「ひそか、ねこさんがね、」
 にこにこと話すのは、にゃんこの話。ひそひそとすみーは、にゃんことお話ができるらしいので、二人と何匹かはよく中庭で日なたぼっこをしたり遊んだり昼寝したりしている。仲が良いなあ、と微笑ましく見ていたのはいつの頃までだったか。
 屋根の上を走り回れるのも二人だけで、まあ運動神経おばけコンビなんて言われている二人は、演技だって憑依型の天才だ。すみーはいつも通りかもしれないけれど、ひそひそがあんなに穏やかに笑ってるのなんて、早々見られるものでもないでしょ。ちょーレアじゃん、パシャっちゃお! なんていつものオレなら思うんだろうけど、全くそんな気にならない。
 柔らかくて穏やかな光が射し込んで、ぽかぽかと二人と何匹かを照らしている。まるでスポットライトが当たっているかのように、そこから目が離せなかった。
 ゆっくりと目を細めて、ぎゅっと瞑ったまま踵を返す。そうそう、スケッチブックを取りに来たんだった。部屋のドアに手をかけて、ぐっと力を入れた瞬間。
「あっ! かーずー! オレとねこさんと一緒に遊ぼー?」
 ああもう。なんでこうタイミングがいつもいいのか悪いのかジャストなんだろうね、すみーって。そんなことを心のはしで思いながら、ごめん、課題でスケッチしなきゃいけなくて、なんて声を張り上げた。
 ざーんねーん、じゃああとでね! そう笑うすみーに返せたのは、いびつな笑顔だった。

いびつな笑顔

 ずっとオレの隣で笑っていてほしい、なんて大それた願い、口に出すことは絶対にないけれど。音にならないまま歪んだ唇の端に引っ掛かって、それをどうしたらいいのかわからなくなってしまった。