カラリコロリ。舌先で甘い星の欠片を器用に転がす。繋がれている左手にギュッと力を入れて、夕焼け空を仰いだ。
「ねえ、先生」
「なんですか?」
隣で私の手を引く先生は、私に優しく微笑む。私は先生とは目を合わすことなく、前でふざけて走っている銀時と小太郎と晋助を見つめながら口を開いた。
「昨日ね、お父さんしんじゃった」
「…ええ、聞いてますよ…」
「どろぼーに斬られちゃったんだって」
「…一太刀だったそうですから相手は相当手練れな様ですね…」
「ばかだよねー…そんなかなわない相手にいどまなきゃよかったのに」
先生が足を止めたので、自然と私の足も止まる。私と先生の長く伸びる影も同様に止まった。
「名前」
顔を上げると、先生の顔が夕日の光を受けてキラキラして見える。先生はクスリと笑うと私の頬に手を当てた。
「名前のお父様は貴女達、家族を護る為…大切な人達を護る為に敵わないと知りながらも立ち向かって行ったのです」
「うん、しってる」
「…だから、そんなに涙を流してはいけませんよ?お父様は名前にそんな顔をさせたかった筈、ありませんから」
そっか、私は泣いてたのかとようやく気がついた。先生がキラキラして見えたのは涙のせいだったのか。
先生に涙を拭われ、されるがままになっていると。
「せんせー!!名前ー!早く来いよー!」
「さあ、行きましょうか」
「うん」
先生はまた私の手を引いて歩き出す。
口の中にあった金平糖はいつしか溶けて消えていた。
▽▲▽
「名前ー!」
ページを捲る手を止めて顔を上げる。向こうから銀色の髪をふわふわと靡かせながら銀時が走ってくるのが見えた。
隣で一緒に本を読んでいた小太郎も気づいたらしく、「む、銀時か」と顔をしかめている。
「名前、いつものくれー!ハラへった…あまいもんがたりねー…」
あっと言う間に私の腰に抱きついてきた銀時。私は懐から黒地の巾着を取りだした。中から顔を出したのは私の大好物である金平糖。はい、と数粒を取りだし銀時とついでに小太郎にも渡す。
「いいのか?オレまで…」
「みんなで食べたほうがおいしいから」
「食べおわっちった…」
「はいはい、もうひとつどーぞ」
「さすが名前!神さま仏さまなんかよりこれからは名前さまあがめるわ」
「名前、いいかげん銀時をあまやかすな!」
「はいはい、いーの、私のこんぺいとうなんだし」
「それもそうだが…」
いいよどむ小太郎。しあわせそうな銀時。そして。
「ほら、晋助、いるんでしょ?ひとつあげるよー」
「っ?!」
一声かければ襖に写る影がピクリと動いた。
「晋助ー」
ようやく観念したのか、しぶしぶ襖の影から出てきた。
「いたのか高杉…」
「ストーカーなんですかぁ?このムッツリめー」
「てめぇっ!!!」
私の腰にいまだに抱きついている銀時に、晋助は殴りかかろうとしたが、私がそれを止める。
「はい、こんぺいとう」
「いらねぇー…」
晋助はそっぽを向いてしまったけれど耳まで赤くなっているのを確認すると、私は無理矢理金平糖を晋助の手の平に乗せた。
「いるんでしょ?」
「…さんきゅ」
晋助の手のひらに乗せられた金平糖は太陽の光を浴びて、キラキラと瞬く星みたい。
「晋ちゃん顔まっかですよー?え、なに、てれてんのー?ぷぷぷ!」
「るせぇ!だまってろ!クソ天パ!」
また銀時の晋助を煽るような言葉を聞きながら、カラリコロリと金平糖を転がす。
あったかいなぁ…ぽかぽかとした日差しにくるまれて私たちはいつしか輪になるようにして寝てしまっていた。
出てこなかった設定
モデルは吉田稔麿。1月24日生まれ。足軽出身。実家は弓矢専門店。