「はーい、ありがとうございましたーあとは流れ解散でー」
 やっと飲み会が終わっても、ここから帰るまでが長いのだ。お疲れ様です、そう言って抜けようと思っても、やれ二軒目だ、やれカラオケだだのそういって結局決まるまでぐだぐだしているだけで帰らせてすらくれない。
 ああもうとっとと帰らせてくれ。
「ほらー、佳織ちゃんもカラオケ行こうよー」
「いやぁ帰らなきゃいけないんで……」
「あれー? 門限ないんじゃなかったっけ?」
 くそなんでお前が知ってるんだよ。門限はない、確かに。でももう今すぐにでも帰りたい。このままだとたぶん二軒目なりカラオケなりで寝る。
「いやぁちょっと明日予定が、」
「いいじゃんそのままでも!」
 ああもう本当にうっとおしい。これだから彼女ができないんだこいつは。先に終電があって抜けた子たちと一緒に抜けるべきだったなぁ……。

 そう思ってどうやって帰ろうか考えていれば、「カオ、帰ろう?」と、声がした。
 え? あれ? なんで、ここに、そんな言葉が聞こえたのか、携帯、と指さしてくる。ああGPSか……まったく私よりも私の携帯を使いこなしてくる。
「え、なに、かれ、し?」
「あー……うん……まぁ……」
 なんとなく気恥ずかしくて濁すと翼はちょっとムッとした顔をしながら自己紹介をした。
「あ、友達?……えっと、初めまして、俺、天羽翼です。佳織の彼氏です。」
 そういいながら私を抱き寄せて、お酒臭い、と顔をしかめる。仕方ないじゃないか! だって飲み会なんだもの!
「今日はもう帰りますので、心配しないでください。それじゃあ、」
「……お疲れ様でーす、お先に失礼しまーす」
 やった、これで帰れる。まあ次に会った時に根掘り葉掘りいろいろ聞かれるんだろうけどまあいいや。今日は帰って寝れるならそれで。ここから翼のうちまでは徒歩で帰れる。
「カオはもう飲むとお風呂入りたくなくなるけど、お風呂沸かしてからきたから帰ったらちゃんとシャワー浴びること!」
「えー……このまま寝たい、」
 翼は私の行動パターンなんてお見通しのようで、だぁめといっては手を引く。酔ってるとはいっても、すこし眠くなったり、気分が上がってくるだけなので足元は大丈夫である。
 翼曰く、私は酔うと少し甘えたになるらしいが、自分ではよくわからない。うぬぬ、と唸ってから名案とばかりに
「じゃあ洗ってあげるからお風呂入ろう」
 目をキラキラさせながらいう。どうしてそこまでしてお風呂に入らせたがるのか。
 もう明日起きてからでいいじゃないか、そう思って聞くと、
「だってカオからちがう匂いがするのはいやだ」
 そんなことを言って口をとがらせるものだから何となく嬉しくなって、じゃあ洗ってといってしまう。うぬ! とご機嫌に頷いた翼は、ほらもう着くよ、と優しく笑った。

君を迎えに

(ふわぁ、)
(明日はお休みだからいっぱい寝よう)