事務所の下に着いたのと、プロデューサーが乗っているバスの到着がほぼ同時だった。いつもこの時間だな、と思って合わせた訳ではない、決して。バスから降りてきた彼女に挨拶をしようと顔を見てぎょっとした。
「あれ?おはようございます」
「ああおはよう…って顔!真っ青だぞ!?」
「?ああ、いやなんか少しだけ気持ち悪くて…バスに酔ったんですかね、すぐよくなりますよ」
 小声でたぶん、と付け足したのを聞き逃せなかった俺の目がすっと細くなったことを感じた。が、強がっているようには感じなかったので釘をさすにとどめておいた。
「無理だけはするなよ」
「はぁい」

back