すきだよ、と初めて口に出した時、えっ、と純粋な驚きだけを乗せた顔でこちらをみた龍くんに、私は自分が失恋したのだと思った。その驚きは、友人として、人として好かれているだけで、女として好かれているわけではないということを示していると思って、「ごめん」とつぶやいてそのまま顔をふせる。
 次の瞬間には、なぜか龍くんが着ていた服が目と鼻の先にあって。
「ホントに!? すげーうれしい! 俺も、だいすき!」
 耳元でそう叫ぶかのように声を上げて、引き寄せられた。そのときはじめて、自分が抱きしめられていることに気が付いて、そうしてじわじわと先ほどの言葉を反芻して、龍くんがわたしと同じ意味で好きなのだと気づいて――気が付いたら、顔から火が出るかと思うほど顔が熱くなって、ぼたぼたと涙が止まらない。
 このままだと龍くんの洋服を濡らしちゃうし、鼻水も出そうで、すぐにでも離れなくちゃ、と思うのに、でも龍くんに見られたくなくて顔が上げられない。「わ!? 嫌だった!? ゴメン!!」と謝って、肩をつかんで離すのに、違うといいたいのに声なんかでなくて、おろおろと自分の服の袖で不器用に顔を拭ってくれるさまが優しくて、

だいすき

もう一度、「だいすき」だとこぼれた。