こんな音だなんて思っても見なかった。そう、大人が乾杯に少しだけ重ねる、薄いグラスが奏でるような涼やかででも甘いような。決して、こんなドアをぶち破りそうな重くて低い音じゃなかったはずだ。──恋に落ちる音は、今すぐにでもドアを壊しそうだった。

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