やっと仕事が終わった。最近立て込んでいてひどく疲れていたけど、これで一段落、しばらくはゆっくりできそう。
 今日は何をたべようかな、そう思っていれば、会社から出てすぐ声をかけられた。
「姉さん、お疲れ様」
「え、梓……?」
 そこには弟の梓。どうしたのだろう、会社にまで迎えに来るなんて珍しい。
 きょとん、としていれば、変な顔、とニヤッと笑って(失礼な!)手を差し出した。
「なに?」
「荷物かしなよ、持ってあげる。疲れてるからたまには、ね」
 ありがと、といって荷物を渡せば、こんな重いもの持ってるから肩凝るんだよ、と顔をしかめていう。書類がデータ化してくれればもっと軽くなるんだよ、といっても、普段ちょっと出かける荷物も重いのであまり説得力はないといわれてまあそうだな、と納得してしまう。
 女の子の荷物は重くなるものなんだよ。
 はいはい、といいながらも梓はひょいと重さを感じさせずに荷物を持ち上げる。大きくなったなぁ、と感慨深げに思っていれば、梓はふと思い出したようにいう。
「あ、そういえば翼きてるから、夕飯の材料たくさん買って帰ろう」
「そうなの? 大きくなったんだろうなぁ……」
 梓はヒールを履いた私よりも小さいけど、そのうち大きくなるのだろう。あんなに小さかったのに、いつのまにか私と肩を並べるくらいにまでなった。
「姉さん、お疲れ様」
 そういってきれいに笑う梓は昔から変わらずわかりにくい優しさを示してくれる。

のんびり帰ろう

(それにしても迎えに来るとかどういうことだろう)
(梓―たまには迎えにいってこいよ!)
(はいはい)(今日は確か仕事の……うんまあお疲れ様ってことでいいか)