幼稚園児、特に女の子にモテモテの木村くん。男の子にモテそうなのに、と思うのは全力で遊んでくれそうだからだろうか。
 相変わらず握野さんはうまく笑えずに泣かれている。その泣いた園児をあやすのが信玄さんだからか、握野さんから逃げるように信玄さんの後ろに隠れてチラチラと覗く様が、端から見ているととても面白い。面白いのは握野さんがちょっと泣きそうだからというのもあるけれど。
 ふとこちらに気付いた木村くんが、ぱっと走りよってきた。ちょこまかとその後を追いかける女の子たちに、まるでカルガモの親子のようだと微笑ましくなる。
「プロデューサーさん、オレモテモテで困っちゃう!」
 満面の笑みで、そんなことを宣言するのだからおかしくなってしまった。女の子たちは「えー、りゅーくんこまっちゃうのー?」と裾やズボンを引っ張っていて、これもまた可愛らしくて微笑ましい。
「そんなに嬉しそうな顔で言われても、困ってるように見えないよ」
 えー? と声だけは不満げだけど、耐えきれないかのようにけらけらと笑う木村くんはゴキゲンだ。人に好かれて悪いことはない。さすがVi.値が高いだけはある、と誇らしくなった。
「あたし、りゅーくんとけっこんする!」
「わたしがするの!」
 木村くんの足元で喧嘩するふたりの女の子の、この頃特有の相手の了解ナシでもりあがるケンカにまわりの子たちがおろおろし始める。あたしだって、と言いたいけど言えない、といったところだろうか。
 そして取り合われてる本人はというと、にこにこ、というよりはデレデレ、と全く困ってなさそうに困ったな〜と頭をかいていた。うーん、これはおんな泣かせだ。

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