「飾、ちょっと」
「ん? なになにパワロダせんせ」
「おまえ……これ、参加する気ある?」
「……え、これって……ヒーロー科の林間合宿!?」
「そう」

パワーローダーが出したのはヒーロー科の林間合宿に関するしおりだった。
そういえばとどしょがI・アイランドから帰るときなんか言ってたなと思い出す。ランニングいつからしようかという話で、合宿があるからそれが明けてからと約束したんだった。


「これヒーロー科の合宿でしょ? なんであたしが……? てか参加できるもんなんです?」
「この合宿の主な目的は個性≠伸ばす……つまり鍛えること。飾はサポートアイテムに直接個性使うタイプでしょ。伸ばしてて損はないと思って、ちょっと前から掛け合ってたんだ」
「パワロダせんせ……きららのためにそこまで……!? ええもうそれ行くっきゃないじゃん! 行くーー!」
「言っとくけど死ぬほどきついよ。くれぐれも死なないように」
「おけまる〜! ゾンビっても戻ってくんねー!」
「ゾンビにならないようにしなさい」

パワーローダーの愛情をしかと受け止め、きららはガッ飛んで成長して帰ってくることを心に誓った。次に会う時は数段レベルアップした己を見せる時である。
発目が「ゾンビになってたらちょっと色々実験に付き合ってくれます? ゾンビにも効果あるのか知りたくて!」と好奇心に満ちた表情で話しかけてきた。「おけおけ。死ぬこと以外はかすり傷〜!」「ゾンビって死んでるんじゃありませんっけ?」「ありゃ」まぁ、ちょっときららが抜けてるのは今に始まったことじゃないし。

こうしてきららは一人、ヒーロー科の林間合宿にまざることになったのであった。







「やっはろ〜!」
「飾? なんでここにいんだ?」
「今回の特別参加者ゲスト。一緒に合宿に参加することになったサポート科の飾きららだ。みんな、よろしくするように」
「よろぴ〜!」
「そうか、よろしくな」

A組とはI・アイランドでバーベキューを共にしたこともあり、面識があるのですぐに馴染むことが出来た。その様子を見た相澤がバスはA組の方に乗るようにと気を遣ってくれた。


「ねね、これ席順とか決まってる感じ?」
「席順に並ぼうと思ったのだが……うむ、君は轟くんと仲が良いだろう。轟くんの隣に座るといい」
「マ!? 飯田社長懐〜!」
「俺は社長ではないが……」
「飾のあだ名みてぇなもんだ。深い意味はねぇから流してくれ」
「む。そうなのか」

近くにいた芦戸が「よかったじゃ〜ん! 飯田ナイス!」とグッドサインを向けてきた。「ほんそれ!」きららもピースピースとはしゃぐ。
夏休み入ったらあんまり会えないかなとか思っていたけれど、そんなことはなかった。特別演習とかがあるとかで、アイテムの調整でそれなりに会えてたし、USJも行ったし、I・アイランドも行った。そして合宿も一緒とかもうリーチでは? 運命では? はぁ……結婚しよ。頭の中はよいちょまる空間であった。







バスの旅路はいいものだった。持ってきていたポッキーを齧っては「とどしょもどーぞ。はい、あーん」「お」ってな感じで仲良くしていたし「手、見してー」「いいぞ」と手相占いもしていた。


「え……とどしょ感情線すご」
「感情線?」
「恋愛に友情、家族愛とか情熱とか感情のことが分かる線なんだけど。とどしょのはこれが濃くて長いのね?」
「それだとどうなるんだ?」
「めっちゃ愛情深くて、強い心を持ってるって感じ!」
「……俺が?」
「そ。とどしょ優しいし、ヒーローなるために頑張ってるもんね。合ってんじゃん?」
「……そうだな。もっと頑張って、立派なヒーローにならないとな」
「ストイックだね〜」
「おまえもな」
「……そう?」
「夏休みもほとんど工房籠ってるじゃねぇか」
「……あーうん、そうかも。あんま自覚なかったわ……」
「自分じゃ気づかねぇもんだな」
「それな〜」

じっと手相を見ていると、やっぱとどしょすごっときららは思った。強い、強すぎる。勝利を約束された手相だった。ただちょっと波乱万丈っぽい。
じっと結婚線を見ると、意外なことにめちゃくちゃ結婚が早い。でも結婚線があったことにまず驚いた。とどしょも恋愛に興味ないわけじゃないんだ……。へー、え。もう押すしかないな? 神風吹いてる。
恋は勝ち取るものである。ちょっとしたことをきっかけにぐいぐい行くのが定石なのだ。ほんとか。

でもパーキングについてしまい、みんな一度バスから出ることになった。あっれー、なんか前もこんなことあったくない?







パーキングに降ろされたと思えば、そんなことはなく。ワイルド・ワイルド・プッシ―キャッツのマンダレイとピクシーボブが現れると、あれよあれよという間に森へと放り出されてしまう。
しかもそこにはピクシーボブの個性で作った土魔獣もいて、まさしく魔獣の森であった。ここを突破して、合宿場まで歩かなければならなかった。


「やっぱヒーロー科ってえぐち。これ抜けるのやばそ」
「危ない飾さん!」
「まぁ、だからって足手纏いにはなんないけどぉ……!」
「おまえ、アイテムそれ持ってきてたのか」
「参加した目的が目的だし……自衛くらいはまぁ? てなわけで、あたしのことは特に気遣わなくていいから、ちゃっちゃと倒して森抜けよ☆」
「た、逞しい……」

魔獣の量が多かった。一人一人に順番にデコっている時間はなさげ。目についた人をデコってバフかけて、アイテムで迎撃して、八百万の創造をデコって底上げするのがきららの最適解であった。


「あ、おいっ! クソギャルてめェまた変なもんつけやがったな!?」
「変じゃない! あげみざわだし!」
「それが変だって言ってんだよ!!」
「爆豪! バフかかってんだろ。ならそれは変なもんじゃねぇ」
「おめーは逆にプライドとかこだわりなさすぎだろ!」
「別に、飾がいいと思ってんなら俺はそれでかまわねぇ」
「とどしょ……! やっぱとどしょ神〜!」
「ヒュー! やっぱイケメンは言うこと違うねぇ。爆豪、諦めたがいいぞ」
「んあああああ!! マジで覚えてろクソギャル半分野郎……!! 後でまとめてブッ殺す……!!!」
「悪鬼羅刹……」

爆豪は二人へのもやもやだったり怒りを魔獣にぶつけ、それは獅子奮迅の活躍を見せた。
元凶である二人は「すげぇな、爆豪」「爆ぴも鬼つよだもんね」なんて話していたなんて知ったら、爆豪はもっとブチギレていただろう。
そんなこんなで、みんなで協力しながら合宿場まで突き進むのであった。


 


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