キャンディを舐めている、大学の帰り道ですみーに会った。会ったというか、上から降ってきたというか。かーずー、と言いながらぴょんと目の前に着地したすみーに、思わず舐めていたキャンディを飲み込みそうになって少し噎せた。
 大丈夫? って聞いてくれるのは嬉しいけど、すみーのせいだからね。もうちょっとフツーに……というより、驚きの小さい方法で登場してほしい。
「こっちまで来てんの珍しーね。サンカク探し?」
「ううん、バイトだよー。それで、かずの学校に近いからかずにあえるかなーって思って!」
 にこにことそう言うすみーに、ぐわっと心臓を鷲掴まれる。うう、こういうさりげないモテテク、すみー案外得意だよね……。
 オレが口をもごもごさせているのが気になったのか、あめさん? と首を傾げるすみーに、そだよん、と頷く。食べる? と聞くけど、サンカクのキャンディは生憎と切らしていたので、さんかくじゃないならいいや〜、と残念そうに項垂れた。
「んー、じゃあ今オレが食べてるのは何味でしょう!」
 ちょっとした問題を出して遊ぶのは、最近の夏組内でのブームだった。どうでもいいような問題を出し合っては笑って、そんなことをして遊ぶなんてまるで小学生のようだ、なんて言われてしまったけれど、カンパニー内平均年齢最年少組だもん、楽しければオッケーでしょ、なんて。
 オレが問題を出したのは、ちょうど公園に差し掛かったあたりだった。んー、と少し上を見るようにして考えるようにしているすみーを眺めながら、コロコロとキャンディを転がす。ふっとこちらを見たすみーに、首を傾げると──
「……っん、あー、れもんだ!」
「ちょっと、すみー!?」
 ちゅっ、と音を立てて離れた柔らかい感触に、どう反応していいのか悩む。なんの含みもないように笑って、当たった? と首を傾げるすみーに、呆然として当たってるよん、と頷くしかできなかった。
 おもいっきり赤くなった頬は、なんでもないように風に冷やされて、キャンディが溶ける頃には元通り。本当にあったことなのか、なんなのか、わからなくなる。初めてのキスはレモン味が本当になるなんて、誰が想像しただろうか。

キャンディ