「……ん、……!?」
 目が覚めると、軽い圧迫感と目の前の肌色。よくよく意識してみれば、自分も衣服をほとんど身に付けていない。シーツのさらさらとした感覚がキモチイイのは良いが、いったいなぜこんな格好で寝ているのだろうか。
 目の前の肌色から伸びる腕で、私を抱き込むように上下を陣取っている。寝ているためか、力が入っておらずずしりとした重みを感じた。ゆるゆると視線を上へと上げれば、キレイな黄緑色に目を奪われる。
(そうか、)
 やっと合点がいった。昨夜はエルくんと一緒だったのだ。キレイな黄緑色に縁取られた深い緑の瞳は、今は柔らかく閉じられている。このままずっと見ていたいような、すぐにでもその瞳を見たいような、そんな矛盾。
 そっと手をのばし、頬に触れるか触れないかの位置でふと手が止まった。この美しいものに触れてよいのか。少し躊躇うように指先が泳ぐ。すると、やわらかく手を包まれそのまま頬へとおろされた。
「さわらないの?」
 瞳を閉じたまま、低い声でささやかれる。
「いつから起きてたの?」
「佳織が起きる前から」
 私が混乱しているのをみて楽しんでいたに違いない。全く、趣味が悪い。軽くため息をつけば、くすくすと笑う吐息が頬をなぜた。
 頬に触れている指にかぶせている指を絡めたエルくんは、瞳を開ける。ゆっくりと大きくなる深い緑の光に、吸い込まれるように感じた。
 私を抱えていた腕が後頭部をそっと支えたのを頭の片隅で感じ取ると、絡められた指を引かれ、もともと近かった距離がほぼゼロ距離になる。
「キス、していい?」
「する前に聞くなんてめずらし」
 唇がふさがれる直前でそう囁くエルくんの瞳は熱っぽく潤んでいた。このまま肌が触れ合う心地よさに浸っていたい気もする。でも、エルくんの熱っぽく潤む深い緑が色っぽくて、つい視線を避けるように瞳を閉じた。
 かすかに笑う気配に瞳を開きそうになるが、そっと解放された指に気を取られている間に腰に手を回され、顔を上げろと催促される。解放された腕を首へと回し、髪に差し込むようにして顔を上げた。
 髪がふわふわとしていいなぁ、と意識を飛ばしていれば、唇がいつよりもゆっくりとおりてきて――エルくんの腕の中にぎゅっと抱き込まれる。啄むようなキスは、甘くて甘くて──、程よいぬくもりの肌の触れ合いは、いつのまにか熱を帯びていた。

甘い吐息にとける、

(甘い甘いキスと、)(甘くて苦いコトバをキミに)