挑発気味な口元




軽い衝撃と共に落とされたのは無機質なベッドの上。またやられたのだと理解するまで時間を要したのは、認めたくなかったから。

約束したのは米屋と緑川だけだというのになぜか出水まで個人戦をやる事になった。解せぬ。

その結果3連敗。私はどんだけ負ければ気がすむんだ。緑川にまで負けたとなるとそろそろ影浦がキレそう。

5本勝負を3回連続やったせいでぐったりと体が重い。あとで夜ご飯奢ってもらおう。三人全員後輩だろうと関係ない。私の体力と気力とポイントを根こそぎ持って行ったのだからそれくらい可愛いモノだ。

いつもの様にベッドでゴロゴロ転がっているとバタンと勢いよく扉が開いた。入ってきたのは米屋一人。

「真田さん緑川にまで負けるなんてそーとーっすね」

体を起こし米屋とベッドに並んで座る。彼は緩んだ口元を隠そうともしない。

「負けるときは負けるでしょ」
「真田さんは認めたくないだけだろ」
「そりゃ3バカに3連敗は認めたくないよ」
「そーじゃねぇし」

米屋の表情が一瞬真顔になったせいか、私の心臓は嫌な音を立てた。彼は直ぐにいつものニヤけた面に戻るものの胸は軋んだままだ。

米屋がドアの方に視線を投げたため、つられて私も目を向ける。

ドアの横にはいつの間に入っていたのか、腕を組んで壁にもたれている荒船がいた。心なしか不機嫌そうに見える。視線が合ってしまい瞬時にそらした。

「じゃ、話終わったら一緒にメシ食いに行きましょ!オレら待ってるんで」

米屋はそう言い荒船と一言二言会話してから部屋を出てしまった。

残されたのは不機嫌そうな荒船と私。静かな空間に思わず肩に力が入る。
荒船は無言でさっきまで米屋が座っていたところに腰を下ろした。

「警戒心持てよ」
「持ってるつもりなんだけど毎度負けるんだよね」
「そっちじゃねーよ」

「はあ?」と首を傾げる。荒船は深いため息を吐いた。呆れられたのだろうか。

「まあいい、それよりさっきので12連敗だぞ」

私の顔を覗き込んだ彼の表情はさっきの不機嫌はどこへやら。分かりづらいが多少楽しんでいるように見える。私が連敗するのがそんなに面白いか。

「また数えてるし」
「そりゃ数えるだろ」

以前とは違う回答に戸惑う。前はたまたまだって言ってたくせに。この言い方だとわざわざ数えてるみたいだ。

含んだ言い方をする荒船はあまり好きじゃない。沈黙に耐えられなくなった私は立ち上がった。

「米屋たち待ってるしもう行くね」

足早に離れようとしたその時、左手首が掴まれた。視線が背中に突き刺さり振り返ることができない。

「そろそろ認めたらどうだ」

掴まれた手首が熱い。
もともとそこまで強く握られていたわけではなかったのか、簡単に彼の手を振り払うことが出来た。

「逃げんのか」
「安い挑発だね。その喧嘩買おっか?」
「じゃあ明日にでも個人戦やるか。連敗記録伸ばすの手伝ってやるよ」

予想してなかった言葉が耳に飛び込んできた。思わず振り返ると彼は何か企んだ様な表情でこっちを見上げている。不敵につり上がった口元が私の闘争心を掻き立てた。

「やってやろうじゃん」

私は小さく呟いた。

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