あっという間の帰省だった。冬美の作る料理はどれも美味しかったし、エンデヴァーが用意してくれた振袖も素晴らしいものだった。
せっかくだからと、冬美も振袖を着て、轟とエンデヴァー、4人で参拝できたのはよかった。轟も着物を着ているし、エンデヴァーだけ洋装というのもなと、わざわざ着物に着替えてくれた。
行く前に一緒に写真を撮ったのだが、それがなんだか家族写真に見えた。いずれはそうなるのだろう。ここにいつかは冷も夏雄も――きっと彼女も――加わって、一緒に写真を撮る日が来るんだろうなときららは思うのだった。

そうして参拝が終わったら、パワーローダーの迎えが来るまでまったりして過ごした。義理の実家のようなものなのに、ものすごく寛がせてもらった。
家事ロボットたちの粗相は聞いていたため、そういったことがないように調整しようとしたのだが、「躾も飼い主の責任だろう」と怒髪天だったはずのエンデヴァーが制止したため、そのままになっている。
不思議に思っていると「なんだか愛着がわいちゃったみたい」と冬美がこっそり教えてくれた。現に番犬機能を搭載した犬型ロボットはエンデヴァーによく懐いているようで、エンデヴァーもまんざらでもない様子で不器用ながら可愛がっているため、まぁこれでいいのかと思う。結構愛情深いところがある人だ。たまにベクトルが振りきれるけれど。

帰る間際に冬美がお料理ロボットと一緒に打ってくれたそばを轟に持たせてくれ、きららもきららで一緒に手作りしたという可愛いクッキーの詰め合わせをもらった。何から何まで至れり尽くせりであった。
確実にお料理ロボットのスキルも上がっており、一緒に料理する人間のスキルによって学習アップデートが進むのだろうと確信した。冬美の手伝いになればいいと思って作った子たちだったが、その願い通りに育ってくれているらしかった。
それを嬉しく思いつつ、また連絡するねと言って轟と一緒に雄英に戻るのだった。







それから数日後のことであった。冬美から番犬ロボットが壊れてしまったと連絡が来たのだ。


「ごめんねきららちゃん、こんなすぐにこういうことで呼んじゃって……」
「んーん! 気にしないでよふゆみん。最初は配線しくったんかなって滝汗だったけど、この子はちゃんとお仕事真っ当しようとしてくれたんだねぇ。見てみたけど、これなら直るから安心して」
「よ、よっかったぁ……!! もうこの子たちのこと家族って思っちゃってね、本当……よかったぁ」
「ペットとしても大活躍してくれてるようで何より〜!」

よくよく聞くと、ミスター・スマイリーとかいう落書き犯が轟家の塀に落書きをしており、番犬ロボットはそれを察知し果敢に立ち向かったそうだ。けれど、ミスター・スマイリーの強制的に爆笑させる個性で画像認識を通し、番犬ロボットの回路がやられてしまった。
壊れた番犬ロボットと、落書きを見つけたエンデヴァーはそれはものすごい怒りようで、現在エンデヴァー事務所総員で落書き犯の確保に動いているとのことだった。


「お父さん、この子のこと特にかわいがってたから、直るってわかったら安心すると思う」
「おとーさま、犬派っぽいもんね。なっつんも犬派そう」
「そうかも。夏もどっちかというとワンちゃんたちの方かまってるなぁ」
「ふゆみんはその子でしょー? めっちゃ懐いてるよね」
『ナオ』
「えへへ、お見送りもお出迎えもしてくれるんだよね。もう可愛くって……!」
「第一印象からふゆみんって決めてました感ある。いいご主人様に会えてよかったねぇ」
『ナオナオ』

うまくやっていけてるようで何よりである。この際だからと番犬ロボットに色々機能を追加しておくことにした。ただの落書き犯だったから被害は塀だけで済んだが、これが強盗とかなら冬美と夏雄が危なかった。それらを防ぐために番犬機能を搭載させたのだから、もっと強い番犬になってもらおう。そう、轟家らしく、ファイアー&アイスって感じのキラキラしたやつで。








落書き犯、ミスター・スマイリーを追っていたエンデヴァー事務所であったが、途中強盗犯がショッピングモールに押し寄せ、店員を人質に取られてしまいピンチを迎える。
その状況を打破したのはなんとミスター・スマイリーであった。己の作品を傷つけられ、その報いを受けさせんと個性を行使したのだ。その強力な個性で迅速に事件解決へと導いたミスター・スマイリーは、緑谷の心からの訴えもあり、自ら罪を償うことを選んだのだった。
テレビ中継を通してミスター・スマイリーの個性が発動したのだが、それもあって彼の作品を掲載したホームページを通し、彼の作品は多くの人々に認められたという。孤高の芸術家、ミスター・スマイリーの悲願は思わぬ形で実現するのであった。

「おかえり、お父さん」
「おとーさまおかえりなさ〜い!」
『ワンッ! ワンワンッ!』
「!! おまえ……直ったのか」
「お父さんったら、連絡入れたのに既読つかないんだもん。よっぽど必死だったのね」

元気にエンデヴァーを出迎え、エンデヴァーの周りを走り回る番犬ロボットの頭を撫でた。きららと冬美は顔を見合わせ、どちらともなく笑った。本当に不器用な人だ。
それでも動物にはその愛情が分かるのだろう。番犬ロボットはそれはそれは嬉しそうに『ワンッ!』と鳴いたのだった。



 


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