雄英高校サポート科。それは偉大なヒーローとなるための登竜門と言われるヒーロー科に比べるとやはり注目は劣るが、未来の有能なヒーローの卵にサポートアイテムを作れるという利点があり、こちらも人気のある科である。
飾きららはそのサポート科のH組に属しており、同じくクラスメイトの発目明と並んで発明狂としてサポート科の中では有名であった。

今日も今日とて放課後工房に入り浸り発目と競うように発明品を作り上げていた。
そしてお約束のように発目が爆発を起こすと「にゃはは」と特徴的な笑い声をあげる。


「今日も絶好調だねぇ、あきらん」
「ごめんなさい! 調整をミスりました。回転数が足りてなかったみたいです!」
「わかりみが深い。きららもさっきミスってマジぴえんだった」
「そうですか!」

発目はきららの言っている意味をほとんど理解していなかったがいつものことである。
発目めいなのにあきらん呼びされているのも自身が人の名前に興味がないというのもあり、自分が何と呼ばれようが気にしていないからである。特に訂正もしていないのできららは今日まであきらなんだなと勘違いしたままであった。
発明バカで工房にこもりきりの発目を下の名前で呼ぶ者はそういないし、きららはギャルである。あきらんというのもギャルのあだ名なんだなとしかみんな思っていない。よってこれからも訂正されることはないだろう。
そして発目も発目できららの名前もろくに覚えていなかったりする。


「てかさ、この間雄英ウチヴィランの襲撃あったっぽいじゃん? 体育祭なくなるんかなーって思ってたけどやるみたいでマジ雄英グッチョブって感じ」
「企業に見てもらうビックチャンスですからね。例年通り開催されて何よりです!」
「ね〜! あたしらもバイブスあげてこ〜!」
「ええ! 私のドッ可愛いベイビーを企業に見てもらわなくては!!」

入学して早一ヶ月。かつてスポーツの祭典と呼ばれたオリンピックにとって代わる雄英体育祭が近づいていた。
プロにスカウトされるために張り切っているヒーロー科はもちろん、ヒーロー科への編入を目指す普通科、企業へ発明品をアピールするためにサポート科も体育祭に向けて仕上げていっていた。


「てかねー思うんだけどさ〜! 自分で自分の作ったアイテム使うのもいいけどさ、やっぱ使ってもらいたいよねん」
「それは確かに!」
「できればイケメン! いきゃめんならもう言うことなし! 付き合いたい!」
「私はベイビーが目立ちさえすれば誰でもいいです!」
「いきゃめんがバチボコにデコったアイテムぶっぱしてくれたら惚れるしかないわ。ヒーロー科によさげなのいないかなぁ〜」
「? あなた確かヒーロー科の試験受けたんじゃありませんでしたっけ?」
「お。あきらん覚えてたの? そそ、受けたんだけどこれだってのがいなくてねぇ……あ、いや。いたにはいたな? でも好みのタイプじゃなかったんだよねぇ」
「へー、そうなんですね」

きららはヒーロー科の入試で見つけたよさげな奴を思い出していた。
確か爆破の個性を持っていて、ものすごいタフネスだったのは覚えている。でもきららの好みである可愛いイケメンではなかった。接してみたらもしかしたら可愛い一面もあるのかもしれないが、ビビッとはこなかった。運命の女神は違うと仰せらしい。


「はぁ……どっかに落ちてないかなぁ……いきゃめん。天然な感じだとなおよし! 母性擽られたい……」
「そんなあなたにこちらをどうぞ!」
「お、なになに?」
「こちら疑似育児体験ができる「はぐみくん」です! リアルな乳幼児をモデルとしてランダムに食事やトイレ、コミュニケーションなどを求めて泣きます! もちろん夜泣きも完備! これであなたも子育てのプロです!!」
「にゃはは。そう来たか。彼ピより先にママとはやばたんピーナッツ」
「さぁ! 遠慮せず!」
「お、おう」

こうなった発目は止められないので受け取った。受け取ったがこっそり電池は抜いておいた。体育祭を目前に控える中、はぐみくんの世話に追われてしまっては結果は残せないので。

きららも作った発明品をデコりつつ、いろんな想定をして発明を繰り返した。
まだ入学して一ヶ月ちょっとながらこの工房には発目ときららが作った発明品で溢れかえっている。そろそろ片付けないとまた崩れ落ちるだろう。パワーローダーがちゃんと片付けまでしなさいと怒るのが目に見えたが、それよりめんどいが先立ちこのままにすることにする。

ヒーローに使ってもらうことが前提のサポートアイテム。きららの夢はきららが作っためっかわなサポートアイテムで世界をキラキラにしてもらうことである。
そのために将来どんなヒーローが出るのかヒーロー科の入試をわざわざ受験し、受験者の個性を見て回った。わりと試験内容がきららにも有利な内容であったため、うっかり合格してしまい、手続きが面倒だったが有意義な時間であった。爆破の個性も派手でいいけど、もっときららは氷だとか、炎だとかの個性がいい。欲を言えばどっちも持ってるといい。間違いなく映える。

そんな夢みたいな個性があったらいいなと思いながらアイテムを作る。
まさか本当にそんな夢みたいな個性と理想の性格と容姿を兼ねそろえたおにいきゃめんがいるなどとはこの時は思いもしなかった。

余談だが発明品の山は案の定崩れ落ちた。パワーローダーにはめたくそ怒られた。


 


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