誰かにとられるのが嫌で、ただずっと独占していたいだけのこの気持ちが恋だなんて思えない。でもそれでも、少しでも独り占めしたくてこの言葉を吐いているなんて知ったら幻滅するだろうか? ……いや、きっと俺のこんな気持ちですら知っているのかもしれない。
 ただ隣の居心地がよかった。笑いかけてくれる笑顔が心の奥をぎゅっと掴んだように息苦しくした。
 でも他の誰かが隣にいるのが耐えられなかった。他の誰かに笑いかけているのは嫌だった。
 だから俺だけのものになってほしい、なんて、とんだ子供だろうか。
 この気持ちを表す言葉を知らなくて、『すき』だという言葉で代用する俺に、本当の『すき』を教えてほしい。『本当のすき』を理解したかった。『本当のすき』を向けたかった。

『本当のすき』

(それが正しく『すき』なのだと、彼が知ることはない)