高校の頃からそうだ。こいつはいつだってきらきらと笑顔を振りまいて、みんながこわいと言う笑顔に相対してもきらきらしい笑顔を崩さない。
 困ったように笑うことはあっても、実際に困っていてものほほんとしているようなこいつが怒ることなんて、ないと思っていた。
「一所懸命にやっている人に対して、失礼だよ」
 口調こそは怒っていないように見えるものの、語尾は強く、いつも微笑みを携えている顔は強張り、ぎゅっと握った拳が震えていた。
 ヒーローのようだと思ったのだ。ただの一言が、回りに影響していく様が。
 憧れがいつしか恋心に変わっていたなんて、つい最近まで気付かなかった。それでもただいとしいと思うその心に、やましいと、後ろめたいと思うことなど何一つなかった。
 再会するまでは。
 プロデューサーとアイドル。ただの、アイドルと学友だったら、まだマシだったのだろうか。
 でも、きらきらと笑顔を振りまくその姿に、叶わぬ恋をしたとため息をつくのはもうやめだ。いつだってきらきらと輝く笑顔に恥じないよう、俺だって笑顔でいなければならないのだ。

マシだったのか

 ──たとえ、この気持ちに蓋をしたとしても。子供に、輝く未来を見せるために、俺はアイドルになったのだから。