さあさあと降り続ける雨は、もう三日も続いていた。決して弱くはないが、強いとも言い切れないその雨粒は霧雨のように小粒で、傘を差していてもまとわりつくように濡れてしまう。
 一週間と少し前にびしょ濡れで帰宅した前科のあるすみーは、雨の日のサンカク探しをフルーチェさんによって禁止されていた。それでも何度か出掛けて、やっぱりびしょ濡れで帰ってきて、怒られて、出掛ける度に部屋のサンカクを棄てると脅して、今は大人しくさせているワケだ。
 いたるんのゲームコントローラのサンカクボタンを狙ったり、セッツァーのサンカク柄の洋服を狙ったり、カントクちゃんのサンカクのイヤリングに興奮したり、そんなことをして過ごしていたようだったけれど、寮内でサンカクを探していても限りはある。早々に探し尽くしてしまったすみーはつまらなさそうに談話室のソファでまるくなっていた。……違った、『サンカク座り』をしていた。
「さ〜ん〜か〜く〜……」
「すみーの鳴き声、サンカクになってんじゃん」
 苦く笑うオレの声に、顔を横に倒してそのままじっとりと見上げてきたすみーは、「かずは外にさんかく探しに行けてずるい……」と恨みがましい声をあげる。サンカク探しに行ってるワケじゃないけどね、と一応ことわってから、ニヤリと笑った。
「そんなすみーにお土産だよん!」
「さんかく!?」
 一気に目を輝かせるすみーをほほえましく思いながら、じゃーん! と鞄の中からサンカク模様の小さな平袋を取り出して、すみーに手渡す。きらきらと瞳の中のサンカクを煌めかせたすみーは、さんかく! と袋の時点から嬉しそうだ。
「袋ももちろんサンカクなんだけどさ、開けてみてよ」
「開ける〜! ……かず、すごい! キレイなさんかく! そんなかずには、ウルトラさんかくクンあげる!」
 チェーンではなく、革紐でくくられたサンカクは金色に鈍く光を反射していて、どうやらすみーのお気に召したようだ。やべー、ウルトラだ! なんて笑って、今度こそすみーも輝くように笑い返してくれて。
「かず、ありがとう〜!」
 きゅっと細まった瞳から、サンカクを抱きしめた両手から、上がった口角から、全身から、『嬉しい』の煌めきが降り注いで、一瞬雨が止んだのかと思ったほどだった。こちらこそ、そんなに喜んでもらえてよかった。そう言って、サンカクでもお絵かきしよう、と提案するのだった。

雨の中で煌めく、