「つか、れた……」
 布団につっぷして眠る佳織は、非常に疲れ切った顔をしていた。帰ってきたそのままの格好で、横たわるでもなくつっぷして、まさしく落ちている。だらしなくひらく口からはヨダレが垂れる。
 口を閉じてやり、そっと抱き起せば少し身じろぎをしたもののすぐにまた落ちていった。きちんとベッドに横たえ、シャツの襟ぐりをくつろげる。
 このまま自分の欲望に忠実になってしまいたい気はするが、こんなに疲れている佳織に無理させたくない。せっかくなのに機嫌を損ねても残念だ。

 まだ八時前だというのにぐっすりとねむる佳織。誰よりも先に、誰よりも傍で、すべて一番で。そのために佳織の隣に滑り込む。
「あと四時間ちょっと、おやすみ」
 もぞもぞといつの間にか抱き寄せていた抱き枕を引き抜き、自分の腕の中へと閉じ込めた。額にそっとキスをおとし、起こさないように意識的に低くした声でささやく。
「産まれてきてくれて、オレのそばにいてくれて、ありがと」
 "愛してる"のコトバは起きているときに伝えるとして、ほんの少しのまどろみに身をゆだねた。

いちばんさいしょに、ありがとう

(佳織の誕生日まで、)(あと四時間)