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その日の夜。寝付けない僕はキャラバンの上に座り夜風に当たっていた。冷たい風が頬をなでる。

キャラバンの隣に設置されている女子専用のテントから人が出てきた。彼女と目が合うが直ぐ反らされてしまうまた目が合った時、相手の瞳には決意の色が見えた。

「…名前お兄ちゃん…なんですよね…?」

紡がれた言葉に僕は嬉しさと驚きが込み上げた。それらを精一杯抑えキャラバンから飛び降りてふわりと笑う。

「よく覚えてたね春奈」

▽▲▽


昔見せてくれた笑顔と重なって私は思わず彼に抱きついた。

「大きくなったな…」

安定した綺麗なハスキーな声も、夜空を思わせる群青色の髪も、いつも首に着けている黒のスカーフも、煌めく黄色い瞳も。

何も変わってない。全部私が好きな名前お兄ちゃんのまま。懐かしくて涙が溢れた。

「全く、相変わらず泣き虫だ。春奈は笑顔が一番似合うんだから、笑って?」

彼は私の涙を指で拭き取るとくしゃりと笑った。
初めて見た笑顔にドキンと胸が痛む。

名前お兄ちゃんのために、笑おうとした。
けどやっぱり泣き笑いになっちゃう。

私は頭を撫でてくれるその手に思わず体を委ねた。

▽▲▽


春奈をテントに戻らせ一段落。

「いるんだろ?鬼道…いや、有人」

するとキャラバンの影から有人が姿を現した。

「やはり見抜かれていたか」
「まあね」

僕と有人の間を一陣の風が吹き抜けた。

「少し歩こうか」

▽▲▽


外灯に照らされた道を静かに歩く。俺もあいつも黙ったままだ。少し前を歩くあいつを見る。

低めの声も、先ほど春奈に見せた優しさも、ジャンプが得意なところも…昔から変わりはない。
そう、幼い頃施設で知り合った頃と。しかし、ただ一つ大きく変わったところがあった。

それは―――

「今日は月も星も、綺麗に見えるな」
「あ、あぁ…風が出てるから雲を飛ばしてくれているんだろう」

名前は振り返ってふわりと笑う。俺は思わず眉をひそめた。

「よく笑うようになったな。」
「ん?そうか?」
「…その笑顔、俺にはただの仮面にしか見えないがな」

そう言うと#name3#は笑みを浮かべたまま固まった。

「お前の昔はそんな笑うやつじゃなかった。笑う時は団子を食べている時か、サッカーをしている時かの、どちらかに限られていた。それ以外は無表情それがお前だったはず。…何かあったのか?」

いつの間にか互いに足を止めていて、また風が強く吹いた。

「特に何も…」
「嘘だな。笑顔の仮面で隠しているつもりだろうが…俺には通用しないぞ。ま、嘘の見抜き方なんかわざわざ説明しないが」
「えー教えてくれよ」
「教えてその癖を直されたら困る」
「有人、お前、意地が悪くなったな」
「ふん、なんとでも言え」

すると名前は俺に近づき、突然ゴーグルを覗いてきた。突然のことで反射的に身を引きそうになる。

「っなん!!」
「そのゴーグル、視野を狭める構造だろ。大方ボールを見切る日常から訓練ってとこだな」
「っ!!!」

たった半日、いや特訓中は別々だったからもっと少ないか…そんな少ない時間を、共にしただけでこうも言い当てられてしまうとは。

「さ、もう遅いし、寝るか。まだ言いたい事は?」

戻りながら肩越しに振り返る名前はニヤリと確信犯の顔。

してやられたな…と俺は苦笑した。まだ時間はあるんだ。焦らず少しずつ聞き出すとしよう。

▽▲▽


「名字、起きろ!」
「名字先ぱーい!起きて欲しいでヤンス!」
「名前、起きろって!」

「「名前っ!」」
「「名字っ!」」
「「名字先輩っ!」」

突然叫ばれてゆっくりと瞼を開けた。すると真っ先に飛び込んで来たのは爽やかイケメン。なんかハラタツ。

「一哉…?」
「やっと起きた!」

瞬きを繰り返しまだ寝ぼけている頭をフル回転させる。
とりあえず朝は弱いんだ。静かに起こしてくれ。

「ほら、名前まだ眠いんだったら顔を洗って来いよ。俺も付き合うからさ」

僕の腕を引き上げたのは風丸。やっぱり彼は仏様だ。

ちなみに寝ぼけていたので定かではないが、キャラバンを出る時に見えたのは有人の呆れ顔だった。

▽▲▽


「朝、弱いのか?」

顔を洗ってようやく目が覚めた僕に風丸が話しかけてきた。

「あぁ、どうにも朝は苦手なんだ」
「ははっ」
「笑うなよ…」

キャラバンに戻るとともう皆準備万端。

「よぉーし!特訓だ!」
「「おぉっ!」」

円堂の掛け声の元、今日も特訓が始まった。

▽▲▽



僕は額の汗を拭う。LvMAXはやはりMAXなだけあって、なかなかクリアは難しかった。

途中で槍が飛んできたり、足場が滑る様になっていたり…様々な仕掛けが僕を襲ってきた。が、たった今ようやくクリアできたというわけだ。
僕は満足感と達成感を胸に、タオルとドリンクを持って部屋を出た。

すると隣の部屋のドアに群がる雷門イレブンの姿が。確かその部屋は吹雪が特訓中なはず。無視するわけにもいかず近寄る。

「名前お兄ちゃんっ!」
「名字!」
「春奈、それに円堂も…皆集まってどうしたんだ?自分たちの特訓は良いのか?」

僕が汗を拭きながら、そう言うと円堂は「そうだなっ!よし!皆、特訓に戻るぞ!」とドアに張り付くメンバーに声をかけた。