あっという間に雄英体育祭当日である。
肝っ玉の太いきららはそれはもうテンション爆上がりでキラキラデコった自慢の発明品を手にやる気満々であった。入場からやはり敵の襲撃を耐え抜いたヒーロー科の1年A組に注目が偏っていたが、そんなことは些事でしかない。


「お。あきらんあのツンツンヘアーの人だよ、ちょっとよさげだった感じの人ー!」
「へぇ、彼が。1位の人だったんですね」
「ねー。びっくりぽん」

選手宣誓がヒーロー科の入試で1位だったという爆豪勝己であった。その爆豪はきららが入試で見つけたよさげな人である。だが相変わらず可愛いとは程遠かった。
選手宣誓で「俺が1位になる」と宣言し、続けざまに「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」と言ってのけたのだ。


「めたんこ不遜だな? ナマ言ってる感じ一周回って逆にきゃわまであるか……? ないな??」
「ふむふむ、あなたの好みではなさそうですね!」
「それな〜」

爆豪への批判はすさまじかった。開始早々敵を作ったようなものである。
きららは爆豪に可愛いを見出そうとしたが失敗に終わった。現時点ではどうあがいても刺さりそうになかった。

そしていよいよ体育祭第一種目、障害物競争が始まろうとしていた。







「お。氷じゃ〜〜ん!!」

障害物競争がスタートすると開幕足元を凍らされた。きららはお目当ての個性にテンションがブチ上がる。デコった発明品で軽々回避するとこの個性はどんな人がもっているのだろうと、確認するために前に進んだ。


「!! 神すぎん???」

ちらっと見えた横顔がきゃわたん過ぎて高まるしかなかった。
しかも氷の威力がすごい。とんでもなく強い。ロボ・インフェルノを楽々突破し、ぶっちぎりで独走していてただのいきゃめんじゃない、神だった。

もうきららはこの時点で運命を確信していた。ビビッを通り越してバチバチした。なんかとんでもなく神いきゃめんの周りがキラキラしている。
きららはキラッとデコったあげみざわなアイテムを今すぐ押し付けたくてしょうがなかった。おかわなイケメン、それも氷の個性持ちにキラデコアイテムをぶっ放してもらうことこそきららの野望である。その野望を叶えんと神いきゃめんを追いかるきららも実にすごかった。


「にゃはは。さすヒーロー科。いい波のってんね〜」
「うお! すげぇデコ!! 雄英にもギャルいんのか!?」
『1−H飾、ド派手にぶっ放したー! 見栄え良いな! さすが現役ギャルって感じ!』

ロボ・インフェルノを突破していくヒーロー科を褒めつつ、キラキラにデコって性能を爆上げした発明品をぶっ放す。実に華やかに第一関門をクリアするのだった。
先頭の轟が速すぎる。目当てのイケメンを追いかけるためにきららは移動用に作っておいた発明品を起動させた。

第二関門のザ・フォールも要は綱渡りであったが、飛べさえすれば全く関係ない。飛べる系アイテムってやっぱ外せなくない、と作った発明品が大活躍する。


「やりらふぃ〜」
「さっきのサポート科のギャルか! すっげぇヒーロー科俺らより目立ってやがる……!」
「ああ、すさまじい煌めきだ」
「すごいな彼女、まだ1年だっていうのに性能はもちろん、独創性といい見た目のインパクトといい才能がある」
「是非とも彼女の作ったサポートアイテムを使ってみたいものだ」

先にロボ・インフェルノを突破していた瀬呂と常闇を抜いていく。
プロヒーローたちへの掴みもばっちりだ。文字通り翼を授けるこの発明品も映えを重視してデコったものである。性能良し、見た目良し、注目もばっちりということなしであった。
後方でキラメキが売りである青山が「僕の専売特許が……」と嘆いていたりした。







そして第三関門、一面地雷原、怒りのアフガンに差し掛かった時轟に近づくことに成功した。
声をかけようとしたその時、爆豪が轟を追い抜き、熱い展開が繰り広げられた。爆豪の個性が爆破であるだけに軌道が逸れたりして声をかけるどころじゃなくなってしまい、きららはしゃーなしとばかりにとりあえず声をかけることを諦めることにした。

だがそれから間もなくA組緑谷出久が地雷の爆発を利用して爆進する。きららは爆風に煽られ「やばたんピーナッツ」と緊急脱出用のパラシュートを開き、地雷のないところに無事に着地した。


「今のもじゃもじゃくんどちゃくそクレイバーだな? あとちょっとだったんだけどなぁ……歩きとかつらたん」

そんな愚痴をこぼしながらもきららもしっかりゴールするのだった。
普段から実戦的訓練を受けているヒーロー科と違って、サポート科はひたすら機械いじりしているだけであるからどうしても地力の差が出てしまう。緑谷が爆進するまでは3位と大健闘していたものの、結果15位とランクが落ちるのであった。

ゴールしてからすぐきららは目当てのいきゃめんを見つけそれはそれは超絶フレンドリーに話しかけるのだった。


「ねーねー名前なんてゆーの?」
「あ?」
「あたしきらら〜。よろぴー!」
「(よろぴー?)轟焦凍だ」
「おけとどしょね! 氷ぶっぱマジレべチできゅんって感じだった! 個性詳しくおせーて!」
「……半冷半燃。右で凍らせて左で燃やす」
「マ!? 炎もとかマジ運命〜!! とどしょしか勝たん〜!!」
「……緑谷に先越されたけどな」
「お。でも顔面偏差値とどしょぶっちぎりすぎん? 神すぎてきららとどしょ見てからずっと沸いてるわ」
「沸く……おまえも炎系の個性持ってんのか」
「いやきららの個性は――」

個性を話そうとしたら次の種目の説明が始まった。
第二種目は騎馬戦。第一種目の順位によって持ち点が異なり、ポイントは下から5ずつ上がる。だが例外として1位の持ち点は1000万Pと桁外れであった。

緑谷出久を狙った下剋上サバイバルが始まろうとしていた。


 


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