> ざぁと降りだした雨から逃げて、小さなバス停に雨宿りした。ちょうどいい、とばかりに時刻表を見るも、次に来るのは三十分後。まあ、別に特段急いだ用事ではない、と顔を見合わせて笑った。ふいと屋根から滴る雫と向こう側の雨のカーテンを眺めながらひと言、
「雨、止みませんね」
「そうだな」
言葉の意味をそのままにとらえてもらえたようで安心した。雨に遮られて視界は悪い。少しだけいつもよりも近付いている距離に、もう少しだけこのままでいたい、と口に出すのも悪くなかった。

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