毎日毎日、ずーっと一人のことを考えてるなんてことはない。仕事のことを考えれば排除されるし、そもそもわたしの担当は一人ではないのだ。
仕事に関して言えば、どのアイドルも同じくらい思考を占めて、あれがいいこれがいい、もっとこうしたら魅力が発揮される、こうしたらファンが喜んでくれるといった想像であふれる。ずっとただ一人のことなんか考えていたら、他のアイドルに失礼だし、本人にも失礼だ。というよりも、そもそも自分が許せなくなる。
真剣に向き合わないなんて、仕事をしている意味がない。彼らを誰よりも輝かせるための仕事なのだ。そのアイドル一人のことを考えているときには、そのアイドルが、ユニットがトップに輝くためのことだけを考える。
だからきっとこれは恋ではないのだと、そう思っていた。学生の頃のような、他のすべてを放り出して没頭してしまうような、そんな激情なんて感じていないのだから。
──ふとした瞬間に感じる、柔らかな気持ち。すてきなものを見つけたときに思わず言いたくなるような、そんな気持ち。幸せを、すてきを共有したい。
こんな淡い気持ちなんて、恋じゃない。
「プロデューサーに、俺がいいと思ったものを見てほしかったんだ」
そう恥ずかしげもなく笑うあくのさんに、鼓動が高鳴ったとしても、頬が火照ったとしても、ひどくあたたかい気持ちが溢れたとしても、恋なんかじゃ、ないのだ。
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