じとりとまとわりつく空気は、かつてよく感じたものだった。懐かしいと言い難いのは、どうしたってそれが良い記憶と結びついているわけではないから。
 嫌な記憶を呼び起こして汗がつうと垂れた次の瞬間、そよ風がふわりとその汗を引かせる。涼しいとは言えないほどの小さな風だけれど、それでも嫌な記憶を払拭するには十分なほどで、やっと僕は一つ笑みをこぼした。