『立て続けにいくぜぇ第五試合! 一回戦唯一の女同士の闘い!! ギャルの本領発揮!? 装備だってデコってなんぼ!! サポート科飾きらら!』
「バイブスアゲてくよー!」
バーサスあの角からなんかでんの!? ねぇでんの!? ヒーロー科芦戸三奈!!』
「サポート科だからって手加減しないからねー!」
「おけおけ! そーこなくっちゃ! ねね、きららが勝ったらさー! ちょっとお願い聞いてくんない?」
「お? いいよー! じゃあたしが勝ったらなんかデコってもらっていい? センス良くてちょー気にいっちゃった!」
「おけまる! んじゃそゆことでよろぴ〜!」

契約成立である。正直きららにとってお安い御用過ぎた。そんなん勝たなくたって全然やるし。むしろ野望に近づいて気分はアゲアゲである。
そして互いが構えたその時、性欲の権化の欲望丸出しの声が届いた。


「芦戸ーー!! 飾の服溶かせーーー!! くびれ以外も見せろおおお!!」
「峰田さいてー!! 飾、あたしそういうことはしないからそこは信頼してね!」
「お。そう? ヒーロー科にもすごい正直な奴いんのね。ちょっと安心したわ」
「いや峰田が特殊なだけだから……! ああもうっとにかくいくよ!」

きららはギャルというだけあって雄英の体操服をそのまま着るということはなかった。
クロップド丈の黒いシャツに上着を腰に巻き、くびれを惜しげもなく晒している。実にギャルらしい着こなしであった。

サポートアイテムをフル装備し、デコりにデコり、身体能力だアイテムの性能だを底上げした状態で芦戸を迎え撃つ。
芦戸の個性は溶かすという発言と見た感じからしても間違いなく酸であった。正直こんな強個性ならぶっぱすれば勝てんじゃねとしか思わない。でもそこはヒーロー科。ひどい怪我にならないように確実に濃度が抑えられていた。抑えられていたから、きららは勝てる。

デコ装備で底上げした身体能力のまま接近する。急に近づいてきたきららの腹に酸が当たりそうになり芦戸が慌てて止めた。本当に優しい。良いヒーローになると思う。
きららがその隙を利用して芦戸を即行デコる。まさに早業であった。


「え、なに……きゅうにちからがぁ……」
「めんご、あしみな」
『な、なんだぁ!? 芦戸がデコられてっぞ!? でも激ださ!!』
「飾の個性だ。サポート科にいるが、あいつはヒーロー科の入試も受けてた。合格したにもかかわらず辞退したサポート科の発明狂その2。芦戸の奴、油断したな」

ヒーロー科の入試に合格していたということに辺りは騒がしくなる。ヒーロー科の入試は甘くない。その狭き門を潜り抜け、それでも合格を蹴ってサポート科に入ったギャル。話題性としては抜群であった。

そして観客には当然見えた。芦戸の腕や背中に施されているデコが。けれどこれがなんというかぶさかわとも言えない動物のようななにかがデコられていた。
――飾きらら。個性、デコレーション。デコったものの性能を上げる。ダサくデコると性能が下がる。なんにでも有効な強個性。


「んじゃ、ドカンと一発打ち上げ花火ーー!!」
「ひゃああああっ!!?」
「芦戸さん場外! 二回戦進出は飾さん!」
「いぇあ!」

最後もサポートアイテムをぶっ放し、見事な花火のようなキラメキを放ちながら爆風で芦戸を場外に追いやった。
芦戸はデコられているせいでふにゃんと身体に力が入らない。きららが駆けより「めんごめんご。あしみな身体能力レベチだったから本気マジでデコったわ。これ外せば元にもどっからちょいまち〜」とぱっぱと外していく。


「あ〜! 悔しい! 飾、ヒーロー科受けてたとか知らないんだけど!? しかも合格したのになんでぇ!?」
「ん〜、きららはさー。野望あんのよね」
「野望」
「そ。きららがキラっとデコったあげみざわなサポートアイテムで世界をキラキラさせんの! でもそれはさ、ヒーローになって、自分が使うよりサポートアイテム会社に就職してバンバン作って、いろんなヒーローに使ってもらった方が実現できんだよね」
「あーうん、たしかに?」
「あたしがヒーロー科の入試受けたんは、ヒーローになるためじゃなくて、未来のヒーローにどんな奴らがいるのか見るため〜! 在学中はヒーロー科の生徒をターゲットにアイテム作るっぽいから気になったんだよねぇ」
「なるほど。で、合格したと」
「そそ。観察に邪魔だったのデコってたらなんか合格してた〜。きららはサポート科って決めてたから辞退したんだよねん」
「へー……なんか、すごいね飾」
「そ?」
「うんうん」

ちょうどデコパーツも外し終わったので2人で会場を後にする。

芦戸が「そういえばお願いってなに?」と聞くときららは待ってましたと言わんばかりに芦戸を壁際に追いつめる。ほぼ壁ドンであった。芦戸はちょっとなになにとドキドキした。顔がいい。


「とどしょの好きなものおせーて!! できればプロフ的な!!」
「へ……?」
「めたんこタイプなの!! 結婚したいくらい!!」
「ええ!? け、結婚……!!?」

芦戸のテンションが爆上がりした。恋バナは大好きである。しかもこのギャル結婚したいくらいといった。あまりにも本気の恋に芦戸はもうテンションマックスであった。


「いいよいいよ協力する! とどしょって轟であってるよね!?」
「そそ! 轟焦凍! あのめっかわなイケメン!」
「ええ、可愛いかなぁ……割とピリピリしてるからそういうイメージないけど……」
「いやあれはめっかわだね。もうビビッとどころかバシバシアンテナ感じてる!」
「おお、そうなんだ……んーでもなぁ……轟ってほんと人寄せ付けないからあんま知らないんだよね。ヤオモモとか席が隣だからなんか知ってるかも……? 聞いてみる!」
「ヤオモモ?」
「うちの推薦入学者! すごい頭良いんだ。轟とも騎馬戦で組んで――あ、ごめん」
「? なんで謝んの?」
「いや、他の女子の話とかいやかな〜って」
「え〜? そんなんキリなくない? いーよいーよ。恋は勝ち取るもんだから!」
「飾つよ」

恋はいつだって弱肉強食である。きららは轟という神イケメンに出会った時から競争率の高い恋であると理解している。もうどっからでもばっちこいであった。どんな荒波も乗り越えてみせようぞ。

芦戸はさっぱりした性格のきららと意気投合し、下の名前で呼ぶほどになった。「そういやデコってほしかったんだっけ? そんくらいいつでもやったげる〜! 世界をキラッとさせるのはきららの野望だしね!」とパチッとウィンクをした飾に芦戸はちょっときゅんとしてしまった。顔がいい。


「きらら、絶対モテてたっしょ?」
「にゃはは、それはどうかな〜」
「あ、この感じ絶対モテてたやつだ〜! このこの〜!」
「ちょっ、あははっ! あしみなくすぐった〜〜い!」
「このモテ女め〜〜!」
「にゃっはっはっはっ!」


 


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