ブーッというバイブ音に、軽くため息を吐いた。木兎さんのメール攻撃は木兎さんが引退してからひどく増えて、今では一日に何通も来るようになった。そんな話をたまたま会った木葉さんに話したら、俺のとこにも煩いくらいくるよ、とひどく顔を歪めていたのできっと手当たり次第とばかりに送りつけているのだろう。メールの文面はさみしいとそればかりを主張している。
 もう新しいチームの練習に加わっているはずなのに、まだ俺たちと――梟谷で練習がしたい、とだだをこねているように見えた。梟谷のチームメイトとしてはうれしい反面、はやく新しいチームにも慣れてほしいと思う。木兎さんの様な気質にムラのある人ははやく馴染まないと絶対に本調子出せないし。
 ちかちかと瞬くランプがメールが来ていることを主張しているのが鬱陶しく、通知だけでも消してしまおうと電源をつける。そこには予想に反して木兎さんの名前ではなく、ゆるくメールをし合う月島の名前があって、そう言えば小一時間前に送ったことを思い出した。
 そのままメールフォルダへと飛んで中身を読んで微笑んだ。この男は、どうでもいいことはひょいひょいとかわすわりにド直球だとかわせないらしい。
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   02/XX 16:32
   From 月島(烏野)
   Subject Re:
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   最近やけに多いと思ったらそうだった
   んですか。面倒なのではやく慣れてほ
   しいですね。

   えーと……そう、ですね、たぶん。写
   真、ありがとうございました。日向と
   、何故か山口が喜んでました。
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 自分のことに触れないのが面白い。たぶん、喜んでくれたのだろうけれど。
 春休み中の合宿について、まったく触れていないのはまだ知らないからか、まあ知っていてもまだ先生とコーチくらいかもしれない。合宿がまたあると聞いたら、どんな反応をするだろうか、そんなことを考えたら小さく笑えた。

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「教えてくれててもいいんじゃないですか」
 ぶそりと不機嫌そうにではなくふてくされたように言う月島に、思わず笑った。そう、俺からは結局言わなかった。顧問から言われた時にびっくりした、とうっそり独り言のように呟く月島は年相応でかわいらしい。
 梟谷グループだっていうから、いないはずないのに一言も言わないから来ないのかと思いました。そう言った月島は、「一回だけある夕方の休み、あけといてくださいね」視線を横に流したまま早口で告げた。ショートケーキ一つね、笑いながら言えば、苦虫を噛み潰したように眉間にシワがよる。わかりやすいよ、月島。

おしえてくれても、

 なになに、と寄ってくる日向やその他をなんでもないと一蹴する様子は先ほどのことなんかまるでなかったようで。小さく笑った。