昔は眠る度にひどく恐ろしい夢を見ていたのだと、あくのさんは言った。恐ろしいといいながら、全くなんでもないように笑っていてただただ不思議だったのだけれど、もう見ないからなと笑われればなるほど、と納得する。あくのさんに手招かれてその腕の中におさまると二人で笑った。

 腕の中で笑うプロデューサーを見て、ほうっと息をついた。そう、目が覚めれば腕の中で眠るのを確かに感じて、そんな状況下で恐ろしい夢なんか見ない。プロデューサーが消えていなくなるなんて。だから、悪夢はもう見ないんだ。

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