゃねぇのか?」
「んふふっ、きららも普通に喋ったりするときあるよん」
「そういうもんか」
「そういうもん」
「奥が深いんだな」
「にゃははっ!」

そんなやり取りをしつつ、しっかりアトラクションには乗った。
結果的に言えば虹をくぐることはできた。水の個性と、光の反射を科学技術で補い、そういうことができるようにされていた。
ちょうど乗り終わったところで閉園時間となり、宿泊施設へと向かう道すがら、きららが大はしゃぎしつつも、真面目に考察を深めていると轟が相槌を打ってくれた。


「はっ、めんごめんご。ついあきらんと同じように話しちゃった。ばーって一気に言っちゃって、びっくりしたっしょ〜? ごめんねー」
「いや、緑谷で慣れてるから大丈夫だ。でもすげぇな、おまえもやっぱ未来の技術者なんだな」
「え〜照れる……。ここにいる人たちに比べたら、あたしなんてまだまだヒヨッ子だなってやっぱ実感するよ。あたしもいつかこんなすごいの作るんだーって、なんか気合入っちゃった」
「バイブスがあがったのか?」
「そう! バイブスぶちアガり! ほんと、連れてきてくれてあんがと」
「いや……俺も、飾と来れてよかったと思ってる」

そんなことを微笑まれて言われてしまったら、ちょっとあの、かなり期待しちゃうんですけど。とどしょ……期待してもいいんですかねぇ。
ねぇ、と声をかけようとして、轟のスマホが鳴った。がっくしきた。


「飯田からだ。……なんだ? どうかしたか? ……メール? わりぃ、見てねぇ。…………そうか、わかった。18時30分だな。ああ、飾にも伝えとく。ああ、ああ。じゃあまたな」
「なんだったん?」
「18時30分に正装に着替えてセントラルタワーの7番ロビーに集合するらしい」
「なる。みんなで行く感じね? んじゃあたし早く行かなきゃ。遅れちゃう」
「まだ20分あるぞ?」
「女の子はおしゃれに時間がかかんの! 正装ならなおさらね!」
「そういうもんなのか」
「そういうもんなの」
「そうか」

ちょっと前にもこんなやり取りしたなと思いつつ「じゃああたし、ダッシュで行ってマッハで支度するからまたね〜!」とBダッシュした。轟はその後ろ姿に「……ほんと、速ぇな」と感心した。時間がないので必死なのだ。


 


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