「でさ、あたしの個性なんだけど。個性はデコレーション! デコったものの性能をアゲまくんの。逆にダサくデコったら性能はダダサガり。これは物だけじゃなくて人にもゆーこー!」
「バフみてぇなもんか」
「そう! で、とどしょ騎馬一緒に組もーよ! きらら氷と炎の個性持ってる人探しててさー、こんなこともあろうかとサポートアイテム山ほど持ってきてんの! とどしょの氷も炎もこのあげみざわなアイテムが完全サポートするよん!」
「……俺は戦闘においてひだりは使わねぇ。他当たってくれ」

炎は使わないと言った轟の顔がとんでもなく暗かった。なにか深い事情があるらしい。きららは影ある系いきゃめんというのを敏感に察し、今回は引くことにした。嫌われてしまっては元も子もないし。


「お。おけおけ、影アリ系ね。んじゃ今回は諦めるけど今度きららのアイテム試してみてよ! 絶対後悔させないからさ!」
「……わかった」
「んじゃバイビー!」

だがただで引きはしない。せっかくの縁なので、鮮やかに次を取り付けた。達成が少し遠ざかっただけで目的を遂げられるのであれば構わないのだ。

きららはさて、誰と組もうかなと辺りを見回した。次に気になると言えば入試でよさげだと感じた爆豪だなと思い、爆豪に声をかけに行こうとしたところで声をかけられた。


「ねぇ、そこのギャル」
「あたしのことー?」 

そう言って返事をした途端、意識が落ちた。







『3位鉄て……アレェ!?』
「んぁ……?」
「ご苦労様」
『オイ!!! 心操チーム!!?』

気付いたら騎馬戦が終わっていた。
チームを組んだ記憶すらないというのに、なぜか3位だった。最後に記憶に残っているのは目の前にいる隈がすごい男子に声をかけられたということだけだった。


「んー? これ君の個性?」
「だったら?」
「あざまるって感じ? 全然覚えてないけどあたしら勝ったんしょ? マジ大健闘あざまる水産!」
「……変な奴」

隈が特徴的な男子はそのままどっかに行ってしまった。もうお昼休憩である。
きららも本戦に向けて腹ごしらえするかーと発目を捕まえてランチラッシュの飯処に向かうことにした。







「で、あきらんはあのもじゃもじゃの1位の人と組んだんだ? 鬼レース飛び込むとかやばたん」
「フフフ、おかげで大いに注目を浴びることが出来ました! そういうあなたも3位だったんですよね?」
「そそ。でもきららなーんもしてないよ。隈がすごい男子がなんか無双? してくれたっぽい」
「へぇ、そうなんですね。まぁ、本戦出場できるんですからよかったじゃないですか!」
「ほんそれ! マジチョベリグ」

ランチラッシュが作ってくれたご飯をよさげにデコって更に美味しく食べながらきららは発目とそんな話をしていたが、発目は時間が惜しいとばかりに早食いし、本戦に向けてドッ可愛いベイビーたちの調整をするとのことでさっさとどこかに行ってしまった。
ご飯くらいゆっくり食べなよ〜、と思うが発目が携帯食どころかご飯すら食べずに発明に没頭するのは今更だ。食堂で食べただけでもグッチョブであった。







昼休憩が終わった後、謎にA組の女子たちがチアの服を着ていた。さすヒーロー科、自らエールを送り盛り上げるとかサービス精神やばたんなどと思っていたら、どうもなんか違ったっぽい。なんか揉めてら。
まぁ、それはそうと最終種目はトーナメント戦だった。1対1のガチバトルである。ミッドナイトが騎馬戦1位のチームから順にくじを引かせようとすると、きららと同じ騎馬にいたらしいヒーロー科の男子が手をあげた。


「俺、辞退します」
「尾白くん! 何で……!?」
「せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」
「騎馬戦の記憶……終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしかないんだ。多分、奴の個性で……チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かなことだってのも……!」
「尾白くん……」
「でもさ! 皆が力を出し合い争ってきた座なんだ。こんな……こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて……俺は出来ない」
「(ヒーロー科えぐち。ハート激アツじゃん?)」
「気にしすぎだよ! 本戦でちゃんと成果を出せばいいんだよ!」
「そんなん言ったら私だって全然だよ!?」
「違うんだ……! 俺のプライドの話さ……俺が嫌なんだ。あと何で君らチアの格好してるんだ……!」
「(それはきららもちょー気になる)」

なんかヒーロー科って感じの受け取り方だなと思う。きららからしてみれば棚ぼたラッキー、運も実力のうち〜マジあげ。と非常にゆるっとしているのだが、雄英体育祭の本戦に挑むことそのものに崇高なものを見出しているようだった。
ただのアピールの場以上に、ずっとヒーローに憧れてずっとこの祭典を見てきたが故にここに立つという姿勢からして違うのだろう。尾白の言葉に同意するように、もう一人の同じ騎馬チームだった庄田も声をあげた。


「僕も同様の理由から棄権したい! 実力如何以前に何もしてない者・・・・・・・が上がるのはこの体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」
「なんだこいつら……!! 男らしいな!」
『何か妙な事になってるが……』
「ここは主審ミッドナイトの采配がどうなるか……」
「そういう青臭い話はさァ……好み!!! 庄田、尾白の棄権を認めます!」

庄田と尾白が棄権したので5位だった拳藤チームから繰り上がりで2名上がるはずだったが、拳藤チームも轟の氷でほぼ動けていなかったらしく、最後まで上位キープしていた鉄哲チームが上がるべきだと主張し、鉄哲チームから鉄哲と塩崎の2名が繰り上がることになった。

きららはなんかもうヒーロー科ってマジえぐち。と言った感想しか出てこなかった。あまりにも熱い。なんかここまで熱いときららもいっちょやってやるかぁという気分になってくる。
正直本戦は発明品のアピールの場としか思ってなかったし、勝ち負けもどうでもよかったのだが、同じチームだった人間がこうも本戦に対して譲れないものを抱えているとなると、そのまま進むことを決めた自分としても頑張ろうって気にもなる。


「やっぱヒーロー科とあたるよねん。あたしきらら。よろぴ〜!」
「芦戸三奈! よろしくー!」

一回戦はピンクのド派手な女の子とだった。正直個性とかしらね。まぁなんとかなるっしょときららは本戦に向けてアイテムを調整するのであった。


 


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