2


結局バスケ部は諦めた5人(要と春)。
柔道部を回ってみたが、祐希がお試し試合にて、数秒で勝負をつけてしまったため却下。弓道部は名前が一発でど真ん中を射ってしまったため却下。

水泳部は「老後の健康を考えると…」と祐希が言い出したため却下。
陸上部は祐希と名前が「「つかれる!」」と即答したため却下。

要が新体操部の練習場を通りかかると立ち止まった。

「お前、新体操部は?」
「え、オレ?」

祐希が怪訝な顔つきで要を見るが、要は首を横に振った。

「お前なわけないだろ。名前だよ、名前」
「え、ボク?」
「お前以外、誰がいんだよ」
「春」

要の言葉に即答した。双子は腕を組ながらあー…と納得していた。

「まあ、お前もさ。女らしいことすれば、勘違いも少しは減るんじゃねーの?」
「あれで?」

名前が指差すのは、練習場の隣の新体操部の部室の扉。そこには女子生徒が顔だけ覗かせ、頬を染めながら一心に名前に熱い視線を向けていた。これには要も黙らざるをえなかった。

▽▲▽



「あーくそ…なんでこんなに決まらねんだ…」

要が机につっぷしながら唸った。それを春が心配そうに机の横にしゃがみ、眺めていた。

「だからね、決まんなくていいんだって」
「右に同じ」

投げやりな祐希と名前の言葉に、要がぐわっと顔をあげ、ものすごい形相で机を叩いた。

「いーや、ダメだ!お前らはもっと新しい世界を見るべきなんだよ!」
「こっちはムリヤリまぶた、こじ開けられてる気持ちでいっぱいです」
「うん、お腹いっぱいです」

ねーと二人で首を傾けているのを見ながら、要はイライラが募っていった。

▽▲▽


休憩を挟み、先生からの助言もいただき再び廊下を歩き始める御一行。

「あ、ここ料理部ですよ!」

家庭科室の前で春が立ち止まった。春の隣を歩いていた、悠太と名前も自然と立ち止まる。

「どうします?見学…」
「パス」

悠太は春の言葉をさえぎり、あっさりと却下すると、左手で春、右手で名前の手を引き、また歩き始めた。

「ゆっ悠太くん?」

即却下されたのが驚いたのか、春が戸惑いがちにたずねた。名前はというと、部活巡りに飽きてきたのか、一つあくびをもらした。悠太は歩みを止めずにわけを話しだした。

「あっ!じゃあ、名前ちゃんは…」

散々な過去を聞き、せめてと春は切り出す。

「あー…名前はダメ。新体操部の二の舞になるからね」

首を振って否定する悠太に、春は苦笑いを返した。

「名前ちゃん、学校一モテますからねー…」
「女子にだけどもね」
「ねえ、春。お菓子ない?」

二人の会話が聞こえたのか定かではないが、名前が急に口を開いた。今にも寝そうな瞳をしており、いつの間にか悠太の首に抱きつき、歩くことを諦めたのか引きずられていた。

「…あ、そういえば!茶道部の和室に和菓子がありますよ!昨日、ボクが買い足しといたんです!」
「食べたい」

それだけ言うと悠太の肩に顔を埋めた。しかし名前の一言で、次の行き先が決まったようだ。

「祐希くんっ!次、茶道部へ行ってみませんか?」

そう言った春の顔はどこか嬉しそうだった。

▽▲▽


ここは茶道部が所有している茶室。静かな時が流れていた。スッと差し出された抹茶の入った器。それを要が丁寧に持ち上げ少し回してから口をつけた。隣に座っている、祐希と名前は、その様子を瞬きせずに凝視している。

「へー…要ほとんどカンペキじゃん」
「はっ!オレを誰だと思ってるんだ」

感心したように言った悠太に、要はさも当然とでも言うよう、懐紙で器の口をふきながら鼻で笑った。

「ほれ、次、祐希だぞ」

そう言って祐希に器をわたす。祐希は受け取った器を、目をこらしながら回しはじめた。その様子を隣で凝視しているのは名前。二人の顔は真剣そのもの。

「祐希くん。今日はもっと力をぬいてやってくれてかまわないんで…」

見かねた春は声をかけるが、真剣な声にはばまれる。

「しっ!話しかけないで!!」
「祐希、まばたきしたら終わりだよ」
「わかってる。名前もだからね」

いまだ真剣に器を見つめる二人に、不思議そうに春はたずねた。

「あ、あの…」
「「だって要がどこに口つけたかわかんなくなる…」」
「ちゃんとふいたっつの!!」

要は青筋をこめかみに浮かべながら叫んだ。

「はいはい、そんなにオレと間接キスはいやですか」

呆れつつそう言った要に四人は、ひそひそと話し出した。

「オレだってしたかねーけど!!」

自分の失言にきづいたのか叫び否定する要。
その後、うなだれて落ち込みモードに入ってしまった。春があわててフォローにまわる。
それを横目に、悠太はふと何かを思いついたのか、祐希と名前に向き直った。

「そうだ。要が入ってる生徒会は?」
「「ヤ」」

▽▲▽


「あーもー、やめだ、やめだ!本人達が一番やる気ないのに、決まるわけねーじゃん」
「おつかれさまです」

要がうんざりと言う横には、ねぎらう春と、ぼーっとしている悠太、ダラダラとうつ伏せになり、漫画を読んでいる祐希、そして悠太に背中をあずけ、ヘッドホンを装着している名前の姿があった。

「つかお前はのんびり、マンガ読める立場じゃねーだろ。お前もだよ、名前。何、のんきに音楽聞いてんだ」

要はイラつきつつ、祐希からマンガを奪い、名前の音楽プレーヤーからヘッドホンを抜いた。

「やめてください。マンガとアニメはオレの大好物なんですから」
「はいはい、そうかよ」

どうでもいいとでめ言う様に、要は生返事を返した。名前はヘッドホンを音楽プレーヤーを一人、もくもくとつなげ直し、また悠太によりかかった。次の瞬間、

「それを早く、言えーーっ!!」

要の怒声が4人の耳をつらぬいた。と、同時に器がわれる音も。

「ああっおちゃわんがっ!」
「あーあー。弁償だよ、要」
「るっせえ!!悠太!お前、かたわれなら知ってただろ!このオレにすっげー遠回りさせやがって!!」
「あ、言い忘れてたけど…ボク、無理です。毎日稽古ありますから」
「お前もかーっ!!言うのが遅すぎんだよっ!」

要の荒れようには、しばらく誰も手がつけられなかったんだとか。

▽▲▽



四人で要が祐希に勧めた漫研の現状を報告をすると、「はっ半帰宅部状態だあっ!?」と顔を青ざめさせた。

「うん」
「で、で、なんだよ。お前、そんな部に入部届だしたのかよ!」
「うん」
「バッカじゃねーの!?あーもー最悪だよ!意味ねーよ!」

投げやりに叫んだ要は、ガクリとしゃがみこんでしまった。すかさず春がフォローにまわり要の背中に手をおいた。

「でもホラ!祐希くんを部活に入れるっていう目標は、達成できたじゃないですか!」
「ああ、そうだな。9割方今までと状況変わんねーだろうけどな」

しゃがみこんだまま、要はテキトーに返す。もはやどうでもいいらしい。後ろでは名前が持っていたポッキーを三人で食していた。

「まあまあ。変化する瞬間なんて、きっとこの先いくらでもありますよ」