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「くそっ…なんでRed Policeなんかがこんな所に…」
「自分の胸に手を当ててよーく考えたら?ま、所詮能無しか」
「てめぇ!」
「おっと、動かないでくれない?首と胴が離れてもいいの?」
「くっ…」

ちなみに現状はターゲットに僕が馬乗りになって、ヤツの首に短剣を押し当てている。つまり、このバカが少しでも下手な動きをしたらバッサリってわけ。そう、いわゆるこれは。

「で?誰の差し金?」

拷問だ。

「はっ…そんなの言うか…!ぐっ ?」

僕は無表情のまま、ヤツの首を締める。そしてギリギリの所で手を離す。

「ゲホッゲホッ…」
「で?誰?」
「誰、が……言うか…かはっ!!」

その繰り返し。なんで拷問をやっているのかというと、コイツの発見が遅れたのは誰かが匿っていたからだと僕が独断で考えたから。

いつの間にか来ていた新一にさっきはびっくりしたけど、今は彼処からは死角の場所。
…新一、それにバ怪盗も…こんな汚いのは見なくていい。汚れ役は僕だけで十分。

そしてようやく首謀者の名が吐かれた。

「チッ…老いぼれの一人とか、面倒な事になりそう…」
「は、速く離しやがれ!」
「え?何言ってんの?アンタは、用無し、意味わかるよね?」

そう冷たく言ってやると、ターゲットは顔を一気に青ざめさせた。

「や、や、やめてくれ…」
「バイバイ…精々来世では、上手くやりなよ」

短剣を真横に引き裂いた。

▽▲▽


俺は今、謎の男に物陰に押し込められて名前の姿が見えない。

はねっかえそうとすりゃ、出来ないこともない。
でも、コイツが余りにも悲しそうな、苦しそうな顔をするもんだから素直に従わざるを得なかった。

こうして数分、待っているとビルとビルの隙間から名前が出てきた。

「副隊長、帰るよ」
「へぇへぇ、ったく人使い荒いのは人の事言えねぇだろ…」
「なんか文句あるわけ?」
「ないです、すみません」

ゲート開けるからちょっと待ってろよー、と言いながら隣にいた謎の男は名前の方に歩いて行った。

その時、名前と一瞬だけ目が合った。名前は驚くでもなく、悲しむでもなく、まるで物を見るかの様に俺を見て、それから目を反らした。

その行動に我慢ならなくなって、俺は物陰から飛び出していつかのように声を張り上げた。

「名前っ!!!!」
「は…?」

信じられないとでも言いたげな顔の名前。
俺は構うことなく続ける。

「何で俺らから記憶を消したんだよっ!?何でいなくなるんだよっ!?何でっ…」

いつの間に距離を詰められていたのか、名前のドアップに言葉が詰まる。
名前の肩越しにはさっきの謎の男が杖らしきものを回し、黒いなにかを生成していた。それがさっき言ってたゲートなのかもしれない。

突然、今度は霧吹きで水らしきものをかけられた。

「っな!!何すんだよ名前!」
「おかしい、催眠がかからないなんて…」

茫然としている隙に、俺は名前のマントの襟元を掴んで引き寄せた。

「催眠なんかかけられて溜まるか!勝手にいなくなったの、蘭にバレたらアイツ、泣くぞ!?」

卑怯だと知りながら、そう叫んだ。

▽▲▽


バ怪盗が作った、記憶を消す作用のある液体を吹き付けるも、新一は効かないみたいだ。

バカな…と呆然としてる暇もなく、突然新一にマントの襟元を掴まれた。

「勝手にいなくなったの、蘭にバレたらアイツ、泣くぞ!?」

そう叫ばれた瞬間、はっと目を見開いた。

蘭が…新一が効かなかったのだから、蘭だっていつ催眠が切れるか分からない…もし、切れてしまったら…

新一の言う通り蘭は僕のせいで涙を流すだろう。

そう考えたら、体が震えた。そんなの…僕が蘭を守ろうとしてやる事が蘭を傷つけしまうことになる…


「…僕が望んで蘭達と離れた訳じゃない…ただ、僕は」
「吸血鬼だろうと関係ねえ!名前は名前だろっ!?」
「そう簡単に言わないでくれる?僕は…自分なんかのせいで、誰かを傷付けるなんて真っ平ごめんなんだよ」

くるりとマントを翻し、新一に背を向ける。

「おい!名前!!」
「僕だって、ココにいたいんだよ…バカ」
「…え?」

ぼそりと漏れでた言葉は、新一に届いたか否かは分からない。でも、これが僕の本心なんだ。

今はこうするしかないんだって自分に言い聞かせていたのに…ココにいたいという気持ちが新一の叫びで溢れでそうになる。

僕は再び新一に半身だけ振り返ると、キラリと光る僕の大切な物を投げた。

「わ!わわっ!?」

新一は慌ててキャッチする。僕はそれを見届けて、今度はバ怪盗が作り上げたゲートに足を進める。

「別れの餞別代わりにあげる。大切にしてよね、せっかく僕があげたんだから」
「あ、名前!話はまだ…っ!」

少し振り返って、口パクで新一に一言言って、僕はゲートに足を踏み入れた。こんな時だからこそ、言えたのかもしれない。

「ありがとう」

吸血鬼だろうと関係ないって言われて、新一ならって思えたよ。それだけで心が救われた気がする。

背後で静かにゲートが閉じた。

▽▲▽


目の前で閉じられた黒い空間。辺りは静まり返ってさっきまで戦闘が行われていたのが嘘のようだ。

「くそっ!!!」

握りこぶしを強く握った。と、その時、手の内にある物に気が付く。

そういや、別れの餞別代わりにとか言って名前に貰ったんだっけ。開いてみると、そこには彼岸花の細かい細工が施された綺麗な記章だった。

名前らしいな、と思わず笑ってしまった。彼岸花の花言葉は、“また会う日を楽しみに”。

▽▲▽


「あれ、あげてよかったのかよ?」

長老達の報告のために、無駄に豪華できらびやかな、なっがい廊下をバ怪盗と歩いていたらそう問いかけてきた。

「いーの、僕が何しようと勝手でしょ」
「だってあれ、おめーの母さんの形見じゃ…」

心配そうにいうバ怪盗に、新一が重なり、思わず笑ってしまった。

「な、なんだよ、急に笑って!」
「新一だから、いーの」
「はぁ?意味わかんねぇ!」
「バ怪盗には関係ないから」
「うっ…ってゆーか!バ怪盗じゃなくて快斗だぁあ!」

悲壮感溢れる快斗の声に、僕は久しぶりに声を出して笑った。

新一、また会える日を楽しみにしてるよ。


〜詳しい設定〜
Red Policeとは…吸血鬼警察の少数精鋭部隊で、隊長と副隊長合わせて約20人くらい。部隊の特徴は作中にも出てきた赤いマント、高い戦闘能力、強い団結力。