俺は名前の飴色の猫っ毛を見たり触ったりするのが好きだ。俺の天パとは違って、綿飴みてーで柔らけーしふわふわしていて見ていても触っていても癒される。何よりも、普段無表情な名前の時折見せる笑顔が俺は一番好きだ。

「ねぇ、銀時」
「んぁ?んだよ」
「いつまで触ってんの?」

俺に髪をいじられ続けていた名前は少し振り返った。髪とお揃いな飴色の長いまつ毛に縁どられた、少し潤んだような瞳に自分の銀髪が写り込む。

「もうちょっと」
「さっきからそればっか。私、もう弟達の迎えに行かなきゃなんだけど」
「あー…もうそんな時間か」

俺はそんなら仕方ねーとしぶしぶ名前の髪から手を離した。
名前の言う弟達ってのは俺もよく知っている。何故ならよくこの松下村塾に遊びに来るからだ。だからそん時にめんどーみてやったりするうちに何だかんだ仲良くなった。俺のことを“銀ちゃん”と呼び始めたのはこいつ等発祥だ。
そして意外にも何だかんだ仲良くなったのは俺だけじゃなかったりする。

「「「ねえちゃんっ!!」」」

突然、聞こえてきた幼い三つの声に俺と名前は振り返る。するとそこには覚束無い足取りでこっちに駆け出してくる幼子三人の姿があった。名前は少しかがんでその三つの小さな体を抱きとめる。

「ねえちゃん!おかえりー!」
「おっそいよー!おむかえがなかったら、かってにおうちかえってたよー?」
「たよー!」
「ごめんごめん」

一人一人の頭を撫でてやる姿は正に“姉ちゃん”でいつもながらよく出来た姉だなーと舌を巻く。これで俺より二つ年下なんだもんなぁ…
名前はギュウギュウと押しくらまんじゅう状態になりながらもこの三人を連れて来たヤツ等に顔を向ける。

「ありがとね、二人共」
「いや、大した事ではないぞ。俺が勝手にしたことだしな」
「俺は行きたくて行ったんじゃねーよ、ヅラに無理やりだ」
「ヅラじゃない、桂だ」

高杉は明後日の方向を見ていたが、その頬は若干赤みを帯びていて照れ隠しなのが丸分かりだ。ヅラはともかく高杉までこのザマたぁ最初は驚いたが今じゃ慣れっこになっちまった。

「あ、ぎんちゃんもいっしょだったんだねー!」
「ぎんちゃーん!」
「ゴフッ!!」

三人の標的はいつの間にか俺になっていて鳩尾の辺りに思いっきし体当たりという名の頭突きをかまされる。

「俺はおまけかコノヤロー」
「えー?だってぎんちゃんってねえちゃんの“きんぎょのふん”なんだろ?」

そう言ってニヤリと笑ったこいつは藤(ふじ)。吉田家長男で生意気真っ盛りな四歳。

「誰だァァァ!!藤にこんな言葉教えたの!?テメッ、高杉だろォォ!!」
「ハッ!」
「ちょっとぎんちゃん、そんなにおこってたらハゲちゃうよ?あ、でもそしたらおなやみいっそうされるねっ!」

清々しいくらいの笑みを浮かべるこいつは菫(すみれ)。吉田家次女で時たま腹黒さを見せるませた三歳。

「やかましいわっ!!それじゃお悩みじゃなくて俺の毛根が一掃されるわっ!!!」
「ヅラじゃない、カツラだ。」
「テメェは黙ってろっ!!!」
「うるしゃい、ぎんちゃん。くされ天パのくせに…」

ボソリとぼやきつつ顔に影を作ったこいつは葵(あおい)。吉田家次男で舌っ足らずながらも毒舌を披露する末恐ろしい二歳。

「ちょ、葵?どこでそんな言葉教わった…ってやっぱテメェかァァ!」
「ハッ!黙れよ腐れ天パ」
「高杉ィィィ!!!」

俺は三人から抜け出して高杉を追いかける。後ろでは柔らかく微笑んだ名前と満面に笑みを浮かべる三人。今日は散々だったが名前の笑顔が見れただけでも良しとすっか。

「しんすけぇぇ!にげろー!」
「ろー!」
「ぎんちゃんなんか“ちまつり”にしちゃえー!」
「テメェら!後で覚えとけよォォォ!!」