「……あめ」
 事務所のドアを開けると、さっきまでは確かに晴れていたはずの空は暗く、大粒の雨がまるで打楽器のように音を奏でていた。
「朝雨降るって言ってたから折り畳み傘をちゃんと持って……ああ!?」
 ぱん、と開いた傘は、きれいに空模様を見せている。ジョンが引っ掻いて穴を開けたやつだ、と盛大に肩を落とした木村くんに、笑いながら鞄を漁った。
「水玉と花柄、どっちがいいですか?」
「水玉!」
 すかさず答えた木村くんに本当に?と笑いながらピンク色と水色の可愛らしい傘を渡し、自分は緑に青の花柄を開く。
「ああっ!?」
 もう一度笑ってから、さした傘を交換して歩き出した。

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