未来の負ける姿
軽い衝撃と共に落とされたのは無機質なベッドの上。またやられたのだと理解するまで時間はあまり必要なかった。
これで何連敗になるのだろう。ここ最近個人戦で勝てた試しがない。
これはもはや癖になってる気がする。負ける癖だなんてボーダーに所属してる以上、最も付けちゃいけない癖だろうに。
ベッドでぐだぐだしていても時間の無駄なのは十分理解している。それでもこの部屋を出て行きたくない。
あーいやだいやだ、何と言われるだろう。
ガチャリとドアが開いて入ってきた人物は私の頭を占めていた人物ではなかった。
「いつまでそこにいんだ、そんなにオレに負けたの悔しかったのかよ」
ニヤニヤしながら見下す影浦。
さっきまでの殺気はどこへやら。ついでに彼がお好み焼き屋の息子ってのも信じられない。
「おい、わけわかんねーバカな事考えてんじゃねェ」
「まぁ手伝ってる時のエプロンは似合ってるんだけどね、良いお父さんになるよ」
「やめろ気持ち悪りぃ」
影浦にイヤイヤ連れられ観覧室へ向かうとさっきより人が増えていた。
あの醜態をこんだけの人数に見られたのかと思うと、恥ずかしいを通り越して気分が悪い。
荒船が一早くこちらに気づいた。
「おーやっと出てきた」
わらわら寄ってくる奴らは男ばっか。相変わらず本当にむさ苦しい。
「真田さんマジで勝てなくなってるんスね!次オレとやりましょうよ」
「えー…もう今日は疲れたからまた今度」
「まじで?やりぃ!」
「よねやん先輩ずっる!オレもオレも!」
「はいはい、緑川もね」
槍バカとワンコは嬉々として離れていった。さっそく良いカモを見つけたと思ってんだろう。その通りだから何も言えない。
「真田、今日で9連敗だぞ」
「え、荒船数えてんの」
「たまたまな」
「気持ち悪ぅ」と穂刈と一緒に身を引く真似をする。
そうでもしないと荒船の真っ直ぐな視線に耐えられそうになかった。キャップから覗く切れ長の目に見つめられて、耐えられなくなるのはいつもの事。
「そんなに負け続けて大丈夫なのか?そろそろポイントヤバいんじゃ…」
心配そうな村上の言葉に周りも頷く。恐らくこのまま負け続けていればB級降格の可能性も出てくる。
「真田は元々カゲと同じくらいポイントあったんだからまだまだ余裕なんじゃないの?」
ゾエさんは助け舟はただ追い討ちだ。無言でポイントを見せると誰かが「うわっ」と遠慮なく声を漏らした。後で穂刈にはアイスを奢らせよう。
「こないだテルテルに負けたのが響いてるかな…」
「テルテルって…柿崎んとこのか」
「おめー照屋にも負けてんのかよ!新人に負けるなんて終わってんな」
相変わらず辛辣な影浦だけど、全くもってその通りだ。このままでは隊にも迷惑がかかってしまう。
「カゲは真田を一時的にでも除隊させたくないんだってさ」
「ゾノ!そうは言ってねーだろうが!」
「うちの隊長は素直じゃないから」
「てめーなぁ!」
言い合う2人を見て仲良いなあと和んでしまう。いや、和んでる場合ではない。
「ヤバくね、どうにかしねーとまじで」
「そうなんだよ穂刈くん、とりあえずアイス奢って?」
「なんでだよ!」
チラチラと荒船を盗み見る村上はちょっと不審者っぽい。当の本人はさっきから異様なほど静かにこっちを見ている。私は気にしないように、ただ笑った。
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