ヒーローごっこの怪獣役を立派に果たしたあくのさんはだいぶ園児と打ち解けたようだった。それどころかたくさんの子が寄ってきて、ああ、この方法でよかったのだとホッと一安心したところで、ぎょっとした。
「ひでおくんは『ぷろでゅーさー』がすきなの?」
 一瞬だけきょとんとしたあくのさんは、あわてるでもおこるでも顔を怖くするでもなく、しゃがんでその子と目線を合わせ、頭をくしゃりとなでた。
「おう、だいすきだぞ」
「そっか! へへー、ぼくもひでおくんだいすきだよ! またかいじゅうやってね」
 それは自然な笑顔で、なんの不自然さもなく存在していて──ドッと心臓が大きく音を立てて鳴ったのはきっと気のせいだ──微笑ましい、と表面をとりつくろった。

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