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「ちょっと良い?」

気合いを入れ直している雷門イレブンに、吉良瞳子監督は声をかけた。案の定雷門イレブンはざっとこっちを見る。突き刺さる視線に息を呑み一歩前に出て、吉良瞳子監督の隣に並んだ。

「彼は名字名前くんよ。響さんの指令でイナズマキャラバンに参加することになったわ」

先ほど、吉良瞳子監督から説明を受けた。エイリア学園を倒すために仲間を集め、地上最強のサッカーチームを作っているらしい。

そんな地上最強になるチームに僕は必要ないんじゃないかと思ったが…吉良瞳子監督にはあっさり否定された。

「まず、彼の実力が見たいので、後半からは目金くんに代わって名字くんが入ります」

吉良瞳子監督はそれだけ言うと颯爽とその場を離れた。あの、微妙な空気に僕を取り残さないで貰えませんか?

「僕は名字名前。ってさっき紹介してもらったけどさ…いきなりだけどよろしく」
「あぁ!よろしくな!名字!俺は円堂守、雷門イレブンのキャプテンだ!」
「うん、よろしく」

差し出された右手に右手を重ね握手した。

うーん…何だか第一印象は…“太陽”みたいだなと思う。明るい笑顔にキラキラした目。まさに太陽に相応しい彼。

「…名前、な、のか…?」

左手から聞こえた震えた声。振り向き未だ目を見開いている彼に言った。

「久しぶり、一哉」

次の瞬間僕は一哉に勢いよく抱きつかれた。いや、タックルに近い。

「良かった!生きてたんだな!心配かけさせやがって!」

首を締める一哉の腕に苦しまぎれと照れ隠しにもがけば、さらに強く抱き締められた。視界の片隅に写った雷門イレブンはぽかんと口を開けて呆然としている。

「こらぁー!!ウチのダーリンに何してんねん!あんたなぁ!ウチのダーリンに抱きつかん、と、い…て…」

引き剥がしてくれた女の子に礼を言おうとしたら彼女は目が合うと語尾が小さくなってしまった。どうかしたんだろうか。

「あんたもカッコええなぁ!ほら、二人並んでみ?目の保養やわぁ…ってウチ、何浮気しかけてんねん!ウチはダーリンだけやのにぃ!」

なんだこの子。

▽▲▽


何だかんだで試合参加。ポジションはFWの目金欠流と交代しためFWだ。

「楽しもうね!」

ふわりと微笑みかけてきたのは隣にいた吹雪。

「もちろん」

ピーーッ――

いよいよ後半戦開始。探る様な視線がいくつも、中には強烈な視線が二つ。ちなみに一つはベンチから。

雷門からのキックオフ。

一先ず貰ったボールを吹雪に返した。少し驚いた様子の吹雪だったが、気を取り直すと即座にかけ上がって行く。

「いくぜっ!エターナルブリザード!はぁぁああっ!!」

相手コートに氷の柱が突き刺さる。開始そうそうにあっさりと同点ゴールをあげた雷門イレブン。こうでなくちゃな。

▽▲▽


必殺技が繰り広げられる最中、ピンクのツインテールの女の子にボールが回ると、僕の隣を通り過ぎた。

「名字!!!」

はいはい、わかってますってキャプテン。僕はバクテンをしてツインテールの女の子に立ちふさがる。

“次は足でボールを挟んでバクテンで逃げる”

必殺技の月詠を発動させ、相手の行動を読み取る。バクテンの体制に入った彼女と同時に地面を踏み切る。

ガッ―――

僕は彼女がバクテンに入った瞬間、足に挟まれたボールを空中から蹴り、奪い取った。

「何やてっ!?」

ドリブルでかけ上がると目の前に立ちふさがるのは御堂玲華。

「道子!後は任しとき!」
「ごめんね、あの技だけは受けたくないんだ」

そう呟いて、今度は強く地面を踏み切り、高く跳躍。地上から切り離された世界でほくそ笑んだ。

「た、高い!あんな高さまで…!!」
「何であんな高く飛べるんやっ!!」
「野生中を遥かに上回るジャンプ力だ…」

そして高めのバクテンを二つ。そうすればもう目の前に相手ゴール。キーパーの女の子と目が合い、一対一の勝負に胸が高鳴った。

ボールを思いっきり蹴り上げ、この試合中で一番高いんじゃないかって位の高さまで飛んだ。

「流星雨っ!」

空中からボールを渾身の一蹴りを入れると技の名のそのままの通りにボールがいくつにも別れ、流れ星の如く、相手ゴールに襲いかかる。

「名字!!ナイスシュート!」

振り返ると円堂くんが笑顔で手を大きく振っていた。

▽▲▽


結果、4対1で雷門イレブンの勝利。

「これで一之瀬先輩、結婚しなくてすむんすねぇ!」
「良かったでヤンス!」

嬉し涙を流す壁山と栗松。そして一哉を中心に笑顔で集まる雷門イレブン。

「結婚…?」

一人首を傾げていると土門が隣に来た。

「一之瀬の奴、この試合に負けたらあの浦部って奴と結婚する約束になってたんだよ」
「何でそんな流れに…」
「それもよっくわかんねぇんだ」

呆れ半分に土門と苦笑いをしていると、浦部が目を輝かせてやって来た。

「ダァリン!やっぱりダーリン最高やわぁ!あんな凄いサッカー出来るやなんて!もう一生離さへん!」
「げっ…」
「あ、名前!」

うわっ気づかれた。土門の後ろに隠れたというのに無理やり引きずり出されてしまう。

「こんなかっこいい姿魅せられてもうて…ウチ…あぁもう!どっち選べばええんやーっ!」

くるりと方向転換した浦部は僕の腕を掴み、キラキラした目で見上げられてしまった。

いや、選ばなくて結構です。直ぐ様一哉を選んで下さい。