体育祭が終わって二日間休校となったが、きららは相変わらずの発明バカその2であった。
むしろ体育祭前より熱が入っている。理想の個性を持つ運命の神イケメンとも出会えたし、ヒーロー科の連中は揃って激アツだったし、しんしんも最高にぶっ飛んでた。使ってほしいと思うアイテムが次々と頭の中で浮かぶ。
きららは休みの間にあげみざわなデコの図案を考えたり、設計図を細部まで書き出していた。そして学校が始まると工房にこもりきりになり、発明に没頭するのであった。


「お? 電話だ。……あしみなじゃん? もしもーしどったん?」
『あ、きらら? あのね、休み明けの轟が大分雰囲気変わっててさー! 聞いたら色々教えてくれてね。せっかくだから一緒にお昼食べながら話さない? 恋バナしたーい!』
「マ!? 行く行くすぐ行く秒で行く! 食堂でいいよね? 向こうで落ちあおー!」
『りょうかーい!』

電話を切るとちょっぱやで食堂に向かう。
いやだって、とどしょのプロフとかマジ渇望。てかあしみなこんな早く情報くれるとかぐう聖。あしみな一生推すわ。……ギャルはなにかと盛りがちである。







「そば好きなん? しかも冷たいやつって限定的な感じ?」
「みたい。温かいのも食べれないわけじゃないみたいだけど、冷たいのが好きなんだって。結構こだわりもありそうな感じだった!」
「ツウってやつぅ? え、きららそば職人に弟子入りするべき?」
「あははっ! 別にそば打てる人が好みのタイプじゃないと思うよー! てかきららすごい本気じゃん」
「いやなんかもう色々タイプ過ぎた……で、他には? 他にはなんて……?」
「誕生日は1月11日。血液型はO型で身長は176cm。それから――」

マジでプロフだった。きららは一瞬宇宙猫になった気がした。結構何でも答えてくれている。むしろこれ、聞かれたことに対して特に深く考えずに聞かれるがまま答えた感じか? とどしょもしかして天然……かわたんでは??


「でさぁ、肝心の好みのタイプなんだけど」
「それ! それちょー聞きたい! ハイライトすぎる!」
「……期待してるとこ悪いんだけど、わかんないんだって」
「わかんない?」
「そういうの考えたことないっぽくて……よくわかんねェって言ってた」
「よくわかんねェって……それはそれできゃわ……」

じゃあとどしょ好きな人とかできたことないんだぁ、ときららは内心でガッツポーズをした。てかもしかしなくてもこの聞いてる感じとどしょ天然だわ。割とおっとりしてるな? ただでさえタイプなのに更にどんぴしゃで当てはまっていく。やっぱこれは運命だわ、きららはすっかりこの恋に燃えていた。

昼休みを芦戸と駄弁り過ごして午後の授業を終えると、きららはまた工房に籠り発明をちょっぱやで仕上げた。満足のいくそれにあげみざわの極みたるデコを施しているとパワーローダーにいい加減に帰りなさいと怒られた。出禁にされるとそれこそ困るので大人しくその日は帰ったが、朝になるとそれはもう学校の正門が開く前から登校し、正門が開くと工房に突っ走った。パワーローダーは若干引いていたが気にしない。







「とどしょー! とどしょいるー!?」
「え、飾!? なんでA組に!?」
「とどしょ探してんの! まだ来てない感じ?」
「とどしょって……轟?」
「そ! 轟焦凍!」
「それならもうすぐ来ると……あ、来たわ」
「! とどしょーー! 待ってたよーー!」
「お。飾か……俺になんか用か?」

噂をすればなんとやら。発明品のデコが完成するとそれを持ってA組に押しかけたきららは、そこにいた上鳴他数名に驚かれながらも轟を探していた。
ちょうど轟が登校してくると、ブンブンと大きく手を振り、駆け寄った。


「これ! とどしょに使ってほしくて!」
「サポートアイテム……か?」
「そう! とどしょの個性に合わせて仕上げてる! 右のグローブはより冷やしやすく、左のグローブは炎の温度を上げやすいように! 普通に個性使うより威力アゲアゲだと思う!」
「お、おう……おまえが作ったのか?」
「いえす! 今度きららのアイテム試してっていったっしょ? 絶対後悔させんし! ね、使ってみて!」
「……むしろいいのか? おまえの個性が使われてるんだろ? こんないいもん、俺が受け取っていいのか」
「もち! とどしょに使ってほしくて作ったんだから、使ってくんなきゃゴミになるだけだわ」

とどしょのための作品なんだから誰も使わないよという意味で言ったのだが、ゴミという単語に轟は少し考える素振りを見せると、さっそくグローブを装着して何度か手を握っては開いてを繰り返すと、うんと何かに納得したように口を開いた。


「俺には可愛すぎるとは思うが……それでもいい品だと思う。手によく馴染むし、温度調節がしやすい。ここで個性は使うわけにはいかねぇから、実戦での使い心地はまだわからねぇが……実戦で使うのが今から楽しみだ」
「と……とどしょ〜!」
「使ったらまた感想言う。わざわざありがとな、大事に使わせてもらう」
「まってる〜!」

優しいが過ぎる。神対応だった。
とどしょ……君、優しいな? てかフィンガーレスにして正解だった。とどしょ手も綺麗。つま先から頭のてっぺんまでイケメン。心もイケメンとかもう花丸蝶々なんだが??

きららはもうご機嫌るんるん丸で教室に戻った。

一連のやり取りを見ていた上鳴と峰田が「新入生一番人気の飾が陥落した!!」「この難関校で貴重なギャル枠が!!」「これだからイケメンは!!」と阿鼻叫喚だった。微妙に詰められた轟は何のことかわからず「どっか具合わりィのか?」と2人を心配しだし更に混沌へと導くのであった。


 


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