駆け寄ってくる軽い足音に心臓が跳ねる。ぱっと顔を上げれば笑顔があって、また心臓が勢いよく跳ねた。
「秋山先輩!」
 俺を呼ぶ彼女がかわいくて。そろそろ名前で呼んでほしい、とは思いつつも言えないでいる。ハルナとかシキとか、きっとすぐ言えるんだろうな。
 久しぶり、と笑った声はものすごく嬉しそうに聞こえて、我ながら恥ずかしくなった。でも、彼女のほっぺたも赤くなってるし、きっと傍から見たら顔を赤くしている同士だろう。それはそれで恥ずかしいけど。
「それじゃ、行こうか」
「はい!」
 恐る恐る出した手を握ってくれる、小さな手。これも、何回握っても緊張するし汗をかく。でもそれでも嬉しそうに笑ってくれる彼女がいるから、だから。
 次こそは指を絡めて……なんて思っても、いつもできないでいる。きっと、初めて手を繋いだ時くらいの決心がないとできないだろう。
 隣で笑う彼女のほっぺたが赤くなるのがかわいくて、俺のほっぺたが赤くなるのが恥ずかしくて。つい笑ってしまうけれど、それだって嬉しくて仕方がないんだ。