「えへへ、かず、だーいすき!」
「あんがと! オレもすみーのこと大好きだよん」
 にこにこと笑ってぎゅうぎゅうと抱きついてくるすみーをやわやわと抱き返して、首筋でそれとバレないように大きく息を吸い込む。すみーはお日さまみたいな匂いがすると思いきや、お月さまみたいな匂いがする。秋の夜長のお月さまみたいな、冷たいのに包み込むようにあったかい匂い。
 そんなすみーがすきだなぁ、としみじみと思う。テンテンやゆっきーには行き過ぎって目で見られるし、ため息だって吐かれるけれど、これは単なる友情の抱擁だった。そんなの、オレだって吐きたいんだからね。
 すみーの鼻がすりっと首筋にすり付けられて、「なになに〜? くすぐったいよん!」なんて笑みを含んだ声が出た。今日は寒いからかすみーの鼻の頭は少しだけ冷たくて、ヒヤリとした温度がぞくりと背中を駆け抜ける。きっと、温度のせい。
「ん〜……かず、お月さまのにおいがするなーっておもって。いいにおい〜」
 びっくりして我ながら瞳が飛び出るかと思ったくらいに見開いた。だってまさか、喩えまで一緒だとは思わないじゃん?
「マ? オレも、すみーはお月さまの匂いがするな〜って思ってたトコなんだけど!」
 やべー、テンアゲ! なんて意図的にテンションを上げて笑えば、すみーは「ほんとー?」なんて嬉しそうに笑ってくれる。すみーが嬉しそうにしてくれるのは嬉しいんだけど、これは本当だよん。
 まあ、すみーの次の言葉で、オレの動きは全部止められちゃったんだけどね。
「じゃあ、オレとかず、両思いだ!」

両思い