月裏の兎


※一人称が僕なので注意、二期からスタート


大きな爆発音。徐々に傾く足元。燃え上がる炎。人々の怒声、悲鳴、叫び声。誰かを求める声。救いを求める声。

ドンッ――――

僕は誰かに、突き飛ばされたかと思うと、訳も分からず、ただひたすら落ちた。そして。

ドボンッ―――

冷たいと思う間もなく、水に落ちた。ブクブクと空気だけが浮上し、僕の身体だけは、ドンドン沈んでいく。

苦しくなって、もがけばもがくほど深みに落ちていく。水面に向かってひたすら手を伸ばす。

誰か………

そんな想いも儚く、僕から水面は遠ざかる一方。

もうダメだ…ここで死ぬのか………

そう思った時、閉じかけた目の端に誰かの手が僕に向かって伸びてきた。

あれは誰だろう…父さん?母さん?

そこでフッと意識は途絶えた。

▽▲▽


ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ―――

喧しく鳴り響く目覚まし時計に布団から手を伸ばし、ガチャとボタンを押す。
もぞもぞと布団に手を引っ込めてぼーっと天井を眺めた。

何だか変な夢を見た気がする。とりあえず苦しかったのだけは覚えてる。が、鮮明には思い出せない。

ま、たかが夢だし、気にすることないか。そう思い直し、ベッドから這い出た。

欠伸を一つ。ったく早起きは三文の得って言ったの誰だよ。三文の損の間違いじゃないのか?

欠伸をしつつ渋々着替え始める。視線を動かし時計の針を見れば丁度9時を指していた。

「遅刻じゃん」

着替える手を少しだけ早めた。

僕が通うのは浪花中学校。その名の通り、大阪にあるごく普通の公立中学。

別に厳しい規則があるわけでもなく、穏やか健やかがモットーらしい。僕とすればサッカー部があるってだけで文句はない。あと私服なのも利点だ。

全て支度を終えた僕は誰もいないアパートを出た。もちろん鍵をかけるのも忘れずに。

▽▲▽


学校に着いてからというもの、窓際の席でぼーっと雲を眺めていた。
暇だ、暇すぎる。速く放課後にならないのか。

最近、エイリア学園と名乗る、頭の可笑しな奴らが色んな学校にサッカーを挑んでいるらしい。
挑んでいるというより、ボコボコにしているの方が正しいか。そして試合に学校側が負けると校舎を破壊される。

なんて無茶苦茶なんだ、とその映像をニュースで見て呟いたのが記憶に新しい。

あれは酷い。学校関係者や生徒にだけでなく、近隣の住民にも被害が及んでいるらしい。

先日には京都の漫遊寺中学が標的にされていた。
漫遊寺中はサッカーの強豪校として有名だが、サッカーを修行の一環としていてFFには毎年出場していない。

言わば隠れた強豪校といったところか。そんな所を狙うとは、宇宙人も良い目をしているなと感心する。

そんな宇宙人に唯一、対抗しているのはFFで優勝した雷門イレブン。

といっても一番最初の試合で怪我人続出。
そのため他校の奴らも混ざっているようだが。
まあ頑張ってくれよ、と心の中で一応エールは送っているつもりだ。同じサッカープレーヤーとして。

ちなみに僕らのサッカー部はFFに出場したが、地区予選の準決勝で敗退。僕はその時、足首を痛めていて出場していなかったが先輩達の悔し涙は忘れられない。

▽▲▽


数日後。音楽を聞きながら土手で走り込みをしていると、何やら騒がしい声が。イヤホンしてんのに聞こえるってどれだけ騒がしいんだか。

イヤホンを外して耳を澄ます。何だか声の内容的にサッカーをしているらしい。ボールを蹴る音も聞こえる。

踵を返して声のするサッカーコートに向かった。

▽▲▽


試合していたのはまさかの雷門イレブンとあの大阪ギャルズ・CCCだった。大阪ギャルズは見た目からは意外に実力がある地元の女子サッカーチームだ。

僕は彼女達は好きだけど試合はしたくない。絶対に。あの御堂玲華のプリマドンナだけは食らいたくない。…いざとなったらジャンプで逃げるけど。

僕はその後一人離れたから観戦することにした。
どうやら雷門イレブンは大阪ギャルズの雰囲気に負けてか、嘗めてかかってたからか調子が出ていないみたいだ。

にしてもあのGKの円堂守、だっけ?存在感あるなあ…ドレッド頭にゴーグルにマントの鬼道有人も負けてないけど。

ちなみに鬼道有人とマネージャーの音無春奈とは少し面識がある。向こうが覚えていればの話だが。

あ、一哉もいる。彼とはアメリカで少し知り合った仲だ。だから呼び捨てなんだけど、今更名字呼びに直すのも変だからそのままにしている。

結局、雷門イレブンは調子を戻せぬまま浦部リカと御堂玲華のバタフライドリームで一点を奪われ前半終了。

うーん…あまり見応えないなあ…と期待を裏切られた気分になり、また走り込みを再開しようと立ち上がる。

「あなた、名字名前くんね。ちょっと良いかしら」

よく通った女性の声が背中にぶつかった。良いかしらっていうか否定の余地がないような気もするが。

肩越しに振り返るとそこには青がかった黒髪の女性が立っていた。言わずもがな、彼女は、雷門イレブンの監督、吉良瞳子監督だ。

「そうですが何か」
「あなたの実力が見たいの。後半戦から入ってもらえないかしら」
「はい?」

〜詳しい設定〜
日本舞踊のお家元だったため一定の年齢まで男装しているサッカー少女。両親は船で事故死。施設で鬼道たちと出会う。