自分の体重を右足に移して、ふと手帳から視線は動かさないままに(あくのさんはいつも片方に体重をかけた立ち方をしないなぁ)と思った。もちろん撮影ではしているけれど、日常の、普段の生活では常に両足に片寄ることなく立っていて。
 すごいですね、と世間話のように言えば、「どの方向にもすぐ駆け出せるようにな」となんでもないことのように言われて、職業病といわれるそれではなく、この人は『ヒーロー』であろうとしてるのだと、ぼんやりと思った。
 自分の理想にひたむきでいられる人はそう多くないのに、この人は。

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