すきだ。それはもちろん、トモダチとして。
──な〜んて思ってたのになぁ。
ふぅ、と一息吐いて、今の今まで描いていたクロッキー帳を見下ろした。なだらかな曲線、踊る瞳、嬉しそうに笑う顔、……大好きなさんかくを持つすみーが、ひっそりと描かれている。
ぼうっとクロッキー帳に鉛筆を走らせていたら、いつの間にかできていたのだ。パラパラと捲っていくと、目を輝かせた姿、これまで演じてきた役に入っている姿、真剣な横顔、そして──圧倒的に多い、笑顔。
無意識に筆を走らせるとすみーがいた、なんてことが起こり始めたのはいつの頃からだったのか。あの頃は、一番一緒にいるのだから、人物を描こうとすればそうなるか、と妙に納得したのを覚えている。
それでも、ここまでたまってくるとさすがに無意識の感情を無視できない。
すみーがすきだ。トモダチとしてではなくて。
というか、たぶん、お互いがお互いのことをトクベツに思っている……のだと思う。なにしろ、真っ先に呼び掛けるのが互いなのだから。
これが異性なら、『友達以上、恋人未満』なんて甘酸っぱい関係になったのだろうか。いや、別に『両思い』という訳ではないのだからそうでもないのかもしれない。
互いのことをトクベツに思っている。だけど、両思いではない。
「『片思い以上、両思い未満』かにゃ〜……」
ぼそりと落ちた言葉に自分で苦笑した。トクベツだけでは満足できそうにない無意識の感情が、居心地悪くとも否定できないのだから。
ぱたん、とクロッキー帳を閉じて、思い切り伸びをした。ぱきぱきと音が鳴る体に、長い時間が経ったことを教えられる。そのまま上を向いて首を反らすと、ずいぶんと上の方から声が降ってきた。
「かず! 課題終わった? さんかく探しいこー!」
屋根の上からひょっこりと顔を出したすみーに、クロッキー帳の中身が見られていないことを祈る。笑って了承し、勢いよく立ち上がった。
片想い以上、両想い未満。