早いものでもうクリスマスである。恋人たちのイベントが迫っていた。
仮免を取ったときに渡したアイテムは、それはもう喜ばれた。「なんかこそこそしてんなとは思ってたら……これ作ってくれてたのか。随分前から用意してくれてたんだろ? すげぇ嬉しい。ありがとな」とぎゅうぎゅう抱きしめられた。本当は9月に渡す予定だったのだが、思わぬアクシデント――アクシデントなのかはさておき――があり、12月になってしまった。轟も3ヶ月で随分成長しているし、思い切って色々弄っていたのだ。
こちらとしては喜んでくれてうれしみ〜。といった感じだが、クリスマスである。何を渡そうか迷っていた。


「てなわけで、彼ぴなにがほし〜?」
「……なるほど、直接聞くのは確実な手だな」
「彼ぴ物欲ないし、打ち込んでる趣味みたいなのも……筋トレくらい? 趣味って言っていいのかわかんないけど。難しいんだもん」
「筋トレは趣味っていうか……トレーニングの一環だな。そうだな……欲しいもの……なんでもいいのか?」
「きららが叶えられる範囲ならね〜」

悩み過ぎてもう直接聞こうと思い至った。サプライズっていうのもいいけれど、今まで散々自分の趣味を押し付けて、一切文句がでないどころか、きららがいいならいい、と言うあたり、多分あったかいうどんを出しても喜んでくれると思う。轟が好きなのは冷たいそばなのに。
それはなんかちょっとな、と思ったきららは確実な手を取ることにしたのだった。


「それなら……一日ずっと一緒にいてぇ」
「……それって今と変わんなくない? 休みの日はずっと一緒にいるじゃん?」
「そうだけど……俺にとって一番欲しいのはきららとの時間なんだ。これに勝る欲しいもんはねぇな……」
「彼ぴ……すこすこのすこ〜!!」
「俺も……きららしか勝たねぇ」

らぶぽよは健在であった。二人で話し合い、当日は外出届を出して近くのカフェでランチをすることにした。ちょっとしたクリスマスデート気分を味わうためである。本当はイルミネーションも見たかったのだが、夜遅くまでの外出は認められていないので、ここは我慢をすることにする。
そうして前々からプランを練っていたのだが……A組もH組も寮でクリスマスパーティーをするらしく、せっかくだからとパーティー自体には参加することにしたのだ。一日中一緒にいることはできなくなったが、それでも多くの時間を共有することはできる。こうしてクラスでワイワイ騒げるのも三年間だけなのだ。これもまた、青春ということで。







「飾ー! 旦那迎えに来てるぞー!」
「おけまる〜! ごめん彼ぴ中入って待ってて〜!」

A組、H組双方の寮でのクリスマスパーティーが終わり、後片付けに入ってしばらくした頃、轟が寮まできららを迎えに来てくれた。寮が始まってからというものの、轟がきららの世話のために寮に訪れ続けていたため、もうすっかりH組では夫婦、通い婚扱いだった。実際は迎えに来てもらってそのままきららが轟の部屋で過ごす方が多いのだが。なにせアトリエである。まぁそんなものは些細な違いであれど、認識としてはそんな感じであった。
粗方終わったものの、まだ片付けの最中である。きららと発目が発明したお掃除ロボットが手伝ってくれているものの、まだ終わっていなかった。


「フフフ、こんな時こそ私のドッ可愛いベイビーたちが真価を発揮するのです……! ここは私のベイビーたちに任せて、きららさんは行ってください」
「ええっ、まだ終わっとらんが?」
「発目の言うとおりだよ。クリスマスデートの後半、楽しんで来い」
「H組良いやつしかおらんな? あざまる〜〜! お言葉に甘えてよいちょまるしてくる〜!」
「してこいしてこい」

快く送り出してもらい、きららは足取り軽く轟の方へ向かった。
聞けば轟もクラスメイトたちから送りだしてもらったようで、揃って級友に感謝だなと笑った。てっきりそのまま轟の部屋に行くものと思えば、そうではなかったようで、轟はH組の寮の入り口からちょっと離れたところに行くと、きららが作ったサポートアイテムを装着した。


「どったの?」
「まぁ、見てろ」

不思議そうな顔で轟を見ていると、轟は勢いよく氷壁を作りだした。間髪入れず、キラキラ輝いたそれに今度は左の炎を渦のように纏わせる。ティンセルガーランドみたいだった。キラキラと乱反射するそれは……轟だけが作れるイルミネーションだった。


「ふぁあああ!! イルミネーションじゃん!? すごー! めっちゃいい!! キレー!!」
「……イルミネーション見たがってたからな。連れ出すわけにもいかねぇから……作るしかねぇと思って。喜んでくれたなら何よりだ」
「発想がスパダリ……!! 彼ぴありがとー! シンデレラ城にも負けないくらいほんとキレイ! あげみざわ〜!!」
「シンデレラ城?」
「夢の国あるシンデレラのお城だよ。夜になるとライトアップされるの。すごいきれいなんだぁ」
「そうか。じゃあ今度夢の国にも行かねぇとな」
「行くーー!」

H組の寮の窓からも見える轟のイルミネーションは、圧巻であった。以前、きららが轟の個性を氷と炎の夢の共演と称したように、それはとても美しかった。
これには発目も、きららが氷と炎にこだわっていた理由に頷けた。夢の個性。世界を輝かせる、キラキラしたもの。「幸せそうで何よりです!」と笑って残りの作業に戻るのだった。


 


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