「やーーっと来たにゃん」
「とりあえず、お昼は抜くまでもなかったねぇ」

ここから三時間とはなんだったのか、お昼何てとっくに過ぎて夕方に差し掛かっていた。
みんなボロボロだった。個性を酷使しすぎていたし、距離も半端なかった。初っ端からハードな合宿である。


「ねこねこねこ……でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら……特にそこ4人。躊躇のなさは経験値によるものかしらん? 三年後が楽しみ! ツバつけとこー!!!」
「お、おお……」
「恋敵じゃん?」
「え」
「きらら、ファイト!!」
「お、おう」

ピクシーボブが文字通りツバを轟たちにかけるのをちょっと引いてみていたら、芦戸が燃えていた。
体育祭以降、趣味も合うし、芦戸の大好きな恋バナをしたりとよく連絡をとっていたのもあって、きららと轟のことをかなり応援してくれているのであった。
そこで初めてきららも、あ、これライバルなんだと気づいた。ピクシーボブというか、プッシ―キャッツといえばキャリアを10年以上積んでいる。年齢的にそんな風に見てなかったけど、愛に歳の差も時間も関係ないのだ。ちょっとこれはそろそろドストレートにいくかぁ、ときららも気合を入れるのであった。バイブスアゲてくぞ☆







「温泉とかマジあげみざわ。いい合宿場だねん」
「ほんとほんと! ってかきらら、前から思ってたけどスタイル良すぎない!?」
「お? 言うてあしみなも良きじゃん? そんな変わんなくない?」
「変わる変わる! 私女だけどきららの身体めっちゃ触りたい!」
「ウケる。めっちゃドストレート」
「え、触っていい!? ちょっと! ちょっとだけだから!」
「その台詞はヒーロー志望としてやばみだけどいいん?」
「大丈夫! 私たち友だちだから!!」
「それあしみなが言った時点で免罪符にならなくなったぞ〜。まぁ、別に減るもんでもないしいいけどねん」
「やったーー! じゃあ遠慮なく」
「うおっ」

マジで遠慮なかった。女同士だしと軽い気持ちで了承したが遠慮がなさすぎた。
容赦なく揉みしだかれるし、なんかもうどうにでもなれ、なるようになれと半ば思考を放棄した。


「わぁぁ……! ええもう、ずっと揉んでたいんだけど? ましゅまろじゃん……!」
「自分の触ったら似たような感触が味わえるさ〜」
「違うよ! え、めっちゃ柔らかい……てか肌すべすべ……ええっ、なにこれ……きらら私と付き合わない!?」
「お風呂から上がったら秒で後悔すっからやめとこ……」
「それは残念……てかほんと腰ほっそ」
「んんっ、まってくすぐった……お? なんか増えてる……?」
「あ、バレた? 葉隠だよ! きららちゃんスタイルいいなって前から思ってたの! 便乗しちゃった!」
「にゃはは……もう好きにするがいい」
「「わぁああいっ!」」

きららはもう遠い目をしていた。騒ぎに気付いた八百万が慌てて止めるまでそれは続き、きららは解放されたころにはすっかり悟りを開いたような顔をしていた。女同士だからと色々甘く見過ぎていたようだ。

そして板を隔てた向こう側には男湯があるというのをすっかり失念していた。
入浴時間は男女共通である。きららの身体のあれこれは僅かにあちら側に漏れ聞こえてしまっていた。


 


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